はな to つき

花鳥風月

Gravity Blue 4

2012-04-30 04:38:43 | 【Gravity Blue】
彼女は、最も自分を知っていた。
そして、いつでも、自分の存在に、生命に苦悩していた。
そんな彼女も含めて、私は彼女のすべてに共感していた。
というより、羨望していた。

透きとおるその顔は、
絶対に、異国の血が入っているというくらいに端正で、
毎日一緒に暮らしていても、いつでも見惚れてしまう。
少し痩せすぎだけど、男性の平均身長ほどあるそのスタイルは、
バービーそのもの。
まったく、嘘みたいな人だ。

普通なら、同じ女性として隣にいたくないと思う。と、思う。
けれど、彼女は違った。
私を筆頭に、彼女に心底惹かれている人たちの中心に、いつもいる。
信頼関係を築くときに、彼女は、
自分の美貌や才能を謙遜したり否定したりはしない。
それ以上に、鼻に掛けることはもっとしない。

彼女が生きていくことにおいては、そんなことは戯言でしかないらしい。
現代文明に生きゆく人間として、最低限の身だしなみはしても、
化粧はどんな時にもしない。
そのくらいに、現代社会に違和感を抱いている人なのだ。
もしも私が彼女だったら、毎日が楽しくて、
世界は私のために回っていると勘違いするのは、
間違いないだろう。

しかし彼女は、まるで逆。
まったく、満たされていない。
何かを求め続けている。
彼女の中のどこかが、渇いている。
そして、実態のわからない、その渇きが極限に達すると、
決まって旅に出る。

そんな姉との時間を、私は、とても大切にしていた。
将来の話や、恋のこと、友達の話に、マイブーム。
そんなとりたてて面白くもない、お子ちゃまな話を
心から愉しそうな眼をして聞いてくれた。
反対に彼女の話は、時間を完全に忘れさせるものだった。