今日も今日とて。
【問題】
第10問
混同に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らして誤っているものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。なお、設問で明示されたもの以外に物権は設定されていないものとする。
ア AがBに対する債権を担保するためにB所有の土地に1番抵当権の設定を受け、Cがその土地の上に2番抵当権の設定を受けた場合において、AがBからその土地を贈与されたときは、Aの抵当権は消滅しない。
イ AがBに対する債権を担保するためにB所有の土地に2番抵当権の設定を受けたが、Cがその土地の上に1番抵当権の設定を受けていた場合において、AがBからその土地を贈与されたときは、Aの抵当権は消滅しない。
ウ AがBに対する債権を担保するためにB所有の土地に1番抵当権の設定を受け、Cがその土地の上に2番抵当権の設定を受けた場合において、AがBを単独で相続したときは、Aの抵当権は消滅しない。
エ AがB所有の土地に地上権の設定を受け、その地上権についてCの抵当権の設定を受けた場合において、AがBからその土地を贈与されたときは、Aの地上権は消滅しない。
オ AがB所有の土地に地上権の設定を受け、その土地についてCが抵当権の設定を受けた場合において、AがBからその土地を贈与されたときは、Aの地上権は消滅しない。
1 アウ 2 アエ 3 イウ 4 イオ 5 エオ
【感想】
素直ですねぇ。気が抜けるくらい素直な過去問レベルの問題です。
【考察】
肢アは、B所有の土地に①Aの抵当権②Cの抵当権とあるときに、BがAに土地を贈与したというパターン。混同の原則によれば、「同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したとき」ではあるものの、但書での「その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるとき」にあたるので、混同によりAの抵当権は消滅しない(179条1項但書)。Aの抵当権が消滅してしまうと、Aは1番抵当権の優先権を主張できなくなるため。したがって○。
肢イは、①Cの抵当権、②Aの抵当権という、肢アとは、順位が逆のパターン。この場合には、肢アのような問題は生じないし、また、問題文で「設問で明示されたもの以外に物権は設定されていないものとする。」とあるので、債権が他の権利の目的にもなっていない。ということで、混同により消滅する(179条本文)。したがって×。
肢ウは、混同の例外の例外というパターンで、肢アの例外で、不動産の所有権だけを見ると混同によって消滅しないけども、今回はAがBを相続したことによって、債権の混同(520条)が生じているので、この債権の混同によって抵当権は消滅する。したがって×。
肢エは、B所有の土地についてAの地上権、そのAの地上権についてCの抵当権というパターンで、これも対象であるAの地上権にCの抵当権が設定されているので、「その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるとき」という179条1項但書により、Aの地上権は消滅しない。したがって○。
肢オは、肢アと同じで、後順位のCにAが地上権を主張できなくなるため、混同の例外として消滅しない。したがって○。
正解は3です。
【条文】
第179条(混同)
同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
第520条(債権の混同)
債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
【問題】
第10問
混同に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らして誤っているものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。なお、設問で明示されたもの以外に物権は設定されていないものとする。
ア AがBに対する債権を担保するためにB所有の土地に1番抵当権の設定を受け、Cがその土地の上に2番抵当権の設定を受けた場合において、AがBからその土地を贈与されたときは、Aの抵当権は消滅しない。
イ AがBに対する債権を担保するためにB所有の土地に2番抵当権の設定を受けたが、Cがその土地の上に1番抵当権の設定を受けていた場合において、AがBからその土地を贈与されたときは、Aの抵当権は消滅しない。
ウ AがBに対する債権を担保するためにB所有の土地に1番抵当権の設定を受け、Cがその土地の上に2番抵当権の設定を受けた場合において、AがBを単独で相続したときは、Aの抵当権は消滅しない。
エ AがB所有の土地に地上権の設定を受け、その地上権についてCの抵当権の設定を受けた場合において、AがBからその土地を贈与されたときは、Aの地上権は消滅しない。
オ AがB所有の土地に地上権の設定を受け、その土地についてCが抵当権の設定を受けた場合において、AがBからその土地を贈与されたときは、Aの地上権は消滅しない。
1 アウ 2 アエ 3 イウ 4 イオ 5 エオ
【感想】
素直ですねぇ。気が抜けるくらい素直な過去問レベルの問題です。
【考察】
肢アは、B所有の土地に①Aの抵当権②Cの抵当権とあるときに、BがAに土地を贈与したというパターン。混同の原則によれば、「同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したとき」ではあるものの、但書での「その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるとき」にあたるので、混同によりAの抵当権は消滅しない(179条1項但書)。Aの抵当権が消滅してしまうと、Aは1番抵当権の優先権を主張できなくなるため。したがって○。
肢イは、①Cの抵当権、②Aの抵当権という、肢アとは、順位が逆のパターン。この場合には、肢アのような問題は生じないし、また、問題文で「設問で明示されたもの以外に物権は設定されていないものとする。」とあるので、債権が他の権利の目的にもなっていない。ということで、混同により消滅する(179条本文)。したがって×。
肢ウは、混同の例外の例外というパターンで、肢アの例外で、不動産の所有権だけを見ると混同によって消滅しないけども、今回はAがBを相続したことによって、債権の混同(520条)が生じているので、この債権の混同によって抵当権は消滅する。したがって×。
肢エは、B所有の土地についてAの地上権、そのAの地上権についてCの抵当権というパターンで、これも対象であるAの地上権にCの抵当権が設定されているので、「その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるとき」という179条1項但書により、Aの地上権は消滅しない。したがって○。
肢オは、肢アと同じで、後順位のCにAが地上権を主張できなくなるため、混同の例外として消滅しない。したがって○。
正解は3です。
【条文】
第179条(混同)
同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
第520条(債権の混同)
債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。