「それはね、そうして生まれてきた言葉が、脈々と生き続けていること」
「なるほど、生み出した人に頼まれたわけでもないのに、ずうっと生き続けているということだね?」
女の子の関心は、先生の一歩先を行っていたようです。
生まれたことではなくて、生き続けてきたことに、興味が湧いたようです。
「そう。仕事や義務で受け継がれるものはたくさんあるかもしれないけど、言葉はそういうものではないでしょう?」
「そうだね。誰にも強制されるものではないね」
「それなのに、ちゃんと埋もれずに生き続けている。ね?すごいと思うでしょう?」
「たしかに、すごいことだね。そして、それに気づくるみちゃんも、すごいと思うよ」
「えへへ、そうかなあ」
「ああ、本当に、いつもながらに感心するセンスだよ」
「先生は、褒め上手だから、照れるなあ」
「別におだてているわけではなくて、素直にそう思っているだけだよ?」
「そうなの?」
「そうだよ?」
先生が尊敬と信頼を置く女の子。
先生から安心をもらえる女の子。
その関係が、この旅で、女の子の感性を飛躍的に研ぎ澄ますことにつながっているのは、間違いがなさそうです。
「じゃあ、ここで問題です」
「え、なに、先生、突然。むずかしい問題はなしだからね?」
「おやおや、いつもオープンな問題を出して来るのに、弱気だねえ?」
「先生、いじわるだなあ」
「あはは、いじわるだったね」
「あはは、じゃない」
「えへへ」
「えへへ、じゃない」
いつもと、立場も言い回しも反対のようです。
ちょっとだけ、今日の先生はペーターに似ているかもしれません。
「いいよ、先生。受けて立ちましょう」
「お、腹をくくったね?」
「はい。では、問題をどうぞ」
「はい。では、いきます」
リスボンのときのお返しのような、オープンな問題が来るのでしょうか。
女の子は、ドキドキして、先生の口元をのぞき込みます。
「仕事や義務でもないのに、誰に頼まれたわけでもないのに、どうして言葉は生き延びてこられたのでしょうか?」
「えーー」
「あはは」
「あはは、じゃない」
「えへへ」
「えへへ、じゃない。それ、先生、ちゃんと答え知ってる?答えを分かっていて、問題出してる?」
「あくまでも、わたしのなかでの答えだけれどね」
「えーーー、それだと、ちゃんと答え合わせができないじゃない」
「たしか、リスボンで、同じような問題を出してきましたよね?忘れたとは言わせませんよ?」
「そうだけどお・・・」
女の子は、グーの音も出ないようです。
けれど、果たして本当にそうなのでしょうか。
待ってましたとばかりの思いが隠されているような、そんな眼の光にも見えます。
「なんてね。先生、ひとときの王様気分を味わえた?」
「は?」
先生は虚を突かれます。
難儀している女の子に、少し助け舟を出そうと思っていたくらいです。
形勢逆転です。
「リスボンのとき、私は王様だった。問題を出す側は、いつでもそう。だって、答えを知っているから。どうやったって、主導権は出題者側にある。だから、今先生は、きっとそう思って、ちょっといい気分だったでしょう?」
「そうだね。間違いなく、王様だった。怖いもの無しの王様だった」
「あはは、残念でした。問題を出された私は、王様にはなれないけれど、どういう問題が来るのかを予想していた私は、従者ではないよ?」
「くうう、予想されていたのかあ」
「うふふ、なんだか、やっぱり、私がまた王様になっちゃったみたい」
「ーーーかもしれない。くやしいなあ」
いつでも先生は、女の子の従者のようです。
いつでも女の子は、先生の先にいるようです。
その関係が、女の子の成長に拍車をかけているようです。
(つづく)
「なるほど、生み出した人に頼まれたわけでもないのに、ずうっと生き続けているということだね?」
女の子の関心は、先生の一歩先を行っていたようです。
生まれたことではなくて、生き続けてきたことに、興味が湧いたようです。
「そう。仕事や義務で受け継がれるものはたくさんあるかもしれないけど、言葉はそういうものではないでしょう?」
「そうだね。誰にも強制されるものではないね」
「それなのに、ちゃんと埋もれずに生き続けている。ね?すごいと思うでしょう?」
「たしかに、すごいことだね。そして、それに気づくるみちゃんも、すごいと思うよ」
「えへへ、そうかなあ」
「ああ、本当に、いつもながらに感心するセンスだよ」
「先生は、褒め上手だから、照れるなあ」
「別におだてているわけではなくて、素直にそう思っているだけだよ?」
「そうなの?」
「そうだよ?」
先生が尊敬と信頼を置く女の子。
先生から安心をもらえる女の子。
その関係が、この旅で、女の子の感性を飛躍的に研ぎ澄ますことにつながっているのは、間違いがなさそうです。
「じゃあ、ここで問題です」
「え、なに、先生、突然。むずかしい問題はなしだからね?」
「おやおや、いつもオープンな問題を出して来るのに、弱気だねえ?」
「先生、いじわるだなあ」
「あはは、いじわるだったね」
「あはは、じゃない」
「えへへ」
「えへへ、じゃない」
いつもと、立場も言い回しも反対のようです。
ちょっとだけ、今日の先生はペーターに似ているかもしれません。
「いいよ、先生。受けて立ちましょう」
「お、腹をくくったね?」
「はい。では、問題をどうぞ」
「はい。では、いきます」
リスボンのときのお返しのような、オープンな問題が来るのでしょうか。
女の子は、ドキドキして、先生の口元をのぞき込みます。
「仕事や義務でもないのに、誰に頼まれたわけでもないのに、どうして言葉は生き延びてこられたのでしょうか?」
「えーー」
「あはは」
「あはは、じゃない」
「えへへ」
「えへへ、じゃない。それ、先生、ちゃんと答え知ってる?答えを分かっていて、問題出してる?」
「あくまでも、わたしのなかでの答えだけれどね」
「えーーー、それだと、ちゃんと答え合わせができないじゃない」
「たしか、リスボンで、同じような問題を出してきましたよね?忘れたとは言わせませんよ?」
「そうだけどお・・・」
女の子は、グーの音も出ないようです。
けれど、果たして本当にそうなのでしょうか。
待ってましたとばかりの思いが隠されているような、そんな眼の光にも見えます。
「なんてね。先生、ひとときの王様気分を味わえた?」
「は?」
先生は虚を突かれます。
難儀している女の子に、少し助け舟を出そうと思っていたくらいです。
形勢逆転です。
「リスボンのとき、私は王様だった。問題を出す側は、いつでもそう。だって、答えを知っているから。どうやったって、主導権は出題者側にある。だから、今先生は、きっとそう思って、ちょっといい気分だったでしょう?」
「そうだね。間違いなく、王様だった。怖いもの無しの王様だった」
「あはは、残念でした。問題を出された私は、王様にはなれないけれど、どういう問題が来るのかを予想していた私は、従者ではないよ?」
「くうう、予想されていたのかあ」
「うふふ、なんだか、やっぱり、私がまた王様になっちゃったみたい」
「ーーーかもしれない。くやしいなあ」
いつでも先生は、女の子の従者のようです。
いつでも女の子は、先生の先にいるようです。
その関係が、女の子の成長に拍車をかけているようです。
(つづく)
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