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新潟県民の防災事情に柏崎刈羽原発を合わせよ 防災計画(案)パブコメ草案

2014-02-18 17:31:28 | 柏崎刈羽原発の原子力防災計画
2014年2月11日、第4回新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会が開催された。その場に東京電力から「防災において想定する事故シナリオについて」との資料が提出された。それでは、18~25時間後にベントとなっている。
技術委員会検討資料などは http://www.pref.niigata.lg.jp/genshiryoku/1356778117621.html


今回の防災対策(案)では柏崎市の一部、刈羽村の柏崎刈羽発電所を中心とする半径おおむね5キロメートル圏を、主としてベントなどによるプルーム放出前に避難が実施できるよう準備する区域、即時避難区域(PAZ)と設定している。底に居住する約5万人はベント以前に、18~25時間以内に避難が可能であろうか。積雪など悪条件を想定しなくとも到底無理だと思う。



つまり、現在の柏崎刈羽原発の設備や人員(人的リソース)では、18~25時間にベントとなるから即時避難区域(PAZ)からのベントによるプルーム放出前に避難はできない。絵に描いた餅である。まず、新潟県は即時避難区域(PAZ)からの半径おおむね30 キロメートル圏外への避難に必要な時間を割り出して、その時間は放射性物質を格納容器内に封じ込める性能を東京電力に求めるべきです。恐らく数日はかかると思いますが、その間はベントせずに済む性能を柏崎刈羽原発に与えるように、東京電力に求めるべきです。

新潟県民が東京電力の事情に合わせる必要は全くない。新潟県民の必要、柏崎市の一部、刈羽村の即時避難区域(PAZ)の新潟県民が30 キロメートル圏外への避難に必要な時間に、東京電力が合わせることを求めるべきです。封じ込め時間を確保できるように、柏崎刈羽原発の設備や人員(人的リソース)を補強、増強を新潟県は求めるべきです。

「即時避難が容易でなく、一定期間とどまらざるを得ない場合は、放射線防護機能を有する施設等に屋内退避することも容認する。」と計画(案)にはあります。しかし、これは東京電力の現有設備、人員では18~25時間でベントになるから避難できない約5万人のうちの大半の人は、放射線防護機能を有する施設等に屋内退避を容認することではないです。

仮に、3日の封じ込め時間を確保する性能が柏崎刈羽原発にあれば、ベントガス・ブルームに含まれる放射能がずいぶん減ります。核燃料から出る希ガスの殆どはキセノンです。クリプトンとキセノンが炉心内蔵量の100%でることになっていますが、柏崎刈羽6、7号機のABWRでは、クリプトンは2%という研究結果もあります。3.11東電核災害での放出放射能の報告書では、放射性キセノン133は11000ペタ(千兆)ベクレル(全放出量の96.9%)と記載されていますが、クリプトンは記載がありません。

そのキセノンの中でも重要なのはキセノン133という核種です。このキセノン133の半減期は約5日で放射線を出さないセシウムにかわります。格納容器内に2日と閉じ込められると約25%は崩壊し3日では約35%減ります。3.11東電核災害での全放出放射能量の96.9%を占めるキセノン133を、約25%、約35%減ります。

また、フィルターを通ったガスを放出する高さも問題です。中部電力は高さ100m以上ある排気塔から、つまり放射能雲の高度を高くして人のいる地上との距離を大きくとり被爆量を減らすように放出しています。東京電力はフィルターベントでは数十メートルの建屋高に排気塔を新設しています。下図のJAEAの本間氏の試算では、100mと60mでは近傍の被曝線量は、ブルーム・放射能雲からの被曝量の差で大きく違います。



このように防災計画は、柏崎刈羽原発の性能によって大きく変わります。東京電力の「防災において想定する事故シナリオについて」の事故進展、現状の設備などを前提とするなら、今回の防災計画(案)は絵に描いた餅です。再検討してください。


消防車注水の漏水・バイパス流・・東電の人たちは本当に技術者??

2014-02-18 13:57:16 | 新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術
東電フクシマ核災害では、消防車による代替注水がおこなわれました。

東京電力は「仮に、消防車による代替注水が全て炉心に注水されれば、核燃料は冠水し十分な冷却がなされることになったと考えます。」東電の事故解析では、消防車で原子炉に向けて送った水の1~4割程度しか原子炉に届いていないのです。大半が東電の解析では、経由するMUWC・復水補給(移送)系から、復水器や復水貯蔵タンクに大半がもれた、バイパスしたとしています。

復水補給・MUWC系や消火用の送水機能(FP・消化系)を原子炉への注水にも使えるようにする配管や手順は2000~2002年に整備されています。消防車から消火配管に送水できる送水口、ビルの外壁に設置してある装置、をつけたは核災害発災の約半年前の2010年。
東電は「消防車による注水は想定していなかった。」としていますが、漏れた、バイパスしたのは2002年に整備された箇所ですから、消防車使用は漏水の原因ではありません。


東電は「バイパス流を防ぐ対策や消防車のような可搬型設備を活用して注水を行うといった安全対策まで考えが及びませんでした。」消防車はさておいて、漏水・バイパス流は2002(2000)年に整備した時点から有った問題です。実際に注水試験をしてみればすぐに判った問題です。

東電は実機の注水試験が必要との考えに至らなかった理由として
(0)原子炉注水方法として、非常用炉心冷却系(ECCS)は多重性・多様性を有していたこと、それに加え、アクシデントマネジメント対策として、復水移送(MUWC)系や消火(FP)系による代替注水を想定・整備

(1)バイパス流量はそれほど大きい流量ではないと考えていたこと

(2)復水補給(移送)MUWCポンプは流量が多く、漏洩など気にせずどんどん送り込めばよい

(3)原子炉代替注水時には原子炉水位や注水流量等のパラメータを計器によってバイパス流等により必要な流量が確保できない場合は、異常があると認識されるため、当該注水手段の異常要因(ポンプ・水源等の異常の有無、他系統への流れ込み等)の有無を確認し、要因の除去もしくは他の注水手段に移行することができると考えていたこと

「過信し、継続的なリスク低減の努力が不足した」復水補給・MUWC系やFP・消化系など「代替注水を使用することについて当時、真剣さが足りなかったというのが正直なところ」と東電は県技術委員会に答えています。

復水補給(移送)MUWCポンプは流量が多いから漏洩など気にせずどんどん送り込んでも、足りなかっただろう福島第一原発

福島第一原発の2号機、3号機のMUWC・復水補給ポンプは1時間に68.2トン(?)を約0.69Mpaで送水できる能力のものが2台ついていました。発災時には1割程度しか消防車注水は原子炉に届いていません。この復水補給ポンプが無傷で動いても1台で1時間に7トン程度、2台がフル稼働でも14トン程度しか原子炉に送水できなかったといえます。約9割、120トン余りは横に廻って、バイパス流となってどこかへ行ってしまったでしょう。

ご参照  東京電力 「シビアアクシデント対策」疑問点への回答 補足説明資料 平成26年1月25日 http://www.pref.niigata.lg.jp/HTML_Article/113/936/140125_siryou2.pdf

2、3号機に必要だった原子炉注水量は、発災日の3月11日は1時間に約40トンで徐々に減っていって日付が変わる頃は約25トン、12日には徐々に減っていって23時ごろでは1時間に15トン程度と東電は推定しています。漏洩など気にせずどんどん送り込んでも、1時間に14トン程度しか送水できないのです。全く足りない。

大半は漏水・バイパス流で横にそれていく。それがどれ位の量なのか、確かめもしないで「バイパス流量はそれほど大きい流量ではないと考えていた」のです。技術は実用性が第一義です。それが何の根拠もなく「考えていた」。東京電力の原子力発電関係の技術者は、ネジが2、3本抜けているのではないでしょうか。

高圧の原子炉に入るか?

さてこの約14トンが原子炉に核燃料に届いたかも、不明です。私が東京電力にだした質問への回答で、「一般的に電動ポンプによる注水は注入先の原子炉圧力が低いほど注水量は増加します。従って,MUWCを用いて注水する場合には原子炉圧力を逃し安全弁により減圧する手順としており」返答くださいました。

(東電からの回答はこちら http://pub.ne.jp/hatakenotayori/?entry_id=5059748

東電核災害時は、逃し安全弁の開操作に必要な直流電源、圧縮空気などが無い、不足でした。減圧する手順は踏めません。消防車の注水が安定的行えるようになったのは、熔融核燃料が原子炉圧力容器を突き抜けて、メルトスルーした後になって圧力容器の高圧が抜けてからです。

MUWC・復水補給ポンプが全力で水を送り出し、その9割が横に漏れて、1割の約14トンが原子炉までやってきた。しかし圧力容器の圧力が高くて入れない、核燃料には届かない。約0.69Mpa以下に下がるまで入らないのです。そして「注水は注入先の原子炉圧力が低いほど注水量は増加」するのですから、約14トンが丸々原子炉の核燃料に届くには、原子炉圧力がどれ位まで下がってからでしょうか。

石橋を叩いて渡る慎重な緊急手順は作れないのか

原子炉への緊急注水は設計設備では、原子炉圧が1Mpa・約10気圧以上の場合はRCICが主役です。10気圧以下では低圧炉心スプレイ系(LPCS)や低圧注水系(LPCI)などです。運用手順は1Mpa程度に原子炉の圧力が下がった時点で、低圧系も立ち上げ、RCICと並行して注水をします。

そして、RCICで炉注水を確保しておいて、原子炉水位や注水流量等のパラメータを計器によって調べ、異常、例えばポンプ・水源等の異常の有無、他系統への流れ込み、バイパス流等の有無を確認します。異常が認めたら、要因の除去もしくは他の注水手段に移行することになっています。RCICで炉注水は確保されているので、そうした余裕のある手順です。

これらが使えない場合の代替注水の手段では、東電福島第一原発2、3号機は原子炉圧が0.98Mpaから注水可能な手段が準備され、事故時手順書では0.69MPaから使用とされています。柏崎刈羽原発では、同じ種類の装置が注水可能になる原子炉圧は0.75Mpaで事故時手順書では0.49MPaから使用とされています。柏崎刈羽原発は1Mpa・10気圧以下で注水可能な代替注水設備がない炉圧域が1.0~0.75Mpaと福島第一原発の10倍以上もあります。

このようにRCICと低圧の代替注水手段が、並行して注水する原子炉圧帯が、もともとありません。
つまり、RCICで炉注水は確保しておいて、代替注水系が使えるか、特に復水補給(移送)MUWC系が使えるか調べることができないのです。原子炉水位や注水流量等のパラメータを計器によって調べ、異常の有無を確認し、直す余裕、手順が、元々ないのです。調べてOKとわかってから使う慎重な手順ではない。一か八かの一発勝負が代替注水手段運用の手順にはあります。

それなのに「(3)原子炉代替注水時には原子炉水位や注水流量等のパラメータを計器によってバイパス流等により必要な流量が確保できない場合は、異常があると認識されるため、当該注水手段の異常要因(ポンプ・水源等の異常の有無、他系統への流れ込み等)の有無を確認し、要因の除去もしくは他の注水手段に移行することができると考えていたこと」とは・・、「真剣さが足りなかった」と今頃言われても。

東京電力は「なお原子炉圧力が 1MPa以下であっても、(原子炉隔離時冷却系・RCICで)注水できないわけではなく、定格流量以下にはなるが注水することは可能である。 」としています。そりゃ「可能」でしょう。しかし、その注水可能量が原子炉の冷却に必要な量に十分か否か問題です。「真剣さが足りなかった」と反省しているのです。新潟では真剣に気持ちで取り組んで、「可能である」などといい加減なことでは、0.9MPa時は何トン注水可能とデータで示していただきたい。

その一方、東電回答書では「MUWCを用いる場合には原子炉圧力は 0.49MPa[gage]以下としています。ただし,実際は逃し安全弁を『開』操作して下げられるまで下げ,注水量を確保することとしています。」これは、「原子炉圧力が 1MPa以下であっても、(原子炉隔離時冷却系・RCICで)注水できないわけではなく、定格流量以下にはなるが注水することは可能である。 」あるが、それで注水量が不足でも、逃し安全弁を開けて、一気に原子炉圧を下げて、MUWC・復水補給系で大量注水すると読めます。

しかし東電フクシマ核災害では、逃し安全弁を『開』操作できませんでした。様々な対策を採っていますが、それでもなお開操作できなくなった場合に備えておく必要があります。

注水模擬試験

まず、原子炉圧が0.75Mpaと0.49MPaの2条件で、MUWC(復水移送)系とFP(消火)系、消防車で原子炉にどれ位の注水できるのか、6号機、7号機の実機の注水試験を行って、漏洩・バイパス流の有無や注水量を実際に確かめておく必要があります。

東京電力は「柏崎刈羽原子力発電所では、まずは復水移送系にて、バイパス流など系外への流出が生じないことを確認しております。今後、消防車による原子炉代替注水について注水模擬試験にて確認する予定です。」その復水補給(移送)系の結果資料を見ると、原子炉圧力の設定がありません。

仮に大気圧・1気圧・0.1Mpaでやったのなら、意義が小さいと思います。実際には0.75Mpaや0.49Mpaと7倍から5倍の水圧がかかるのですから、漏れ出す箇所が顕れることが十分にあり得ます。

また、消防車の注水では、原発で火事がおきて、火災への消防水送水と原子炉への注水が同時に求められる場合、複合災害を想定した実験も必要だと思います。

東電は今後に注水模擬試験を予定しているとしています。その実験で、こうした条件を設定して行うことを東電に求めてください。その試験結果を技術委員会で検討してください。



東京電力のフィルターベントの性能評価は、空想的条件での実験データで信頼性に乏しい。

2014-02-14 13:21:21 | 新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術
2014年2月11日、第4回新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会が開催された。

東京電力のフィルターベントの性能評価は、空想的条件での実験データで信頼性に乏しい。

東京電力は格納容器の雰囲気温度が200℃(??聞き間違えた)、最高使用圧力の2倍をベント実施の要件としている。これまでの破壊実験などから最高使用圧力その2倍位から格納容器上部のトップフランジの取り付け部から漏れが始まると考えられている。最高使用温度は、ドライウェルは171℃、圧力抑制プール(サプレッション・チェンバ)は107℃であるが、電気ペネトレーションなど貫通部の充填物の耐熱性から200℃としていると説明していた。

東京電力は「防災において想定する事故シナリオについて」でベント実施を最高使用圧力の2倍の限界圧力到達の時点、基本ケースで約25時間後、追加シナリオ(1)で約20時間後、追加シナリオ(2)で約22時間後、追加シナリオ(3)で約18時間後としている。「フィルターベント装置の除去性能の整理」では圧力抑制プール(サプレッション・チェンバ)からベントガスを取り出すとしている。

ベント操作によって圧力抑制プール(サプレッション・チェンバ)は減圧される。圧力抑制プールの温度、つまり水温が大気圧の沸点100℃を超えていると減圧沸騰が起き水蒸気が生じる。またエントレインメント(微細な水滴)が生じる。この圧力抑制プールの温度、つまり水温が全く検討されていない。水蒸気やエントレインメント(微細な水滴)が考慮されていない。

原子力安全解析所の研究から

発災から約18~25時間後であり、その間の崩壊熱を蓄えた圧力抑制プール(サプレッション・チェンバ)は最高使用温度104℃を超えていると考えられる。減圧沸騰が起き水蒸気が生じる。

平成9年度に㈲原子力発電技術機構 原子力安全解析所が行った耐圧強化ベントに関する研究を参照すると、圧力抑制プールの温度が約350K(約77℃)では、エントレインメントの割合は0.0、温度が約373K(100℃)を超えるころからエントレインメントによる放出が生じ、プール温度が436K(約163℃)で0.12までの範囲でおおむね線形に、水温と正比例で増加する。380K(約107℃)では0.018となる。


㈲原子力発電技術機構 原子力安全解析所
平成9年度
アクシデントマネジメントに係る放射性物質挙動の評価
=耐圧強化ベント=
に関する報告書

発災から約18~25時間後の圧力抑制プールがこの107℃程度とすると、柏崎刈羽原発6号機、7号機の圧力抑制プール水量は約3600トンだから、その0.018つまり約60トンのエントレインメント(微細な水滴)が、生じる。圧力抑制プールの水には、通過した原子炉水の水蒸気に含まれていた放射能が捕獲されているから放射能で汚染されている。そのプール水から生じるエントレインメント(微細な水滴)は、当然にその放射能を含んでいる。捕獲される率は低く見て99%(DF100)とされている。その0.018、約60トンのエントレインメント(微細な水滴)には事故炉から水蒸気と共に出てきた放射能の約1.7%が含まれている。

配管の閉塞

減圧沸騰で発生する水蒸気は、格納容器からフィルタベント設備に至る配管のなかで冷やされ凝縮しエントレインメント(微細な水滴)化する。その際に周囲の放射能を取り込むであろう。また放射能の微粒子にエントレインメントが付着する。これらや100℃に近い膨大なエントレインメント(微細な水滴)などのエアロゾルは、通過する管の管壁に付着する。

原子力安全解析所の研究によれば、エアロゾルの数十%が付着する。約60トンのエントレインメント(微細な水滴)のエアロゾルの数十%、数十トンの放射能水が配管部に付着する。これによって管は閉塞状態化する。東京電力はフィルターベント系統の第二弁を「中間開」の開度にする運用で、ベントガスの流量を調整するとしている。配管に付着する数十トンの放射能水によっても同様の効果、ベントガス流量の減少が起こるであろう。屈曲部やU字管のような構造になっている配管部では特に付着、放射能水が溜まりやすい。それで全閉状態になるのではないか?付着した放射能水で配管部が全閉状態になれば、弁を開操作してもベントは起きないことになる。



東電フクシマ核災害では、圧力抑制プール点検にいった作業員の靴の底が融けたと報告されている。靴の底は何℃で融けるであろうか。靴をお湯に漬けても融けないから100℃以上ではないか?またベント操作を実施し弁を開けても、ベントが起きたか、つまりベントガスが配管部を通過し出たか不明である。エントレインメント(微細な水滴)などのエアロゾルにより配管部が閉塞し全閉状態になったとすれば、弁を開けてもベントガスが出なくても不思議ではない。

東京電力は「防災において想定する事故シナリオについて」で交響した解析で、ベント実施を最高使用圧力の2倍の限界圧力到達の時点として基本ケースで約25時間後、追加シナリオ(1)で約20時間後、追加シナリオ(2)で約22時間後、追加シナリオ(3)で約18時間後としている。圧力を決める要因である格納容器温度を解析し導出しなければ、この時刻は割り出せない。

格納容器の一部である圧力抑制プール(サプレッション・チェンバ)の温度、つまり水温は当然解析して出している。「想定する事故シナリオ」P21の「熱バランスに基づくフィルタベント実施時間について」で水温と水量の積である「格納容器内初期水量の顕熱」を取り上げているから、水温は解析してある。

東京電力は基本ケースで約25時間後、追加シナリオ(1)で約20時間後、追加シナリオ(2)で約22時間後、追加シナリオ(3)で約18時間後のベント開始時刻での、圧力抑制プールの水温の解析値から減圧沸騰の有無、発生するとみられる水蒸気量、エントレインメント(微細な水滴)量を割り出せる。

その量から、柏崎刈羽原発6,7号機のフィルターベント設備の配管部、格納容器からフィルターまでの配管部での、これらのエアゾルの管壁沈着・付着量が見積れる。算出式は原子力安全解析所の研究で平成10年には公表されており、公知である。配管部の配管の長さや形状は東京電力だけが知っている。恐らく機密事項である。その見積値から配管部の閉塞の程度、半分しか開いていないとか、10分の一しか開いていないとか全閉とかがわかる。全閉状態になるのなら、それ以降はベントが起こらない。

フィルタベント設備の性能評価を、専らフィルタのDF(濾過係数、放射能の捕捉率)で行っている。いくらDFが高くても、配管部がベントガスに含まれるエアロゾルで閉塞してベントガスがフィルタまで届かなければ宝の持ち腐れである。まず、ベントガスがフィルタまで継続的に届くのか確認すべきである。

フィルタの性能低下につながる水温上昇

さて、減圧沸騰で発生する水蒸気やエントレインメント(微細な水滴)などのエアゾルのうち管壁に付着しなかったものがフィルターベント装置に到達する。この装置は直径:約4m 高さ:約8mで中心を直径0.4mのベントガス通過管が通っている。だから12トン(12?)の水が入ると水面が約1m上昇する。東電資料の「フィルタベント装置の除去性能の整理」の8Pの実機挙動評価の評価図からは通常の水位1.0mから1.5m上方の2.5mが上限水位となっている。東電は、この以上の水面高ではベントガス噴出による水の吹き上がりなどにより金属フィルターが水に包まれ濡れて、放射能エアロゾルの捕捉力が低下することを懸念している。

だから、水蒸気やエントレインメントなど約20トン弱がこのベント装置に捕えられ溜まると水位が1.5m上がり上限水位に達する。約50トンなら金属フィルターの下端に水面が達する。東京電力は「上限水位に到達、排水作業を実施」と記している。東電資料ではFVタンクドレインラインとある配管、弁による排水と思われる。この水は放射能で汚染されているから、どのように処理するのであろうか?

放射能汚染水タンクに貯留となら、その容量がどれ位かで、このフィルターベント装置の稼働能力が制限される。

この排水量を決める要因は、一つはベント開始時の圧力抑制プールの温度である。それによって減圧沸騰で発生する水蒸気量、ともに発生するエントレインメントが左右される。この二つとベント開始後に崩壊熱で発生する水蒸気によって、フィルタベント設備の水に崩壊熱が持ち込まれます。その熱量で設備の水の水温が上がります。東電によれば「水温が高いほど,水蒸気の凝縮効果が小さくなるためDF(捕獲効率)は小さくなる」。100℃になれば沸騰し、設備に捕えられた放射能が再放出することになります。熱水の排水と消火系による給水が行われることになります。



東京電力は「防災において想定する事故シナリオについて」でベント開始時を解析しています。同時に解析できる温度を公表していません。フィルタベント設備の性能試験の際には「事故シナリオ」で基本ケースとした場合で行ったとあります。(P8、補足2)。発災から25時間後にベントとなる基本ケースで、25時間後の圧力抑制プールの温度で想定されるベントガスの水蒸気量、エントレインメント(微細な水滴)の微粒子・エアロゾルを含んだ試験用ガスを用いなければ、結果に実用的意味がありません。

ところがP5には「試験用微粒子は,TiO2粒子(密度4.23g/cm3),Fe2O3粒子(密度5.24g/cm3)PSL粒子(密度1.0g/cm3)を使用(CsI粒子の密度は4.5g/cm3)」とあります。水蒸気量やエントレインメント(微細な水滴)の微粒子の記載はありません。無視しています。

この二つ形態で主にフィルタベント設備の水に崩壊熱が持ち込まれ、その熱量で設備の水の水温が上がり「水温が高いほど,水蒸気の凝縮効果が小さくなるためDF(捕獲効率)は小さくなる」。このDF減少は、圧力抑制プールのプール水でも同様の除去効果があり、スクラビングといいます。

スクラビングは、最初は水温が低い、常温だからDF1000(千分の999)はあるが原子炉からの水蒸気流入で水温上昇するから減少するから、全体としては全期間的にはDF100と置いて、いや10の方が適切など論議されています。ですから、水蒸気量、エントレインメント(微細な水滴)などによる水温上昇はDFを考える、評価する上で欠かせません。

東京電力は、「除去性能の整理」P3で性能試験では「水温としては常温として設定」としています。水蒸気量やエントレインメント(微細な水滴)の微粒子はここでも無視されています。DFに大きな影響を与えるこの二つによる水温上昇を無視し除いた試験データには、何の実用的な価値はありません。実用機器であるフィルタベント設備の性能評価には全く使えません。

水温的に最も除去性能の高い時が継続するという有り得ない空想的条件で実験して、性能評価しています。全く信頼性に乏しい。


東京電力の提出資料「防災において想定する事故シナリオについて」は、信頼できない。

2014-02-12 15:30:19 | 新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術
2014年2月11日、第4回新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会が開催された。

東京電力の提出資料「防災において想定する事故シナリオについて」は、信頼できない。

この資料ではDEC(デック・設計ベースを超える状態)に対応する設備(DEC対策設備)の機能喪失も仮定した事故シナリオを「新潟県からのご要望事項」として追加的に3例検討している。追加シナリオ(1)では、「発生後、4時間後に消防車による原子炉注水を開始」としている。

しかし東京電力は昨年1月25日に原子力規制委員会に提出した「当社の原子力発電プラントの安全確保に関する考え方」によれば、可搬設備である消防車による対応が期待できるのは12時間後として対処するフェーズドアプローチをとるとしている。

(平成25年1月25日、第12回発電用軽水型原子炉の新安全基準に関する検討チーム、資料3当社の原子力発電プラントの安全確保に関する考え方【PDF:557KB】

フェーズドアプローチは、「?事故初期:人的リソースが限定・現場アクセス困難の可能性→恒設設備だけでも初期対応ができるように設計することが適切
? 事故後期:状況が輻輳・特定の条件で設計した恒設設備では対応できなくなるおそれ
→可搬設備も選択肢に加え、対応の多様性や代替可能性を高めることが重要」「対策は時間余裕に応じて適切に選定しなければ、安全上有効に機能せず。」「時間余裕に応じた段階毎に対策を設定する」として採用した東京電力は説明している。



すなわち12時間は当直が設計ベースの恒設設備、・恒設DEC対応設備によって対応する。人的リソースとして当直以外のオンサイト要員や対応設備として消防車や電源車など可搬設備が使えると期待できるのは12時間以降になるとして対応策を練り上げるフェーズドアプローチを採用すると東京電力は原子力規制委員会に説明している。

したがって、DEC対策設備の機能喪失も仮定した事故シナリオでは消防車による原子炉注水の開始は、早くて12時間後、もっと有りうるケースは12+2の14時間後、保守的には16時間後を条件において解析すべきである。

「新潟県からのご要望事項」としてる追加的検討では、追加シナリオ(2)だけが12時間後になっているだけである。つまり、東京電力は自らが打ち出したフェーズドアプローチをほとんど無視しているのである。新潟県が要望したDEC対策設備の機能喪失も仮定した事故シナリオを検討しているかのように見えるが、東電が自ら課している「消防車や電源車など可搬設備が使えると期待できるのは12時間以降になる」という条件を捻じ曲げて、4時間後、6時間後に消防車による注水が始まるという事故進展が遅くなり事故規模が小さくなるように解析条件を操作している。信用できない。


追加シナリオ(2)だけが12時間後になっているが、それでは東電フクシマ核災害では機能を失った原子炉隔離時冷却系が設計ベースの8時間は稼動するとしている。だから、崩壊熱量の多い8時間は原子炉隔離時冷却系による原子炉注水と除熱が行われている。注水が8時間後に途絶える。発災から8時間経っているので追加シナリオ(1)(3)より崩壊熱の発生量は減少しており、3時間後の「発生後約11時間後に炉心損傷開始」。それから1時間後、炉心損傷、メルトダウンが進展しているがメルトスルーしていない段階で、消防車により注水が再開する。その原子炉隔離時冷却系による注水が東電フクシマ核災害と同様になければ、東電資料30ページによれば「無注水により事象発生後約1時間後に炉心損傷開始」である。

原子力安全基盤機構JNESの平成18年度の研究「BWR-RCCV型格納容器内ソースターム分布」 
「を参照すると、発生から約6時間後にメルトスルー、溶融核燃料が圧力容器下部を破って漏れ出す。漏れ出した高温の溶融核燃料が格納容器容器の床のコンクリートと反応して、水素ガスなどが発生し、格納容器内の圧力が急激に上昇する。研究では約12時間後には格納容器の最高使用圧力の約2倍、東電によればベントをする圧力に達する。約17.3時間で約3倍。




JNESの平成18年度の研究は「シビアアクシデント晩期の格納容器閉じ込め機能の維持に関する研究報告書」にある。

追加シナリオ(3)では炉心損傷開始は約1時間後、追加シナリオ(1)では炉心損傷が0.4時間後と早まる。

東電が採っているフェーズドアプローチでは「消防車や電源車など可搬設備が使えると期待できるのは12時間以降になる」。この条件下では、追加シナリオ(1)(2)(3)では何れの場合も、メルトダウン、メルトスルーの後に、約4~6時間後に消防車の使用が可能になると期待できる。従って、消防車による下部D/W注水はメルトスルー前には行われないから、熔融核燃料と格納容器容器の床のコンクリートと反応は抑制されない。つまり、約11~12時間後には格納容器の最高使用圧力の約2倍、東電によればベントをする圧力に達するとJNESの研究から推測される。東京電力はベント実施を約20時間後としているが、フェーズドアプローチ下では約11~12時間後と早まる。

またベントガスの成分や放射能の環境放出経路も異なる。追加シナリオ(1)(2)ではメルトスルーはしていない。熔融核燃料と格納容器容器の床のコンクリートと反応は起きない想定である。追加シナリオ(3)ではメルトスルー前に消防車による下部D/W注水が行われるシナリオである。下部D/W・ペデスタルに十分な水量があれば、コンクリートとの反応は極めて抑制される。それによる水素ガスの発生が無いか極めて少なくなる。

しかし、フェーズドアプローチ下ではメルトスルーの後に、スルーしてから約4~6時間後に消防車の使用が可能になると期待される。JNESの平成18年度の研究からは、このような場合は、「格納容器破損時の圧力に対する分圧の寄与は、ほとんどが水素によるものである」。ベントガスに含まれる水素ガスの量は東電が想定するよりもはるかに多くなる。

追加シナリオ(3)のようにメルトスルー直後から熔融核燃料の水による冷却=水蒸気の発生がある場合、JNESの平成18年度の研究からは格納容器内の「圧力上昇の原因は水蒸気の寄与がほとんどである」。従って、消防車などによる格納容器の上部D/Wに注水・散水があると水蒸気が凝縮し圧力が下がる。東電が採るフェーズドアプローチ下ではこのような熔融核燃料への注水による水蒸気発生は12時間後まではなく、圧力上昇はほとんどが水素によるものだから、12時間後に消防車で格納容器に注水が行われても、それによる圧力低下はあまり期待できない。



また、圧力容器からメルトスルーで下部D/W・ペデスタルに落下した熔融核燃料の平均温度は1530℃(1800K)を超え床を構成する鋼製ライニング板を溶かして、その下の厚さ約1.6mの鉄筋コンクリート部と反応する。ペデスタル床にはドレインビットという集水溝があり、底の鉄筋コンクリート部は厚さが1.6mもない。メルトスルーから約4~6時間後に消防車による注水が行われるとして、それまでの約4~6時間にドレインビットの底面が破損し鉄筋コンクリート部を熔かしきり格納容器の最外部を構成する鋼板が熔融するのではないか?

そうなると、格納容器は最低部最深部で破損し気密性を失い溶融核燃料が地下に出ることになる。地下水を経て放射能が原子炉外に環境中に拡散することになる。フィルターベントの目的は格納容器の加圧破損を防ぎ気密性を保持することである。その気密性が既に破たんしている状態でのフィルターベントは、何の意味があるのだろうか。

東京電力が2月11日に提出した資料「防災において想定する事故シナリオについて」は、自らが採用しているフェーズドアプローチを反映していない極めて恣意的な条件設定によるものである。DEC対策設備の機能喪失も仮定した事故シナリオでは消防車による原子炉注水の開始は、早くて12時間後、もっと有りうるケースは12+2の14時間後、保守的には16時間後を条件において解析すべきである。

また新潟県は、追加シナリオ(1)のソースタームでSPEEDIを使った拡散予測を予定していると聞いたが、追加シナリオ(1)は発災から4時間後に消防車格納容器注水を設定している。東京電力が採用しているフェーズドアプローチでは、4時間後の消防車活用は想定できない。12時間後、14時間後、保守的に16時間後を条件に解析をやり直して、そのソースタームで行うべきである。


東電回答から・・柏崎刈羽6、7号機は福島第一3号機より長時間の全交流電源喪失・SBOにもろい??

2014-02-02 19:23:35 | 原発 冷却注水の確保
東京電力から9月に出した問合せに回答がありました。それを見ると柏崎刈羽原発の6、7号機は福島第一原発の3、2号機よりも安全性が低いこととなり、唖然としました。ご存知のように柏崎刈羽原発の6、7号機を東電は再稼動を狙っています。しかし、今も放射能を撒き散らしている福島第一原発よりもイザという時の安全性が低いのです。原子炉へ緊急に注水が設計設備で必要量確保されていない範囲、原子炉圧の範囲が大きいのです。それを放置したままです。

東電福島第一原発は3.11の地震と津波で、外部からの交流電力の送電と非常用発電機を失ってしまいました。これを全交流電源喪失・ステーションブラックアウト・SBOといいますが、1、2号機は原子炉・原発の状態を知るための計測機器や弁を開閉するための直流電源・蓄電池も津波を被って失っています。3号機は直流電源が制御系が生き残ったのです。ですから、3号機は一番、メルトダウンやシビアアクシデント・過酷事故を避け得たのです。しかし原子炉への注水が途絶え、核燃料の溶融と原子炉圧力容器から漏出(メルトスルー)し、水素ガスが大量発生し水素爆発して放射能を出し続けています。



全交流電源喪失・SBO時には、冷温停止できるのか?東電は福島第一3号機では失敗しているが、柏崎刈羽6、7号機ではできるようにしたのか?

事故対策で柏崎刈羽原発は直流電源など制御系を補強・強化しています。ですから、事故時には福島第一の1、2号機ではなく3号機の状況に近くなると思います。そして、東京電力は外部電源が無くても3台ある非常用発電機のうち1台でも発電すれば、約1時間半で収束できる、原子炉を100℃以下の冷温停止にもっていけると豪語しています。中越沖地震の原発影響の検証、新潟県の技術委員会の検討会で、2007年に説明しています。
 
非常用発電機も止まる全交流電源喪失・SBO時には、冷温停止できるのか?東電は福島第一3号機では失敗しているが、柏崎刈羽6、7号機ではできるようにしたのか?できるなら時間はどれ位、約1時間半?そうしたことを知りたいわけです。
 
運転時の原子炉給水

東京電力の原発は沸騰水型というタイプです。原子炉で核分裂などで発生した熱で、水を沸かしその高温(約290℃)高圧(約70気圧)の水蒸気で蒸気タービンを廻す。その蒸気タービンで作られた回転力で発電機を廻して発電する。一方原子炉からの高温高圧の水蒸気は、エネルギーを約三分の一失って圧力や温度は下がるけれど依然水蒸気です。それも放射能の混じった水蒸気です。それを復水器という装置で水にします。水は水蒸気発生で水がなくなっていく原子炉へ戻す。

復水器の構造は瞬間湯沸かし器や車の水冷ラジエターと同じです。復水器では海から電動の循環水ポンプで取り込んだ冷たい海水が通った管の間を蒸気タービンを経た水蒸気が通ります。瞬間湯沸かし器ではつめたい水道水を通した管の間を高温の燃焼ガスを通してお湯にしますが、復水器は名の通り高温の水蒸気を水に戻す、凝縮します。これを復水といいます。凝縮で体積がグュグッと減ります。
 
さらに蒸気式空気抽出系(SJAE)という装置で水素ガスなどを抜き出します。この水素ガスは、放射線で炉水が分解されて生じたものです。柏崎刈羽6、7号機では復水器では大気圧・1気圧より低くなります。取り込む海水は発電容量100万kWに対し原子力発電(BWR)で70立方メートル程度。火力発電で毎秒40立方メートル程度ですから、原発の効率の悪さがよくわかります。

この凝縮の復水が復水器の下部に溜まります。それを低圧復水ポンプでくみ出し、高圧復水ポンプポンプ、給水ポンプとへて原子炉へ戻し給水します。この間に190~225℃程度まで加熱加温します。お湯を入れて熱くなったコップに冷水を注いだら割れます。これと同じで、水温が違いすぎると原子炉が傷むのでそれを避けるためです。



通常の停止手順

原子炉を止める時は制御棒の挿入、再循環ポンプの流量の減少で核分裂反応を減少していきます。当然、水蒸気の発生量が減りますが原子炉からの発電タービンへの搬出量を加減して、圧力は保ちます。発電タービンの出力が落ちていきます。運転時の定格出力の約10%程度で発電タービンを止めます。(電力の送電の系統から外すので解列といいます。)原子炉で発生する水蒸気は、復水器に直接にいくようにします。タービンバイパス弁を開けて送り込みます。

発電タービン、発電機を止めた後に原子炉の核分裂を完全に停止させて「未臨界」にし「高温停止」状態にします。その後も崩壊熱が出続けるので蒸気発生が続きます。この水蒸気を復水器にタービンバイパス弁を開けて送り込み続け、水に戻し給水を続けます。水素ガスなどを抜き出す蒸気式空気抽出系(SJAE)には、補助ボイラーで蒸気を供給します。
 
減圧と炉温度の低下
原子炉の温度を下げるには原子炉の圧力を下げます。原子炉の圧力を下げる減圧すると、冷却水の沸点が下がります。運転時の約70気圧・7MPaメガパスカルから約30気圧・3MPaまで減圧すると沸点は約290℃から約235℃まで下がります。冷却水が最高でもその温度になりますから、水温が炉心の温度が下がります。そのためにはドンドン復水器に水蒸気を送ります。最終的に大気圧まで減圧すると100℃です。

運転時の約70気圧・7MPaメガパスカルから2時間かけて約30気圧・3MPaまで下げるとします。その間にはその2時間に崩壊熱で発生する水蒸気と減圧沸騰で発生する蒸気がでます。約290℃水の持っている熱量は3MPaメガパスカルの沸点約235℃水の熱量よりも25%も大きいので、この余分な熱で冷却水が約14%沸騰します。これらの水蒸気を復水器に送ります。電動の循環水ポンプで取り込んだ冷たい海水が通った管の間を水蒸気を通し、水に凝縮させて、その水を電動の低圧復水ポンプでくみ出し、高圧復水ポンプポンプ、給水ポンプと加圧して原子炉へ戻して、水面が核燃料の上に常にあるように水位を保ちます。

このように補助ボイラーと電動ポンプ4台で減圧と給水を行います。この電動ポンプの電力は、原子炉の発電機は止っていますから、他の発電所から送電、外部電源に頼ります。このようにして約1MPaメガパスカル・約10気圧まで下げます。下がるにつれて炉に給水しているポンプをとめ最終的には低圧復水ポンプ1台にします。

原子炉圧力が0.93MPa以下で残留熱除去系(RHR)を立ち上げウォーミングアップを行いいます。0.75MPa・約173℃で残留熱除去系(RHR)を使います。原子炉-残留熱除去系熱交換器-原子炉と炉水を循環する停止時冷却モードで運転を行います。残留熱除去系熱交換器には海水で冷された真水が送られていて、その原子炉の炉水が冷やされます。直接的な冷却、崩壊熱の除去を開始します。減圧を続行し、まだ発生する水蒸気は復水器に送ります。原子炉圧力が大気圧に、冷却水温度が100℃未満になると「冷温停止」です。 
原子炉が大気圧で水温度80℃以下までは復水器も使います。その後原子炉系と切り離し、残留熱除去系(RHR)停止時冷却モードで崩壊熱の除去を継続します。

参照 ATOMICA BWRの起動・停止方法 (02-02-03-01)

さて地震時は次のようになります。(続く)