下北沢ムジナ通信社

「アート&文学」よもやま話。シモキタの路地裏系ネタ話、知られざるアーティスト発掘、再開発計画阻止とか。

■鉄でできた「絵本」の世界。甲斐荘暁子さんのオブジェ

2011年08月30日 | 日記


「SPARK!」展のエントランス


スペース・ユイの入口に控えていた亀

重たくて愛らしい鉄の動物たち
■現在、外苑前のスペース・ユイで開催されている甲斐荘暁子さんの作品展「SPARK!」に行ってきました。http://spaceyui.com/


甲斐荘さんは、鉄という素材を使って、花や蝶やカブトムシから、熊や虎などの猛獣まで作ってしまう「鉄」のオブジェ作家です。
彼女の作品を目にすると、われわれが普段抱いている「鉄」の概念が変えられてしまいます。

うさぎ。ちよっと宇宙人のような不思議なキャラ。
近づいて見ると、銀と黒のデコボコした鉄の素材感がよく出ています。



鉄への先入観を、ぐにゃりと変える作品
■「鉄」は、車や船舶などの工業や建築物を作る素材であり、重工業の基本であり、さらには、ヒッタイトの鉄器時代以来、武器の材料でもあり…。

といったような冷たくものものしいマテリアルだと思いがちですが、このアーティストは、それとは逆の世界を見せてくれます。
つまり、ぬいぐるみや絵本のような世界を「鉄」でつくったらどうなるか――という実験です。




鉄は懐かしくて、温かい。
■鉄って、われわれの血液の中にも潜んでいるわけですね。つまり赤血球の中の酸素を運んでくれるヘモグロビン(Fe)として。
ホウレンソウには鉄分が多くて健康によいとか。
中華鍋がよいのは、そこから鉄分が吸収できるからとか。
(真偽のほどはわかりませんけど)

「鉄」は酸素と熱をもたらしてくれる。生き物は、鉄がなければいきてはいけない。
鉄って、冷たいどころの話ではないのですね。

    つまり、われわれの「命」の中に、「鉄」はある。



宝箱の上を這う「でんでん虫」たち。その光沢に注目。

鉄のオーラ。虹色の詩
■これらのオブジェを作った甲斐荘さんは、一見、華奢な女性なので、どこから、こんな重たい作品を創作する力が湧いてくるのかと、不思議に思います。
ただ、実際に作品を見ていると、ほかの金属や、他の素材ではなく、どうしても「鉄」でなければならないと思わせる説得力があります。
ジュラルミンでも、アルミでも、チタンでもなく、鉄。

特に、「鉄のマチエール」ともいうべき、虹色の光沢は、水に波紋を描いている油の彩りを思わせる独特の味わいがあります。
昆虫のオブジェには、その味わいがふんだんに生かされています。


■「鉄」へのこだわりは、このアーティストのとても深いところから来ているものかも知れません。アトリエ(つまりは鉄工場!)では、この夏も汗だくになりながら、物凄い火花を散らし、溶接しているそうです。



タイガーなのに、猫パンチ




実は私は、こちらのようなファーム空間に、こんなアートやオブジェがあったら楽しいだろうと思うわけです。
http://grassmoon.at.webry.info/「そうだ、新しき村へ行こう!」

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