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柏崎刈羽原発に非常用デーゼルポンプ・消火用を2台しか設置してない東電。

2013-09-30 15:34:09 | 原発 冷却注水の確保
原発の消火系・FP(Fire Protection System)は、メルトダウンのような過酷事故対策・AMでは原子炉への注水に利用されます。柏崎刈羽原発への発電所外部からの交流送電が途絶え、各号機に3台ある非常用発電機が稼動しない場合には、電動のポンプが動きません。この状態を全交流電源喪失・SBO(ステーション・ブラックアウト)といいますが、その時に消火系・FPの非常用デーゼルポンプで原子炉に冷却水を注水する手順に2002年からなっています。ですから、重要なデーゼルポンプです。消火系・FPの非常用デーゼルポンプの略号は、D/DFP、D/D-FP。

東京電力の資料、《参考資料1》福島第一原子力発電所事故の教訓と対策(平成24年12月14日)を見つけ読んでいたら魂消ました。東電は柏崎刈羽の7つの原子炉用に2台しか設置してないのです。柏崎側(荒浜側)の1~4号機共用で1台、刈羽側(大湊側)に5~7号機共用で1台です。全交流電源喪失・SBOの炉への注水で重要なのに、たった2台。



東電は「同時に被災及び火災が発生した場合を想定し、D/D-FP以外の低圧注入手段が喪失した場合に備え、D/D ポンプを新設し、全号機への低圧注水対応が可能となるよう強化する。」ことを検討中と記してあります。それは、1~4号機共用の予備に1台、5~7号機共用で1台で、それも送水能力は今よりも小さい。各号機に専用の1台を新たに設置し、今の共用を予備に回すなら話の筋「強化する」と言えますが、能力の劣ったものを2台新設しても、

全交流電源喪失・SBOの炉への注水方法

原子炉は運転時には約70気圧・70Mpa(メガパスカル)あります。全交流電源喪失・SBOで緊急停止後の炉圧が高い場合は、RCIC・原子炉隔離時冷却系で炉に注水します。これは核燃料の崩壊熱により原子炉で発生する水蒸気でタービンを廻し、その力でポンプを駆動する注水システムです。定格流量は約180?/時、注水圧力は約20~90気圧(揚程は200~900m)です。柏崎刈羽6、7号機には各1台が設置されています。東電はさらにもう1台、米国製の代替高圧注水設備(TWL)という水蒸気駆動のシステムを6、7号に付けるそうです。



この二つの高圧注水システムは、初期は復水貯蔵槽(タンク)から、最終的には格納容器の圧力抑制室プールの水、柏崎刈羽6、7号機では各3600トンのプール水が水源です。またプールには原子炉で発生する水蒸気が出されます。つまり崩壊熱で熱水化する水が水源です。圧力抑制室のプール水温が上がると、熱気で格納容器の圧力が上昇します。復水貯蔵タンクを使わない場合に最高使用圧力到達が約16時間後です。

また、崩壊熱により原子炉からの水蒸気がエネルギー源です。水蒸気圧力の作動最低圧があります。水蒸気圧力は原子炉圧力と同じです。柏崎刈羽原発6、7号機のRCIC・原子炉隔離時冷却系の作動圧範囲は東電に問合せていますが、他のBWRは7.86~1.04MPa(約78~10気圧)です。この下限の約10気圧以下になるとRCIC・原子炉隔離時冷却系で炉に注水できなくなります。

原子炉の炉圧が高いと水の沸点は高いのは、圧力釜と同じです。約16気圧では200℃で、約10気圧で180℃です。炉を100℃以下の低温停止にするには、炉の圧力=水蒸気圧力を下げなくてはなりません。そして約10気圧以下になるとRCIC・原子炉隔離時冷却系で炉に注水できなくなります。交流電源があると電動ポンプでの注水、低圧注水のシステムがあります。BWRの低圧炉心スプレイ系(LPCS)が2.03MPaから、低圧注水系(LPCI)は1.55MPaから注水が可能になります。ABWRの柏崎刈羽原発6、7号機の低圧注水系の圧力値は東電に問合せていますが、ほぼ同じだと見られます。

事故対応の手順書のやり方では、RCICで注水を継続しながら炉圧が下がって、下げて低圧注水システムでの注水が可能になったら、RCIC注水と平行して同時に低圧システムを作動させます。配管などに損傷が無く、弁の開閉も間違えなく注水が順調に始まったことを確認します。中央制御室で弁の開閉状態を示す表示の多くは、操作盤から出ている指令信号が開信号か閉信号を示しています。実物の弁が開いているか閉じているかを示していません。重要な弁にはモニター装置が付いていますが、これも誤作動があります。従って、注水が順調に行える確認は欠かせません。

それをしないで、いきなりRCICを切って低圧系に変えて注水が無くなったらどうなるでしょうか。ABWRの柏崎刈羽原発6、7号機では、注水が止って約45分後には核燃料の被覆が損傷し放射能のギャップ放出が始まります。約70分後にはメルトダウンが始まります。45から70分間で配管などに損傷や弁の開閉を直せる保証は何処にもありません。従って、注水が順調に行える確認は欠かせません。

ところが、全交流電源喪失・SBO(ステーション・ブラックアウト)の時に使える低圧注水システムは、消火系・FPのデーゼルポンプ・D/D-FPだけですが、D/D-FPは注水が順調に行える確認はできません。

一か八かの度胸勝負を強いる手順

東電の資料では「全揚程75m」となっています。これは水を75mの高さまであげられる圧力が出せる性能ということです。水は10mで約1気圧ですから、約7.5気圧・0.75MPaの水圧で水を出せるということです。これは消火栓、スプリンクラーなどに送水する本来の場合です。原子炉に注水するには、MUWC系とRHR系と復水給水系を通らなければなりません。その曲がりくねった配管や弁(MUWC系で2ヶ、RHR系で5ヶ、復水給水系で3ヶ)を通過する際に圧力損失が発生します。大概は1気圧程度を見込みますので、原子炉に到達時には約6.8気圧・0.68MPa程度です。つまり原子炉の炉圧が、RCICが停止する約10気圧から消火系・FPのデーゼルポンプ・D/D-FPで注水が可能になる約6.8気圧の間は原子炉に注水できるシステムが今はありません。炉の冷却水は減るだけです。

約6.8気圧に下がった、下げてから、消火系・FPのデーゼルポンプ・D/D-FPで注水を行うとします。その際には水が通る弁だけでなく、水が他所へ行かないように開閉する弁が20ヶあります。この弁が正しく開閉されていなければ、炉に冷却水が届かない、他所に行ってしまって不足することになります。しかし、それを事前に確かめる術はありません。一か八かの度胸勝負です。負けてD/D-FP注水が上手くいかなかった場合に配管損傷や弁の開閉を直すのに使える時間は45分から70分と限られています。6.8気圧までに下げる間に失われる水量、下がっている水面高を考慮するともっと短いと考えられます。東電核災害での福島第一でのベント配管の構成にかかった時間を思うと、私は45分から70分では点検すら終わらない、メルトダウンの可能性が高いと思います。

さて、D/D-FPで炉への注水を行わないで高圧系を使い続けるとします。まずベントを避ける遅らせるには、どのような手があるでしょうか。D/D-FPでRCIC・原子炉隔離時冷却系の水源となっている圧力抑制室プールに冷水を注水すると崩壊熱での熱水化を抑制できます。格納容器の圧力上昇を抑えることができます。柏崎刈羽の6、7号機に今付いている消火系・FPの共用のデーゼルポンプ・D/D-FPは定格容量は1時間に177トンです。号機当り約88トンの注水が可能です。もともとのプール水量は3600トンですから、1時間に2.4%増量できます。

RCIC・原子炉隔離時冷却系は、約8時間使用で設計されています。東電核災害では2号機は100時間ほど動きましたが、そのメカニズムは不明で柏崎刈羽6、7号のRCICが100時間動くとは言えません。3号機は24時間ほどでゴロゴロという音を立てて止っています。8時間設計の3倍の24時間、それ位しか見込めません。新たに設置される米国製の代替高圧注水設備(TWL)はカタログデータには最高使用温度が120℃とあります。TWLは送水ポンプと一体化されていますから通過する圧力抑制室プール水で冷されて機器全体で120℃以下であればよいわけです。13気圧ほどの水蒸気圧の蒸気温度は約190℃、10気圧で約180℃、1時間に2.4%プール水量が増量しても熱容量的にみると約1日後にはプール水が120~100℃近くまで上がりますから、代替高圧注水設備(TWL)も1日位しか稼動できません。つまり、高圧系の注水は約1日くらいしか出来ないと想定されます。

それでは、既設の消火系・FPのデーゼルポンプ・D/D-FPが使えないのなら、消防車を使って送水することはできるでしょうか?

東電は「消防車8台(AⅠ級2台,AⅡ級6台)をT.P.約35mの高台に分散配置。消防車により建屋に設けた注水口等から注水可能。」「AⅠ級のポンプ仕様:高圧放水圧力1.4MPa,高圧放水量120m3/h以上、AⅡ級のポンプ仕様:高圧放水圧力1.4MPa,高圧放水量84m3/h以上」としています。この高圧放水なら注水圧力としては十分可能です。RCIC・原子炉隔離時冷却系を水蒸気圧=炉圧が1.3MPa約13気圧で稼動し注水を行いながら、外から消防車の高圧放水機能・約14気圧でで注水を試みる。消防車で注水ができることを確認してから、炉圧を下げていく。注水が出来なければ、配管や弁を点検する時間は、RCIC注水が継続しているの十分に取れます。炉圧が下がればRCICは停止するが、原子炉の沸点=温度も下がっていきます。

しかし、消防法を読むと、現状では無理、高圧放水の1.4MPaでは使えないことが分かりました。
続く


柏崎刈羽のABWRでは 炉心、圧力容器への注水機能は働く場合(結01)東電vs泉田知事⑲

2013-09-20 20:14:08 | 原発 フィルターベント
東京電力は柏崎刈羽原発は外部電力を失っても、非常用デーゼル発電機・DGが稼動できればスクラム(緊急停止)から約1時間半で冷温停止(100℃)まで冷却可能としています。それはスクラムして核分裂反応を止めてから主蒸気逃がし安全弁を開操作して炉内の高圧高温水蒸気を圧力抑制室プールに送り、急速減圧と減圧冷却を行う。炉注水は先ず崩壊熱で発生し逃し弁から放出される原子炉蒸気でポンプが駆動するRCIC・原子炉隔離時冷却系が担う。

炉圧が下がってきたら、非常用デーゼル発電機・DGの電力でLPFL・低圧注水系の電動ポンプを駆動して注水を維持し、原子炉圧力容器の水面、核燃料を包み除熱する水を保ちます。東電核災害で公表された福島第一原発の事故対処の手順書・マニュアルのやり方では、RCIC・原子炉隔離時冷却系とLPFL・低圧注水系が共に注水できる炉内圧力になったら、作動可能圧力が重なる帯域になったら、例えば15気圧になったら、RCICを稼動させたままでLPFL・低圧注水系の運転を始めます。LPFL・低圧注水系による注水が順調に始まり、配管損傷などがないことを確認してから、RCIC・原子炉隔離時冷却系を停止し、LPFLに切り替えます。ます。のが稼動できます。蒸気圧が下限10気圧程度になったら、この資料ではLPFL・低圧注水系に炉注水が変ります。その結果、「スクラム後から冷温停止(100℃以下)まで約1.5時間」としています。


非常用デーゼル発電機・DGも停止する全交流電源喪失・SBOの場合は、約1時間半で冷温停止できるでしょうか?

東電の「安全確保に関する考え方」では、12時間は消防車など可搬設備は使わず使えず、既設の設備で中央操作室の運転員が対処することになっています。それで、RCIC・原子炉隔離時冷却系の「起動失敗または継続運転に失敗した場合に、早期に起動可能な」高圧代替注水系(HPAC)を新たに設置するとしています。

SBO・全交流電源喪失時に使える低圧注水系は、現在は消火系・FPのデーゼルポンプ1台です。そのうえ、注水可能な炉圧がRCIC・原子炉隔離時冷却系の下限約10気圧より低い約6気圧です。このため、これを使うには、原子炉を約10気圧から約6気圧まで下げる必要があります。その間は炉への注水がなくなります。原子炉水位の低下=核燃料損傷の危険性があります。さら約6気圧まで減圧しても、デーゼルポンプ注水が上手く行かない場合には一気にメルトダウンへ向います。一か八かの賭けをすることになります。

まず、消火系・FPのデーゼルポンプの吐水・注水圧力をRCICの下限よりも上にする性能強化を行うべきです。これは消火用ポンプの性能を消防法のA-1またはA-2にすることです。2002年までのシビアアクシデント対策で、消火系も低圧注水の代替に使うことになりました。この11年前に、原子炉・炉心への注水は一瞬たりとも途絶えさせない方針が採られていたら、当然、ポンプ性能の強化は行われている対策です。それを怠ってきたツケを払う時です。

A-1は通常使用の規格放水圧力で約8.5気圧で1分間に2.8トン出せます、高圧放水で約14気圧・1.4トン/分です。A-2は、規格放水圧力で約8.5気圧・2トン/分、高圧放水で約14気圧・1トン/分です。ですから、高圧放水の性能を使えば、炉の圧力が13気圧程度にさがりRCIC・原子炉隔離時冷却系とA-1、A-2規格の消火系・FPで共に注水できるようになります。消火系のポンプを起動しRCICと共に注水していること、無事使えることを確認します。

柏崎刈羽原発6、7号機では最低必要注水量は、スクラムから5時間後までは約62トン/時、5~10時間後は約57トン/時です。約14気圧の高圧時にA-1なら1時間に1台で84トン、A-2なら60トンが炉に注水可能ですから、ギリギリ間に合います。原子炉の炉圧を下げれば、注水量は増えます。約7気圧に下がるとA-1なら1時間に1台で144トン、A-2なら120トンです。

火災との複合災害に備えて、送水管、接続部の耐圧強化

払わなければならない11年前からのツケ、2002年までのシビアアクシデント対策の不足はポンプ性能強化だけではありません。火災とSBO・全交流電源喪失が重なっている複合災害に備えて、消火系配管や接続部の耐圧強化が必要です。消防法では、送水圧力の設計想定が1.0Mpa約10気圧を境に設備に求める性能が大きく違います。分かり易い例では、10気圧以上対応の送水管は材質が同じなら倍の厚みになります。現在設置されているものは、約6~7気圧送水で設計施工された配管・接続です。そこに約14気圧で送水したら、破裂や接続部から漏水します。消防法にも違反します。

火災とSBO・全交流電源喪失が重なった複合災害で、こうした配管・接続の強化がなかったら、炉への注水を諦めるか、炉への注水を優先して火災、電源ケーブルや操作や計測に必要なコードなどが燃えるに任すかという2択になります。火災にも消火用水を送り、同時に炉に注水するには消火系配管や接続部の耐圧強化が必要です。この耐圧強化は、消防車を使う場合にも必要です。

また、炉圧が高圧時の注水系では「起動失敗または継続運転に失敗した場合に、早期に起動可能な」高圧代替注水系(HPAC)を新たに設置しています。低圧時も同様に消火系・デーゼルポンプを複数にすべきです。

このようにすれば、柏崎刈羽原発はSBO・全交流電源喪失でもスクラム(緊急停止)から約1時間半で冷温停止(100℃)まで冷却可能になると考えます。

次は圧力抑制室プール水の冷却

さて、このように冷温停止しても、この停止状態は持続的ではありません。圧力抑制室プール水に崩壊熱が蓄積します。非常用デーゼル発電機・DGが稼動する場合は、RHR・残留熱除去系の3つの電動ポンプが稼動できます。それでプール水に蓄積した崩壊熱は、RHR-Hx・熱交換器を経て海に排熱されます。SBO・全交流電源喪失での対策がありません。蓄積する崩壊熱で、格納容器の破損が生じます。続く



消防車の高圧放水機能が使えたら 炉心、圧力容器への注水機能は働く場合(承-1)東電vs泉田知事⑯

2013-09-16 23:42:52 | 原発 フィルターベント
東京電力はLPFL・低圧注水系の代替には、消防車を準備しています。消防車で復水タンク、貯水池、海など外部水源からの低圧注水を用意しています。

自動車の組み込まれている消防ポンプは消防法の規格で2種類あります。A-1は通常使用の規格放水圧力で約8.5気圧で1分間に2.8トン出せます、高圧放水で約14気圧・1.4トン/分です。A-2は、規格放水圧力で約8.5気圧・2トン/分、高圧放水で約14気圧・1トン/分です。

東電核災害で公表された事故時対応の手順書のやり方では、炉の圧力が13気圧程度にさがりRCIC・原子炉隔離時冷却系と消防車・高圧放水使用が共に注水できるようになったら、消防車のポンプで注水開始ます。そしてRCICと消防車・高圧放水使用で共に注水していること、代替低圧注水系が無事使えることを確認してから、切り替えます。東電が用意している消防車がA-1なら1時間に1台で84トン、A-2なら60トンが炉に注水できます。柏崎刈羽原発6、7号機では62トン(1日後は44トン)は必要ですから、消防車1台ではギリギリです。

さらに、主蒸気逃がし安全弁を開操作して炉内圧力を6気圧程度にさげれば、規格放水機能が使えます。注水量を1時間に1台で120トンから168トンに増やすことが出来ます。このように、消防車をその機能を把握して、主蒸気逃がし安全弁で炉圧を減圧すれば、ベント無しで大量注水を継続できます。この点を誤解している方が多くいます。

3.11東電核災害では、東電は高圧放水を使いませんでした。炉内圧力が6気圧程度に下げよう下げようとしていました。8.5気圧の規格放水機能も上限圧力で使おうとしませんでした。理由は至って簡単単純です。

原発では、デパートのように不特定多数の人が出入りする場所ではないし、マンションのように多人数が居るわけではないし、高層ビルのように高くはありませんので、消防法上は一般の事務ビルと同程度の消防・消火性能が要求されています。ですから、約6気圧・0.62Mpa程度使用、耐震性Cクラスで設計され、設置されています。

東京電力の原発の消火系は約6気圧・0.62Mpa程度、耐震性Cクラスの仕様で設計され組み込まれているからです。そこに14気圧で送水したら、先ず壊れます。地震で揺すられたら、耐震性Cクラスの配管は?柏崎刈羽原発では中越沖地震で屋内配管が外れてたり、接続ジョイントが壊れたりしています。8.5気圧送水も、躊躇しますね。

東電が消防車を原発に配備したのは、2007年7月の中越沖地震での変圧器火災以降です。それ以前は、設備的には建設時に設置された電動消火ポンプかデーゼルポンプを使い、足らなければ地元自治体の消防に頼る体制でした。しかし、やってきた地元自治体の消防車からの送水を建屋の消火系につなげる注水口の設置は、福島第一では2010年6月です。東京電力の防災への取り組みの本気度、真剣味がよく分かります。

想定されていたシビアアクシデント時の原子炉注水の停止・断絶

シビアアクシデント対策で、消火系も低圧注水の代替に使うことになりました。低圧系代替注水として消火系・PFを使うなどのシビアアクシデント対策・AMは、2002年までに整備が完了しています。この時に、原子炉・炉心への注水は、一瞬たりとも途絶えさせない方針が採られていたら、RCIC・原子炉隔離時冷却系が稼動できる炉圧帯と重なるように消火系も14気圧とかで使えるようにしたでしょう。

しかし、2002年シビアアクシデント対策・AMでは核燃料が損傷するシビアアクシデントはまず起きない、だから既にある設備を活用する、金を余り掛けずに活用することがAMでした。仮に14気圧送水に対応するにはポンプは取替えか新設、配管も新設しなければなりません。

消防法では、1.0Mpa約10気圧以上での送水が想定される場合は、配管や接続部を強化することを求めています。分かり易い例では、管の材質が同じなら倍の厚みになります。10気圧以上対応となると、送水管のメーカーも御相談品、特注品扱いです。当然に高価になります。また当然重さも倍になる。取替えではなく新設の工事が必要となります。(欧州のAMは、こうした設備強化に重点を置きます。)

つまり、3.11前から東電は、シビアアクシデント時に低圧注水の代替に消火系・PF使う場合は、RCICが稼動停止する炉圧約10気圧から消火系・PFの稼動開始の約6気圧の間、その間の炉圧の時には原子炉・核燃料炉心への注水が停止することは分かっていた。東京電力のシビアアクシデント対処の手順書では「原子炉圧力が0.69MPa以下であること」が消火系・PFの炉注水での使用条件になっています。

蒸気逃がし安全弁を思うままに開閉できれば、炉圧が約10気圧から6気圧の時間=注水の途絶える時間を短くできます。そのためには操作に必要な直流電源や圧搾空気・窒素ガスを用意し、運転員を訓練し能力を上げる必要があります。(米国のAMは、運転員の訓練に重点があります。)

東電は、設備強化も運転員の訓練・対応能力強化のどちらもしなかった。東電だけでなく、日本の原子力事業者、それを監督する行政もしてこなかった。

3.11に消火系が高圧放水で使えたら2号機はメルトスルーしなかった

シビアアクシデント対策・AMで、原子炉・炉心への注水は、一瞬たりとも途絶えさせない方針が貫かれ、消火系・PFを高圧送水機能・14気圧(1.4MPa)で使える配管の耐圧強化がされて、A-1規格の消防デーゼルポンプが設置されていたら、3.11東電核災害の様子はどのようになっていたでしょうか?

仮に、建屋に備え付けのA-1規格のデーゼルポンプは1.4MPaの高圧は出ず70%の0.98MPa程度で1時間に80トンしか出せない被害を受けた、津波から12時間後、3.12の3時半にガレキを片付け道路を確保して消防車(A-2)を1台建屋に横付けにして注水が準備され、何時でも原子炉に高圧・14気圧(1.4MPa)での大量注水(1時間に60トン)が可能になったとします。



2号機は弁を開閉する直流電源は失われ、図の様に原子炉圧力容器の炉内圧力、水位、格納容器の圧力が推移しました。仮に12日にベントして格納容器の圧力を下げても、蒸気逃し弁を開操作できませんから圧力容器の圧力は下がりません。直流電源を用意して蒸気逃し弁の開操作は2号機の圧力容器の14日の18時に行われています。13時25分にはRCICの注水が停止し原子炉の水面は既に下がりつつありました。開操作で減圧しBAF(有効燃料下端部)まで水面が下がりきらない、核燃料の下部が水に漬かっている時に、消防車(A-2)での高圧放水機能で注水(1時間に60トン)が可能な炉圧になっています。

従って、核燃料の被覆の破損、一部の溶融による放射能の早期圧力容器内放出は起きた、避けれないと思いますが、溶融核燃料が圧力容器を溶かし出る溶融貫徹・メルトスルーは防げます。

スクラムから20時間以降の2号機の必要注水量は、1時間に25トンとシビアアクシデント対応の手順書に記されています。従って1時間に60トンの注水を継続すれば、水蒸気にならず熱水となり原子炉内から水があふれます。蒸気逃し弁から水蒸気が圧力抑制室プールに抜けていくルートを熱水が通って下り落ちていきます。炉圧を大気圧まで下げれば、100℃程度の熱水です。

2号機では流れ落ちる水で圧力抑制室気相部にあるベントの吸気口の高さに水面が達するまでの総水量は、2300トンです。60トン注水を4時間、あとは必要注水量の1.5倍の38トン/時で注水すると、54時間約2日間でそれに達します。 

1号機、3号機に続く


東電が10兆円の損害賠償保険をかけてから、再稼動の話を聞こう

2013-09-16 15:09:43 | 原発の経済
柏崎刈羽原発の6、7号機の再稼動の話は、東京電力が損害賠償保険で、東電福島第一原発での核災害への現時点での補償見積額10兆円を用意するまで、新潟県は話を聞くべきではないと思います。

東電は事実上倒産しています。柏崎刈羽で事故っても、補償金はびた一文も身銭で払える状態ではありません。イザという時の蓄え・備えもないのに、再稼動して電気を売って金をもうけたいというのは、モラルがない、企業のモラルハザードです。ならば、賠償保険で補償金を用意する、車を運転するなら任意での賠償保険を付けてお金で補償できる損害部分に備えるように、東電にも備えてもらいましょう。それから東電は再稼動を持ち出すべきですし、話はそれからです。

原賠法で1200億円/基の強制保険があります。10兆ですから、その100倍の保険料で引き受ける保険会社があるかもしれません。自動車保険は事故を起こすと高くなります。東電さんなら事故確率が高いから500倍の保険料という会社もあるかも知れません。逆に、新たな対策で確率が低くなったから50倍でOKという会社もあるかも。強制保険はお上の指示で仕方無しに引き受けた、業界存続のための税金みたいな保険だからと、1社も引き受け手がないかもしれません。

損害保険を付けるということは、政府や自治体など“官”や“学”ではない、民間の目を入れることです。それも銭金の絡む最もシビアな、プロの評価です。巨額なので再保険されます。それを引き受ける他の保険会社の目も入ります。保険が付かないのなら、ビジネスとして再稼動、原発は無理だということです。

巨額の損害保険料を支払っても、柏崎刈羽の電気は火力より安価?? 再稼動しないと電気代があがるという経済学者もいますが、損害保険をかけたら、どれ位に電気代がなるかを経済学の専門家なのですから是非に試算して欲しいです。病気と補償は新潟県民もち、電気だけ頂戴って、三つ四つの子供みたいな論議ではなく、試算の上で、電気代の話を論議すべきではないでしょうか?

また、10兆円も補償すべきものを支払っての金額なのか?汚染された土地家屋を買い叩いている、補償を値切り倒しているという話も伝わっています。その点も、要チェックです。


再保険とは

放出放射能を低く見せる東電の伝統芸 東電vs泉田知事⑭

2013-09-07 09:48:46 | 原発 フィルターベント
東京電力は「炉心損傷後に,敷地外の土壌汚染を大幅に抑制するためのベント」として放出量を試算して、セシウム137の総放出量を0.0025テラ・ベクレルとしています。「基準の100テラ・ベクレルを下回る」「これによる土壌汚染からの被ばくは、発電所の敷地外で概ね1mSv/年以下」とコメントしています。(下図)

図を見ると、LOCA・ロカ、冷却材喪失事故で試算しています。LOCA・ロカ、冷却材喪失事故は原子炉施設の設置に当たって行われる安全評価で想定される事故です。
評価で考慮されるABWR圧力容器の主要な配管は、主蒸気管、給水管、炉心スプレイ管の3つです。主蒸気菅はタービンに繋がっています。試算で蒸気を噴出している管はポンプに繋がっています。給水管、炉心スプレイ管のどちらが破れても、その高さまでの熱水がでて格納容器内で減圧沸騰します。原子炉内水位はそこ高さまで下がります。安全評価の資料では、180秒ほどで核燃料の1m弱上までに水位が落ちています。約4mを3分ほどで下がっています。 


安全評価ではABWRは「高圧系の非常用炉心冷却設備(ECCS)が強化されている(高圧炉心注水系2系統+原子炉隔離時冷却系のECCS化)。これらの変更により・・炉心の露出がなくなり、事象を通じて炉心の冠水が維持される」と想定しています。しかし、原子炉の注水と格納容器への注水除熱の機能の二つがダウンした条件ですから、ECCS機能は作動せず、原子炉の水位は、崩壊熱による沸騰蒸発で下がり続けます。

この水位が更に下がって、水面から核燃料・炉心が顔を出すまでの間の放射能放出はフローダウン放出です。原子力安全基盤機構JNESの平成18年度の研究(以下J研究)では、原子炉の注水と格納容器への注水除熱の機能の二つがダウンした条件では、約5mの水位低下に0.7時間・約40分です。1m低下に約8分ですから、東電の試算例では、核燃料の1m弱上までに水位が下がるのに3分、あと1m下がるのに8分で、発災(LOCA開始)から11分ほどで水面から核燃料・炉心が顔を出します。

この後はJ研究と同じですから、ギャップ放出の約25分間(0.4時間)の後は、炉心溶融がはじまり放射能の早期圧力容器内放出(Eariy in-vessel放出)になります。

東電の説明の図では、溶融核燃料が圧力容器の底に落ちていません。炉心支持板損傷の前です。J研究では2.6時間後ですから東電の試算例は2.1時間後位の姿です。ここでは2時間後にベントで考えます。

過圧破損

LOCA時には、配管の破断口から熱湯・冷却材が流出するのに伴い、減圧沸騰で大量の水蒸気が発生します。それで格納容器の上部の気相部のドライウエル内の圧力や温度が上昇します。その上昇によって、ドライウエル内のガスはベント管(ダウンカマ)を通って圧力抑制室プールに噴出します。
ガス中の水蒸気は凝縮して体積が千分の一以下になります。窒素ガスは非凝縮性ガスなので、そのままです。ギャップ放出、早期圧力容器内放出で出てくる希ガスや燃料被覆管と水蒸気の反応で発生する水素ガスも非凝縮性なので同じです。
この水蒸気の凝縮によって体積が減り圧力が下がったガスは圧力抑制室の上部の気相部に滞留します。その気相部の圧力が高くなると真空破壊弁が作動してドライウエル側にガスが出て同じ圧力になります。水蒸気の凝縮がプール水で起こる限り、この循環が続きガスの体積減少=圧力低下はおこなわれます。このようにして格納容器内のガス中の水蒸気がプールで凝縮することで圧力がさがります。

J研究では原子炉からの水蒸気、希ガスや水素ガスは、ドライウエルを通らずに直接に圧力抑制室プールに噴出します。そこで水蒸気の凝縮によって体積が減り圧力が下がったガスが気相部にたまり、真空破壊弁が作動してドライウエル側にガスが出ていきます。これに比べLOCA時にはベント管内の水面を押し下げ、ベント管の噴出口までガスが届くだけのドライウエル側の圧力が高くなります。J研究では、発災2時間後のドライウエル側の圧力は約1.5気圧ですからLOCA時では2気圧程度です。(絶対圧)

柏崎刈羽原発6、7号機はABWRで、その格納容器の最高使用圧力は絶対圧で約4気圧・0.411MPa(abs)ですから、過圧破損を心配する必要は全くありません。

過熱破損

この約2気圧では炉心の崩壊熱で沸騰温度は約120℃です。したがって格納容器内の温度は120℃を超えることはありません。安全評価のLOCA・ロカ、冷却材喪失事故では、核燃料の1m弱上までに水位が落ちて水蒸気が大量発生している時点で138℃、その後は先程の圧力抑制室プールでの凝縮で熱がプール水に移行し約70℃まで下がります。
その後、格納容器スプレイが作動し、10℃ほど一気に下がり、崩壊熱での水蒸気で徐々に上がり、2時間後で約65℃です。格納容器スプレイが作動しなければ、75℃位と見られます。また、発災(LOCA開始)から11分ほどで水面から核燃料・炉心が顔を出してから始まる、燃料被覆管と水蒸気の反応は、水素ガスだけでなく大量の熱も出します。J研究では、その熱も直接プール水に出され水に移行しています。それで約75℃です。

東電の試算例では、安全評価のLOCAと格納容器スプレイが作動しない、被覆管と水蒸気反応の熱が加わる点が違っています。それで、格納容器の気相・ドライウエルの温度は、80℃前後と見込まれます。最高使用温度はドライウエルは171℃ですから、過熱破損の恐れもありません。

また、崩壊熱や被覆管と水蒸気反応の熱を吸収した圧力抑制室プールの水温はどれ位でしょうか?安全評価のLOCAでは、発災から2時間後で約74℃です。被覆管と水蒸気反応の熱が加わって、75℃前後と見込まれます。圧力抑制室の最高使用温度は107℃ですから、十二分な余裕があります。

不要なベントする東電

このように、東電が「炉心損傷後に,敷地外の土壌汚染を大幅に抑制するためのベント」として放出量を試算した炉心損傷例は、圧力でも温度でもベントの必要がありません。

不要なのにあえて、メルトスルー前、溶融燃料の圧力容器底部への落下前の条件でベントを行うと、圧力抑制室プールの水温は、ドライウエルの80℃のガスの通過後100℃を越えません。ベントで1気圧に下がっても、沸騰しません。大量の放射能を含んだプール水の沸騰=放射性微粒子の再放出がおきません。

セシウムなどエアロゾル・微粒子の放射能を1000分の999捕まえるスクラビング効果が働きます。また、ベントのフィルターの水も沸騰しませんから、1000分の999捕まえる効果が働きます。

電気出力135.6万kw.の柏崎刈羽原発6、7号機を定期運転の1年3ヶ月間運転すると、セシウム137の生成量は23.6京ベクレルです。核燃料は定期点検のたびに四分の一から三分の一取り替えられますから、稼働中の柏崎刈羽原発6、7号機には平均的に45京ベクレル(45万テラ・ベクレル)あります。

確率論的安全評価(PSA)研究(NUREG-1465)ではギャップ放出で5%と早期圧力容器内放出で20%が核燃料から放出さるとしています。11.3万テラ・ベクレルです。東電の試算例では①LOCAで格納容器に直接出て、圧力上昇によるプールへの噴出と②ベントの際のプール水への噴出と2回スクラビング効果があります。ただし①は全量ではありませんから、効果を減らして100分の95とします。それでは、環境への放出量は0.0056テラ・ベクレルです。(11.3万×0.05×0.001×0.001)


東電の計算はメルトスルー前で、圧力抑制室プールの水温が約75℃と低いのです。この水温ならベントしても放射能を含んだプール水の減圧沸騰がおきません。セシウムやヨウ素は殆どが、格納容器内に留まって、フィルターにまでも移行しません。フィルターでも沸騰が起きませんから、フィルターも所期の効果を発揮します。

原子炉の注水機能が回復できなければ、メルトスルーしてしまいます。メルトスルーしたら溶融炉心・デブリでコンクリートを侵食し、水素ガスや水蒸気が発生します。LOCAでも過圧破損や過熱破損の怖れが出てくるのは、メルトスルー後です。

LOCAはフローダウン放出の時間が約30分短くなります。過圧や過熱破損を避けるベントは、発災から約11.5時間後です。この発災から2時間後のベントを行えば、希ガスや燃料被覆管と水蒸気の反応で生成した水素ガスが、格納容器から抜けるので圧力がいったん下がるので、ベント時刻は遅れます。そのベントは減圧沸騰も起こり虹屋試算と同様になります。

試算の計算に嘘は無いと思います。むしろ虹屋の試算では、考慮できなかったセシウムの格納容器内での沈着などを東電は試算に組み込んでいると思います。J研究では沈着が1に対しプール水に2あるとなっています。LOCAで格納容器に直接出て、圧力上昇によるプールへの噴出によるスクラビング効果も、長年の研究から精緻な数値を使っているでしょう。

しかし、LOCA・ロカ、冷却材喪失事故での「炉心損傷後」で、ベントは不要だがフィルターの効果が高い時刻で東電は試算して、このフィルターでも「環境放出量が少ない」「敷地外の土壌汚染を大幅に抑制する」と東電が見せたい結果がでるようにしています。都合のよいモノだけを選らんで出す、東電のお家芸です。

試算は嘘ではありませんが、フィルターの効果を過大に見せています。そして東京電力のフィルターは、水量が少な過ぎるという事を見えなくしています。虹屋は、学校プール2ヶ分位(25m×12m×2m×2・1300トン)は必要だと思います。水量50トンのフィルターで、数十億円だそうです。その20倍余りも大きいフィルターは、数百億円になる?

東電は、地下水を遮蔽する工事を1千億円かかるからと見送って今日、汚染地下水が海に流れ込む事態になっています。汚染水を蓄えておく仮設タンクも、5年はもつという500万円/基を高すぎるからと、2年持つかな?品質だけど200万円のタンクを採用して、汚染水漏れになっています。東電にとって都合のよいモノは、品質や機能よりも安くて費用負担が少ない物です。それは、住民や国民にとって災厄をもたらすものという実績です。

都合のよいモノだけを選らんで出す、東電のお家(企業)芸で騙されて、後でホゾをかむのはごめんです。