超短編小説おじいのつぶやき

&おばあのすっとぼけ

お菓子

2008-04-30 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・お菓子


 おじいがあられをつまんでいます。

おばあ「お? お菓子か。うまそうだな」

おじい「ん、ああ」

おばあ「ひとつ、くれや」

おじい「ああ。もうあんましねえけど、ほれ」

 おばあは袋を受け取り、中から一個つまみます。

おばあ「いただきまーす。……あっ!」

――ポロリッ……

 あられが床に落ちました。

おばあ「ああっ、なんてこった! しょうがねえ、
    洗って食うか」

おじい「いや、しょうがねえよ。ほこりまみれだし、
    ちがうの食えや」

おばあ「しかし……もともと一個だけ食うつもり
    だったんに。二個減らすことになっちまう。
    そうすっと倍だな。もったいねえなあ」

おじい(また、なんかヘンなこと言い出したぞ……)

おばあ「二個減らして一個しか食えねえんじゃ、
    損失率50%だな。しかし、十個減らして
    一個だけ落としたんなら、損失率10%で
    私の過失の度合いが小さくなる。てことはだ」

おじい「え? ま、まさか?」

おばあ「はあ……こうしてやる――――ッ!」

――ひょいパクひょいパクひょいパクひょいパク
  ひょいパクひょいパクひょいパクひょいパク
  ひょいパク!

おばあ「はあごっつぉさーん。これで落としたのは
    減った内の十分の一個、私の損失率は
    10%に収まりましたー!」

おじい「……俺の損失率は100%だ!」

 ぜんぶ食われました。


~Thank you for reading.~

冷蔵庫④

2008-04-29 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・冷蔵庫④


 冷蔵庫がカラッポです。

おじい「……で、一時間韓国ドラマ見て、ついでに
    ラテンドラマ見て。両方あわせたって、
    二時間じゃねえか」

おばあ「はあたしかに!」

おじい「買い物行く時間、あったじゃねえか」

おばあ「はあたしかに!」

おじい「じゃあ、なんで行かねえん」

おばあ「はあたしかに! ……え?」

おじい「だから、なんで、時間があったんに、買い物
    行かなかったんって聞いてんだ」

おばあ「それは……ひ、昼寝、してたから?」

おじい「……なに、ちょっと照れてるん。もういいや。
    なんか出前でもとるしかねえな」

おばあ「え? やったー! フフフ、実は私は最初
    からこれを狙っていたのだよ、明智クン!」

おじい「俺は、明智じゃねえよ、シゲオだよ」

 訂正しました。


~Thank you for reading.~

冷蔵庫③

2008-04-28 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・冷蔵庫③


 冷蔵庫がカラッポです。

おじい「ったく。どうして、昼間の内に買い物に
    行ってこねえん」

おばあ「だってだって、おもしれえ韓国ドラマ
    やってたんだもの」

おじい「何時間やってたん?」

おばあ「一時間」

おじい「買い物に行く時間ぐれえ、いっくらでも
    あるじゃねえか」

おばあ「だって、このごろラテンドラマもおもしれえ
    んだもの」

おじい「??? ラテンドラマ?」

おばあ「はあそうさあ。グラシアス! グラーシアス!」

おじい「……んな、いきなり感謝されてもなあ……」

 困惑しました。


~Thank you for reading.~

冷蔵庫②

2008-04-27 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・冷蔵庫②


 冷蔵庫がカラッポです。

おじい「ホントのホントに、カラッポなんか?」

おばあ「ホントのホントに、カラッポだなあ……あっ!」

おじい「なんだ。なんか、あったんか?」

 おばあは冷蔵庫に手を突っ込み、電光石化で
取り出します。

おばあ「ジャ――ン! お豆腐イッチョ―――ウ!」

おじい「……で?」

 疑問を呈しました。


~Thank you for reading.~

冷蔵庫①

2008-04-26 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・冷蔵庫①


 夜です。おばあが冷蔵庫を開けました。

おばあ「……ん? はあお父さん、はあお父さん!」

おじい「ん、なんだ?」

 おばあは笑顔で手招きします。

おばあ「ちょっとちょっと、これ見て、冷蔵庫の中
    見て、見て!」

おじい「ええ? ったく、なんだっつうん」

 おじいが冷蔵庫を見ますと。

おじい「……あれえ? なんだこりゃ。冷蔵庫、
    カラッポじゃねえか」

おばあ「じゃじゃーん! まるで電気屋の冷蔵庫
    みてえでしょ!」

おじい「たしかに。……で、夕飯、どうするん?」

おばあ「え? ああ……どうすっか」

おじい「……………………」

おばあ「……………………」

 何も考えてないようです。


~Thank you for reading.~

ゴルフ②

2008-04-25 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・ゴルフ②完


 ゴルフ中継を見ています。

おばあ「ふうん、そうかあ。「-6」は、『引くロク』
    じゃねえんかあ」

おじい「そうさあ」

テレビ『さあ、ここをワンパットで沈めればエイト
    アンダー、首位に躍り出ます』

おじい「ん? アンダー? ……ハッ……!
    (し、しまった。そういやアレはマイナス
    じゃなくて、アンダーって読むんだった!)」

おばあ「あれえ? 『エイトアンダー』だって。
    なんだろうな。お父さん、わかるか?」

おじい「さ、さあ。なんか、専門的なことなんじゃ
    ねえか?」

おばあ「エイトアンダー。エイトアンダー……あっ、
    わかった! もしかして、なんか必殺技的な
    ことなんじゃねえか!?」

おじい「う、うん? 必殺技?」

おばあ「な!」

おじい「う、うん、そうかもしんねえ」

――バサッ……

 おじいは新聞を広げました。


~Thank you for reading.~

ゴルフ①

2008-04-24 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・ゴルフ①


 おばあがゴルフを見ています。

おばあ「へ~。おかしなもんだいなあ」

 おじいが新聞から顔を上げます。

おじい「ん、なにがだ?」

おばあ「いや、成績表みてえなんが出てるんだけどよ。
    順位が上にいけばいくほど、『引く6、
    引く7、引く8』、って。たくさん引いた
    ほうが成績がいいんだなあ、ゴルフは」

 おじいは「ハァ」とため息をつきます。

おじい「アレは、『引く6』、じゃねえよ」

おばあ「え、そうなの?」

おじい「そうさあ。ゴルフは、日本の運動じゃねえ
    もの。『引く6』なんて、言わねえさ」

おばあ「ふうん。じゃあなんて言うんだ?」

おじい「そりゃ、英語だもの。『マイナス6』に、
    決まってらあ」

 説明しました。


~Thank you for reading.~

工事現場④

2008-04-23 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・工事現場④完


 おじいとおばあは散歩中、二つの工事現場の
そばを通りました。

おばあ「はあしかし、アレだいな。工事っつうのは
    やかましくってかなわねえやな」

おじい「そらしょうがねえや。どうしたって、
    でっけえ音が、出るだもの」

おばあ「はあヤダヤダ。家の前なんかでやられちゃ
    かなわねえや」

おじい「……もし、工事の人たちが、全員、
    『なんとかコウジ』っつう名前だったら?」

おばあ「え? 工事の人の名前がぜんぶコウジ?
    はあそれは……オ・サ・レ☆」

 おばあレーダーにヒットしました。


~Thank you for reading.~

工事現場③

2008-04-22 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・工事現場③


 おばあはおじいに言いたいことがあるといいまし
たが、工事現場の脇へ来たため聞き取れません。

おばあ「……! …………! ……! って思って」

おじい「……けっきょく、さっきといっしょじゃねえか」

おばあ「ええ? はあちげえもん。今度はちゃあんと
    言いてえことがあったんだもん」

おじい「じゃあ、今、もっぺん言えや。工事はもう
    そばにねえんだし」

おばあ「え? あ、あー、それはそのー」

おじい「やっぱし、冗談やりたかっただけじゃねえか」

おばあ「はあちげえよ!」

おじい「じゃあ何を言いたかったっつうん」

おばあ「それはだからそのー……家にけえったら、
    たらふく濡れ煎餅食おうぜ! って、
    言いたかったんさ」

おじい「あー、なーるほど、そっかあ! 濡れ煎餅って、
    しっとりしてて旨めえもんなあ! ……って、
    ウソつけ!」

 ノリつっこみです。


~Thank you for reading.~

工事現場②

2008-04-21 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・工事現場②


 おじいとおばあは近所の散歩を続けています。
また、前方に工事現場がありました。

 おばあがおじいに話しかけます。

おばあ「あのなあ、お父さん」

おじい「もう、お約束は、いいから!」

おばあ「えっ? な、なんだ、その態度は! 
    呼んだだけなんに!」

おじい「だって、もういいだろ!」

おばあ「もういいとかじゃねえよ! 今度は
    お約束とかじゃなくて、ホントに
    言いてえことがあったんに!」

おじい「ええ? ホントかや」

おばあ「はあホントさあ! でも、もういい!
    そんな冷てえ態度とるんなら、もういい!」

おじい「分かった、分かった。聞くから、言えや」

おばあ「はあそうか? じゃあ言うけど、あのな」

 と、工事現場の脇へ来ました。

――ガガガッ、ガガッ、ダダダダダッ!

おばあ「……! ……! …………!」

おじい(やっぱし、狙ってんじゃねえか……?)

 勘ぐりました。


~Thank you for reading.~

工事現場①

2008-04-20 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・工事現場①


 おじいとおばあは近所を散歩しています。
 とちゅう、工事現場に通りかかりました。

――ガガガッ、ガガッ、ダダダダダッ!

 おばあがおじいに話しかけます。

おばあ「……! ……! …………!」

おじい「……え!? なに!? 聞こえねえよ!」

おばあ「……! ……! …………!」

おじい「聞こえねえって!」

おばあ「……! ……! …………!」

おじい「……もう、通り過ぎたぞ」

おばあ「……! ……! …………!」

おじい「……もう、工事現場からは、とっくの昔に
    遠ざかったっつうんに」

おばあ「……え? あ、ホントだ。
    ♪はあ、あ・それ、お約束~、お約束~」

おじい「……………………」


~Thank you for reading.~

粒数

2008-04-19 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・粒数


 おばあがにんにく卵黄を買ってきました。

おばあ「はあ健康のためににんにく卵黄買ってきただ」

おじい「おっ、前のとちがうやつだな」

おばあ「そう! 前のは90粒入りだったじゃねえか。
    今度のは、270粒へえってるんさ!」

おじい「へえ~。ビンの大きさは、たいして変わん
    ねえんになあ」

おばあ「そうさあ! よし、さっそく飲んでみるだ!」

 おばあはさっそくビンを開け、中身を手の平に
出します。

おばあ「ほーれたくさんあっからしばらくもつぞ
    ……って、あれ――ッ! な、なんで
    こんなに一粒が小っちぇえん!」

おじい「ああ、なんだ。一粒が小せえから、数が
    たくさんへえってるんか」

おばあ「い、いいんか、こんなんで!?」

おじい「よく見ろや。ちゃあんと箱に、『一日9粒』
    って書いてあらあ」

おばあ「ってことは……けっきょく一ヵ月分か。
    ……くそう、はあくそう! だったら
    粉みてえにこまかく砕いて2万7千粒入り
    にして、一日900粒服用にすりゃ
    いいじゃねえか――ッ!」

おじい「誰も、得、しねえよ。ズズッ……」

 おじいはお茶を飲みました。


~Thank you for reading.~

キックボクシング

2008-04-18 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・キックボクシング


 おじいがテレビでキックボクシングを見ています。

おばあ「あれあれ、お父さんは、なに! そんな
    物騒なもん見て!」

おじい「物騒ってこと、ねえだんべや。ちゃあんと、
    日ごろから努力して、決まりにのっとって、
    試合するだもの」

おばあ「私はヤダヤダそんなもの! ぶっ飛ばし
    たり蹴っ飛ばしたりすんの見て、いったい
    なにが楽しいんだか!」

――十分後……

おじい「ぐ~……ふんが~……ぐが~……」

おばあ「おらそこだいけーッ、やっちまえーッ!」

 夢中です。


~Thank you for reading.~

散歩④

2008-04-17 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・散歩④完


 散歩のとちゅうでスーパーの前を通りすぎました。

おばあ「はあそういやカップ麺の値段がどえりゃあ
    上がったなあ。いよ。どえりゃあ上がったなあ!」

おじい「(どえりゃあ……?)あ、そう。そんなに
    上がったか」

おばあ「上がった上がった! 軒並み二十円ぐらい
    上がったで! こりゃもう家計に大打撃! 
    まあもともとウチはめったにカップ麺
    食わねえけど!」

おじい「……じゃあ、あんまし関係ねえじゃねえか」

おばあ「え? ♪はあ、あ・それ、ごもっとも~、
    ごもっとも~」

おじい「おめえ、それ、おもしれえと思ってんのか?
    そんなに、おもしろかねえぞ」

おばあ「え? ♪はあ、そ・れも、ごもっとも~、
    ごもっとも~」

おじい「……………………」

 アレンジしました。


~Thank you for reading.~

散歩③

2008-04-16 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・散歩③


 おばあは散歩中、車のナンバーを暗記しようと
しています。

おばあ「はあやっぱしダメだな。数字がバラバラで。
    覚えづらくって」

おじい「まあ、分かりやすい数字のも、たまには、
    あるけどな」

おばあ「ええ? でも数字がわかりやすいとよお、
    悪さした時すぐバレねえか?」

おじい「……悪さ、しなけりゃいいだんべや」

おばあ「え? ♪はあ、あ・それ、ごもっとも~、
    ごもっとも~」

おじい「……チンパンジー?」

 ちょっとちがいます。


~Thank you for reading.~