岐阜大大学院医学系研究科眼科学の山本哲也教授は3月16日、ファイザーの国内初の緑内障治療配合剤ザラカムの承認取得後の記者発表会で講演し、配合剤の登場によって患者の薬物コンプライアンスの改善につながり、治療効果が高まるとの期待感を示す一方で、配合されている2成分それぞれの副作用が発現する恐れがあることなどに注意が必要との見解を示した。
緑内障は、眼球内を循環する液体(房水)の増加による眼球中の圧力(眼圧)の上昇などにより、視神経が損傷を受け、視野が徐々に欠けていく疾患。ファイザーによると、点眼薬による眼圧下降療法が主流で、治療の成否は点眼のコンプライアンスに懸かっているが、2剤以上を併用する患者が6割以上を占める中、複数の目薬を点眼する場合は5分以上間隔を空ける必要があるなどの煩わしさがある。
ザラカムは、房水の流出を促進するプロスタグランジン製剤キサラタンと、房水産生を抑制するβ遮断薬チモプトールを配合し、この2つの作用で眼圧を下げる。1日1回投与で、キサラタン(1日1回)とチモプトール(1日2回)の併用と同程度の眼圧下降効果が得られるという。
山本教授は講演で、配合剤の利点として、▽点眼回数が減少する▽点眼間隔(5分以上)に対する配慮が不要になる▽薬剤管理が容易になる―などを挙げ、患者が指示通りに薬剤を使いやすくなり、予後の改善が期待できるとした。
一方、課題としては、キサラタンでは目の下の皮膚の色が変色するなど、チモプトールでは気管支ぜんそくを誘発するなど、それぞれが持つ副作用への配慮が必要だと指摘。また、「緑内障はどこまで治療したらいいかは難しく、(眼圧は)下げれば下げるほどいいから、薬をどんどん使いましょうという人もいるが、それはやり過ぎだ」と述べ、治療の際には症例ごとの「あるべき眼圧」を見定めながら、「少ない薬剤数で治療するのが1つの手」との見解を示した。
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