なんとか環境は戻りつつあります。今月中に、何らかの講座を一つくらいは受けておきたいと考えていますが、果たして・・。
【問題】
第21問
根抵当権の元本の確定前の全部譲渡による移転の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。
ア 根抵当権の全部譲渡の契約及び、承諾の日がいずれも元本の確定前の日であれば、元本の確定の登記がされた後においても、根抵当権移転の登記をすることができる。
イ 根抵当権の設定者がA株式会社、債務者がその代表取締役であるBである場合、根抵当権の移転の登記の申請情報には、A株式会社の承諾情報のほか、A株式会社の取締役会議事録その他利益相反行為の承認に関する情報を併せて提供しなければならない。
ウ 根抵当権の設定者が未成年者C、債務者がその親権者である父Dである場合において、Cの親権者が父D及び母Eであるときは、根抵当権の移転の登記において申請すべき親権者の承諾情報は、Eの承諾情報で足りる。
エ 共同担保である各不動産について所有者が異なる場合に、全部譲渡の承諾に係る承諾情報の日付がそれぞれ異なるときであっても、一の申請情報で申請することができる。
オ 根抵当権が共有されている場合において、その共有者の権利の全部譲渡を共有者以外の者にするときは、根抵当権の共有権の移転の登記の申請においては、登記の申請情報には、根抵当権の設定者の承諾情報に加えて、他の共有者の同意を証する情報を提供しなければならない。
1 アイ 2 アウ 3 イオ 4 ウエ 5 エオ
【感想】
肢ア、肢エ、肢オは分かり易いものの、肢イ、肢エが馴染みの薄い問題。1か2で悩むことになるのですが、結果として、根抵当権の全部譲渡の問題でありながら、利益相反の問題になってしまっています。しかも、どちらかというと民法の知識で解いていく感じではなかったかと。
【考察】
肢アは、典型。根抵当権の全部譲渡の登記は、元本確定前にしかできないので、たとえ承諾が元本確定前であったとしても、全部譲渡の登記をすることはできない(民法398の12)。したがって、×。
肢イは、初めてかな・・いや裏は取っていませんが、根抵当権の全部譲渡が利益相反にあたるということを前提としている肢。利益相反というと、債務者の変更か、担保権の設定の場面を問われることが多いですが、今回は根抵当権の全部譲渡で聞いてきています。設定者が会社、債務者が代取である場合に、根抵当権の全部譲渡をする際には、会社名義の不動産に、根抵当権の譲受人と代取との間の取引における債務を担保させるわけだから、利益相反にあたり、A株式会社の取締役会議事録を承諾を証する情報として提供しなければならない(会社法356)。また、根抵当権の全部譲渡なので、さらに設定者の承諾を証する情報として、A株式会社の承諾を証する情報も要する。したがって、○。
肢ウも、根抵当権の全部譲渡なんですが、これまた利益相反の場面。今回は、父Dについては、利益相反(未成年の子C名義の土地に、自分の債務を担保させている)なんだけど、母Eについては利益相反にあたらないという形。この場合、母Eの承諾では足りず、利益相反の関係にある父Dについて、特別代理人を選任し、その特別代理人とEとが共同して子のための代理行為を行うべきであるという判例があるので(最判昭35.2.25)、したがって、×。
肢エは、根抵当権の全部譲渡の際に、設定者の承諾の日付が異なってしまっている場合。このときは、「原因 後記のとおり」として、承諾の日付は各不動産の表示の欄に記載すればよい。似たようなものに、共同根抵当権の全部譲渡で根抵当権の順位番号が異なるという場合には、「目的 共同根抵当権移転(順位番号後記のとおり)」として、不動産の表示のところで順位番号を記載しておく、というのもありますね。したがって、○。
肢オは、典型。根抵当権の共有者の権利移転の登記は、設定者の承諾と、他の共有者の同意を要する(民法398の12、398の14)。したがって、○。
正解は、2です。
〔民法〕
(根抵当権の譲渡)
第三百九十八条の十二 元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権を譲り渡すことができる。
2 根抵当権者は、その根抵当権を二個の根抵当権に分割して、その一方を前項の規定により譲り渡すことができる。この場合において、その根抵当権を目的とする権利は、譲り渡した根抵当権について消滅する。
3 前項の規定による譲渡をするには、その根抵当権を目的とする権利を有する者の承諾を得なければならない。
(根抵当権の共有)
第三百九十八条の十四 根抵当権の共有者は、それぞれその債権額の割合に応じて弁済を受ける。ただし、元本の確定前に、これと異なる割合を定め、又はある者が他の者に先立って弁済を受けるべきことを定めたときは、その定めに従う。
2 根抵当権の共有者は、他の共有者の同意を得て、第三百九十八条の十二第一項の規定によりその権利を譲り渡すことができる。
〔会社法〕
(競業及び利益相反取引の制限)
第三百五十六条 取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
二 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。
三 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。
2 民法第百八条 の規定は、前項の承認を受けた同項第二号の取引については、適用しない。
【判例】
親権者たる父母の一方に利益相反行為があるときは、利益相反関係のない親権者と特別代理人とが共同して子のための代理行為をなすべきである(最判昭35.2.25)
【問題】
第21問
根抵当権の元本の確定前の全部譲渡による移転の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。
ア 根抵当権の全部譲渡の契約及び、承諾の日がいずれも元本の確定前の日であれば、元本の確定の登記がされた後においても、根抵当権移転の登記をすることができる。
イ 根抵当権の設定者がA株式会社、債務者がその代表取締役であるBである場合、根抵当権の移転の登記の申請情報には、A株式会社の承諾情報のほか、A株式会社の取締役会議事録その他利益相反行為の承認に関する情報を併せて提供しなければならない。
ウ 根抵当権の設定者が未成年者C、債務者がその親権者である父Dである場合において、Cの親権者が父D及び母Eであるときは、根抵当権の移転の登記において申請すべき親権者の承諾情報は、Eの承諾情報で足りる。
エ 共同担保である各不動産について所有者が異なる場合に、全部譲渡の承諾に係る承諾情報の日付がそれぞれ異なるときであっても、一の申請情報で申請することができる。
オ 根抵当権が共有されている場合において、その共有者の権利の全部譲渡を共有者以外の者にするときは、根抵当権の共有権の移転の登記の申請においては、登記の申請情報には、根抵当権の設定者の承諾情報に加えて、他の共有者の同意を証する情報を提供しなければならない。
1 アイ 2 アウ 3 イオ 4 ウエ 5 エオ
【感想】
肢ア、肢エ、肢オは分かり易いものの、肢イ、肢エが馴染みの薄い問題。1か2で悩むことになるのですが、結果として、根抵当権の全部譲渡の問題でありながら、利益相反の問題になってしまっています。しかも、どちらかというと民法の知識で解いていく感じではなかったかと。
【考察】
肢アは、典型。根抵当権の全部譲渡の登記は、元本確定前にしかできないので、たとえ承諾が元本確定前であったとしても、全部譲渡の登記をすることはできない(民法398の12)。したがって、×。
肢イは、初めてかな・・いや裏は取っていませんが、根抵当権の全部譲渡が利益相反にあたるということを前提としている肢。利益相反というと、債務者の変更か、担保権の設定の場面を問われることが多いですが、今回は根抵当権の全部譲渡で聞いてきています。設定者が会社、債務者が代取である場合に、根抵当権の全部譲渡をする際には、会社名義の不動産に、根抵当権の譲受人と代取との間の取引における債務を担保させるわけだから、利益相反にあたり、A株式会社の取締役会議事録を承諾を証する情報として提供しなければならない(会社法356)。また、根抵当権の全部譲渡なので、さらに設定者の承諾を証する情報として、A株式会社の承諾を証する情報も要する。したがって、○。
肢ウも、根抵当権の全部譲渡なんですが、これまた利益相反の場面。今回は、父Dについては、利益相反(未成年の子C名義の土地に、自分の債務を担保させている)なんだけど、母Eについては利益相反にあたらないという形。この場合、母Eの承諾では足りず、利益相反の関係にある父Dについて、特別代理人を選任し、その特別代理人とEとが共同して子のための代理行為を行うべきであるという判例があるので(最判昭35.2.25)、したがって、×。
肢エは、根抵当権の全部譲渡の際に、設定者の承諾の日付が異なってしまっている場合。このときは、「原因 後記のとおり」として、承諾の日付は各不動産の表示の欄に記載すればよい。似たようなものに、共同根抵当権の全部譲渡で根抵当権の順位番号が異なるという場合には、「目的 共同根抵当権移転(順位番号後記のとおり)」として、不動産の表示のところで順位番号を記載しておく、というのもありますね。したがって、○。
肢オは、典型。根抵当権の共有者の権利移転の登記は、設定者の承諾と、他の共有者の同意を要する(民法398の12、398の14)。したがって、○。
正解は、2です。
〔民法〕
(根抵当権の譲渡)
第三百九十八条の十二 元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権を譲り渡すことができる。
2 根抵当権者は、その根抵当権を二個の根抵当権に分割して、その一方を前項の規定により譲り渡すことができる。この場合において、その根抵当権を目的とする権利は、譲り渡した根抵当権について消滅する。
3 前項の規定による譲渡をするには、その根抵当権を目的とする権利を有する者の承諾を得なければならない。
(根抵当権の共有)
第三百九十八条の十四 根抵当権の共有者は、それぞれその債権額の割合に応じて弁済を受ける。ただし、元本の確定前に、これと異なる割合を定め、又はある者が他の者に先立って弁済を受けるべきことを定めたときは、その定めに従う。
2 根抵当権の共有者は、他の共有者の同意を得て、第三百九十八条の十二第一項の規定によりその権利を譲り渡すことができる。
〔会社法〕
(競業及び利益相反取引の制限)
第三百五十六条 取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
二 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。
三 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。
2 民法第百八条 の規定は、前項の承認を受けた同項第二号の取引については、適用しない。
【判例】
親権者たる父母の一方に利益相反行為があるときは、利益相反関係のない親権者と特別代理人とが共同して子のための代理行為をなすべきである(最判昭35.2.25)