暑い暑いと言っても始まらないですが、暑いです。
今は、甲子園やっているし、もうすぐ北京オリンピックも開幕だというのに、まだ、先月の過去問をやっている・・甲子園は高校生でいる間、オリンピックは4年に一度、彼らに比べれば、安全パイなんでしょうが、司法書士試験が長くなると、これもこれで博打だななどと思えるわけです。
【問題】
第14問
次の対話は、抵当権に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうちのどれか。
教授: 今日は、抵当権者が、抵当不動産の占有者に対して明渡しを請求する場合について考えてみましょう。判例は、抵当権者が抵当不動産の占有者に対して明渡しを請求することができるとしていますか。
学生:ア 抵当権者は抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済権の行使が困難になるような状態のときは、抵当不動産の所有者に対して抵当不動産を適切に維持又は保存するように求める請求権を保全するため、民法第423条の法意に従い、所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を代位行使して抵当不動産の明渡しを請求することができるとしています。
教授: では、抵当権者が直接抵当権に基づく妨害排除請求権を行使することができるかどうかについて、判例は、どのような考え方をとっていますか。
学生:イ 抵当権は、抵当不動産につき、抵当権者が他の債権者に優先して自己の債権の弁済を受ける担保権であって、抵当不動産を占有する権原を包含するものではありませんので、抵当権に基づく妨害排除請求権を行使することはできないとしています。
教授: ところで、判例は、抵当権者は抵当不動産の占有者に対し直接自己に明け渡すことを請求することを認めていますか。
学生;ウ 抵当権は、抵当不動産を占有する権原を包含するものではなく、抵当不動産の占有はその所有者にゆだねられているので、抵当権者は直接自己に明け渡すことを請求することはできないとしています。
教授: 抵当権者が抵当不動産の占有者に対し抵当不動産の明渡請求をしたにもかかわらず、その占有者が理由なくこれに応じないで違法に占有を継続する場合、判例は、抵当権者はその占有者に対し、賃料額相当の損害賠償金の支払いを請求することができるとしていますか。
学生;エ 抵当権者は、抵当不動産を自ら使用することはできないから、抵当権者は抵当不動産の占有者に対し賃料相当額の損害賠償金の支払いを請求することができないとしています。
教授: 抵当不動産の占有者の中には、抵当権の設定の登記がされた後に抵当不動産の所有者から占有権原の設定を受けている者もいますね。判例は、このような占有者に対しても、抵当権者が、抵当不動産の明渡しを請求することができるとしていますか。
学生:オ 抵当権は抵当不動産の所有権の使用収益権を排除することができない権利ですから、抵当不動産の所有者に由来する占有権原を有するこのような占有者に対し、抵当権者は、抵当不動産の明渡しを請求することはできないとしています。
1 アエ 2 アオ 3 イウ 4 イエ 5 ウオ
【感想】
抵当権者が抵当不動産の占有者に対して明渡請求をすることができるという、平成11年の判例と、平成17年の判例がベースになっている問題です。間違えました。この失点は痛恨ですね。直前期に解いた余計な難問がアダとなっています。変なところに注意が向いています。今解いたらシンプルに正解、直前期前でも正解だったでしょう。
【考察】
肢アは、平成11年の有名な判例のままです。抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難になるような状態があるときは、抵当権者は抵当不動産の所有者に対して抵当不動産を適切に維持又は保存するよう求める請求権を保全するために、所有者の妨害排除請求権を代位行使して、抵当不動産の明渡しを請求することができる。したがって○。
肢イも同じ判例で、抵当権に基づく妨害排除請求権を行使することもできるので×。
肢ウもこれまた同じ判例で、直接抵当権者への明渡しを求めることができるので×。
肢エは、平成17年の判例のまま。「抵当権者は、抵当不動産を自ら使用できず、民事執行法上の手続によらずに使用による利益を取得することもできないから、抵当不動産に対する第三者の占有により賃料相当の損害を被るものではない。」というわけで○。
肢オも平成17年の判例のまま。というわけで×。
肢エで自信がもてず、さらに、肢オで、「交換価値の実現が妨げられている」、とか、「優先弁済権の行使が困難となるような状態」のような事情の記載がないこと、さらに、「抵当権者の同意がある場合の賃借権の対抗力」について思い浮かべてしまって、おかしいかな、などと思って、オを○にしちゃってます。こういう失点はもったいないですね。
【条文】
第369条 (抵当権の内容)
1 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債務者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
2 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。
【判例】
第三者が抵当不動産を不法占有することにより、 抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは,抵当権者は,占有者に対し、抵当権に基づく妨害排除請求として,上記状態の排除を求めることができる(最判平11.11.24)。
抵当権者は、抵当不動産の所有者に対して有する右状態を是正し抵当不動産を適切に維持又は保存するよう求める請求権を保全するため、所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を代位行使することができる。(同判例より)。
建物を目的とする抵当権を有する者がその実行としての競売を申し立てたが、第三者が建物を権原なく占有していたことにより、買受けを希望する者が買受け申出をち躊躇したために入札がなく、その後競売手続は進行しなくなって、建物の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となる状態が生じているなど判示の事情の下においては、抵当権者は、建物の所有者に対して有する右状態を是正するよう求める請求権を保全するため、所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を代位行使し、所有者のために建物を管理することを目的として、不法占有者に対し、直接抵当権者に建物を明け渡すよう求めることができる(同判例より)。
抵当権者は,抵当不動産に対する第三者の占有により賃料額相当の損害を被るものではない(最判平17.3.10)。
抵当権設定登記後に抵当不動産の所有者から占有権原の設定を受けてこれを占有する者についても,その占有権原の設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ,その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは,抵当権者は,当該占有者に対し,抵当権に基づく妨害排除請求として,上記状態の排除を求めることができるものというべきである。なぜなら,抵当不動産の所有者は,抵当不動産を使用又は収益するに当たり,抵当不動産を適切に維持管理することが予定されており,抵当権の実行としての競売手続を妨害するような占有権原を設定することは許されないからである(同判例より)。
今は、甲子園やっているし、もうすぐ北京オリンピックも開幕だというのに、まだ、先月の過去問をやっている・・甲子園は高校生でいる間、オリンピックは4年に一度、彼らに比べれば、安全パイなんでしょうが、司法書士試験が長くなると、これもこれで博打だななどと思えるわけです。
【問題】
第14問
次の対話は、抵当権に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうちのどれか。
教授: 今日は、抵当権者が、抵当不動産の占有者に対して明渡しを請求する場合について考えてみましょう。判例は、抵当権者が抵当不動産の占有者に対して明渡しを請求することができるとしていますか。
学生:ア 抵当権者は抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済権の行使が困難になるような状態のときは、抵当不動産の所有者に対して抵当不動産を適切に維持又は保存するように求める請求権を保全するため、民法第423条の法意に従い、所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を代位行使して抵当不動産の明渡しを請求することができるとしています。
教授: では、抵当権者が直接抵当権に基づく妨害排除請求権を行使することができるかどうかについて、判例は、どのような考え方をとっていますか。
学生:イ 抵当権は、抵当不動産につき、抵当権者が他の債権者に優先して自己の債権の弁済を受ける担保権であって、抵当不動産を占有する権原を包含するものではありませんので、抵当権に基づく妨害排除請求権を行使することはできないとしています。
教授: ところで、判例は、抵当権者は抵当不動産の占有者に対し直接自己に明け渡すことを請求することを認めていますか。
学生;ウ 抵当権は、抵当不動産を占有する権原を包含するものではなく、抵当不動産の占有はその所有者にゆだねられているので、抵当権者は直接自己に明け渡すことを請求することはできないとしています。
教授: 抵当権者が抵当不動産の占有者に対し抵当不動産の明渡請求をしたにもかかわらず、その占有者が理由なくこれに応じないで違法に占有を継続する場合、判例は、抵当権者はその占有者に対し、賃料額相当の損害賠償金の支払いを請求することができるとしていますか。
学生;エ 抵当権者は、抵当不動産を自ら使用することはできないから、抵当権者は抵当不動産の占有者に対し賃料相当額の損害賠償金の支払いを請求することができないとしています。
教授: 抵当不動産の占有者の中には、抵当権の設定の登記がされた後に抵当不動産の所有者から占有権原の設定を受けている者もいますね。判例は、このような占有者に対しても、抵当権者が、抵当不動産の明渡しを請求することができるとしていますか。
学生:オ 抵当権は抵当不動産の所有権の使用収益権を排除することができない権利ですから、抵当不動産の所有者に由来する占有権原を有するこのような占有者に対し、抵当権者は、抵当不動産の明渡しを請求することはできないとしています。
1 アエ 2 アオ 3 イウ 4 イエ 5 ウオ
【感想】
抵当権者が抵当不動産の占有者に対して明渡請求をすることができるという、平成11年の判例と、平成17年の判例がベースになっている問題です。間違えました。この失点は痛恨ですね。直前期に解いた余計な難問がアダとなっています。変なところに注意が向いています。今解いたらシンプルに正解、直前期前でも正解だったでしょう。
【考察】
肢アは、平成11年の有名な判例のままです。抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難になるような状態があるときは、抵当権者は抵当不動産の所有者に対して抵当不動産を適切に維持又は保存するよう求める請求権を保全するために、所有者の妨害排除請求権を代位行使して、抵当不動産の明渡しを請求することができる。したがって○。
肢イも同じ判例で、抵当権に基づく妨害排除請求権を行使することもできるので×。
肢ウもこれまた同じ判例で、直接抵当権者への明渡しを求めることができるので×。
肢エは、平成17年の判例のまま。「抵当権者は、抵当不動産を自ら使用できず、民事執行法上の手続によらずに使用による利益を取得することもできないから、抵当不動産に対する第三者の占有により賃料相当の損害を被るものではない。」というわけで○。
肢オも平成17年の判例のまま。というわけで×。
肢エで自信がもてず、さらに、肢オで、「交換価値の実現が妨げられている」、とか、「優先弁済権の行使が困難となるような状態」のような事情の記載がないこと、さらに、「抵当権者の同意がある場合の賃借権の対抗力」について思い浮かべてしまって、おかしいかな、などと思って、オを○にしちゃってます。こういう失点はもったいないですね。
【条文】
第369条 (抵当権の内容)
1 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債務者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
2 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。
【判例】
第三者が抵当不動産を不法占有することにより、 抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは,抵当権者は,占有者に対し、抵当権に基づく妨害排除請求として,上記状態の排除を求めることができる(最判平11.11.24)。
抵当権者は、抵当不動産の所有者に対して有する右状態を是正し抵当不動産を適切に維持又は保存するよう求める請求権を保全するため、所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を代位行使することができる。(同判例より)。
建物を目的とする抵当権を有する者がその実行としての競売を申し立てたが、第三者が建物を権原なく占有していたことにより、買受けを希望する者が買受け申出をち躊躇したために入札がなく、その後競売手続は進行しなくなって、建物の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となる状態が生じているなど判示の事情の下においては、抵当権者は、建物の所有者に対して有する右状態を是正するよう求める請求権を保全するため、所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を代位行使し、所有者のために建物を管理することを目的として、不法占有者に対し、直接抵当権者に建物を明け渡すよう求めることができる(同判例より)。
抵当権者は,抵当不動産に対する第三者の占有により賃料額相当の損害を被るものではない(最判平17.3.10)。
抵当権設定登記後に抵当不動産の所有者から占有権原の設定を受けてこれを占有する者についても,その占有権原の設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ,その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは,抵当権者は,当該占有者に対し,抵当権に基づく妨害排除請求として,上記状態の排除を求めることができるものというべきである。なぜなら,抵当不動産の所有者は,抵当不動産を使用又は収益するに当たり,抵当不動産を適切に維持管理することが予定されており,抵当権の実行としての競売手続を妨害するような占有権原を設定することは許されないからである(同判例より)。