ニャンこ先輩 第6回 2011年5月23日
落ち着こうと……。
すれば、する程に……。
ハンドルは、制御を不可能にした。
(駄目だ)
…という声は、幾重にも脳内を反響し続ける。
対面の女は、口を開く気配すら無い。
無表情のまま、硝子越しに駅前を視たままだ。
凍り付いた女と、テンパる男子高校生との温度差。
今、思えば……。
其処に居合わせた客達の、視線を集めるには十分だったろう。
僕の腕時計が、唐突にアラームを鳴らした。
我に返った僕は、幾分かの落ち着きを取り戻せた。
そして、1つの結論に達した。
((ここで、帰らない機会(チャンス)は無い))
(さり気なくだ…)
(上手くやれるさ、出口は見えてる)
あえて、目を合わせない様にしてこう切り出した。
「僕ばかり話してしまいましたね、聞いて頂けて良かったです」
目の前で、女が口を開く。
「帰るの?」
間髪入れずに、僕は返答する。
「はい、時間がきてしまいました」
「また、誘うわ」
(心臓が鼓動を大きくした事)
そう言った女から、2枚のカードを手渡された。
500円のマックカードであった。