Laboratory BLOG

暫定。

では早速一本目

2006-10-21 22:45:09 | Paper
ブログ開設ということで書いてみました。一本目から真面目なやつですみませんが論文紹介です。「一昨年くらいに大嶋さんを中心に2研で毎週やってた論文紹介ってこんなのでした」というものです。

 今回取り上げるのはJACS ASAPに10/14に掲載されたSamesらの報告です。論文名は "sp3 C-H Bond Arylation Directed by Amidine Protecting Group: α-Arylation of Pyrrolidines and Piperidines" さすがにPDFにリンクをかけるのはまずいと思うので興味がある方はダウンロードしてご覧ください。

 本論文はピロリジンおよびピペリジン系化合物のsp3 C-H結合を活性化させアリール化を行うというものです。C-H結合活性化はよく芳香環上のC-Hなどsp2 C-H結合で行われることが多いのですが本論文はsp3 C-H結合で行われているというのが目玉の一つです。
 さて、この反応の開発経緯ですが本文中にもあるとおり垣内先生および茶谷先生の論文が基本になっています。ピロリジン系化合物はその窒素原子をBoc基などで保護した後にt-BuLiを作用させるとα位がリチウム化されるので、これと組み合わせたのでしょう。残念ながらBoc基ではうまくいかなかったみたいですが検討の結果アミジン系の保護基が本反応に適したようです。
 反応機構は垣内・茶谷先生のシステムとほぼ同じです。CH結合活性化自体は様々な基質で起こるらしいのですが、生成する金属ヒドリド種をどう処理するかが問題になります。これをうまく処理することでScheme 1の1の平衡を右に偏らせることができ反応を円滑に進められます。本論文ではその金属ヒドリド種(C-Ru-H)をケトンと反応させ金属アルコキシド(C-Ru-OR)に変換しています。そしてこの金属アルコキシドとホウ酸エステルとのトランスメタル化によりC-Ru-Ar種を形成させ還元的脱離を経て目的物となる、というものです。 
 このようなケトンをスカベンジャーとして用いる反応形式は初めて見たので「へ~」と思ったのですが、垣内・茶谷先生らがすでに開発していたのですね。もっと勉強すれば経緯は分かるかもしれませんが今日のところはここまでです。でもsp3でうまくいったのはすごいですね。あと、このアミジン系保護基、ヒドラジンで脱保護できるのも面白いなと思いました。こういう配向基はたいてい脱保護に困るのですが、これなら便利そうです。

 さてさて、こんな感じの論文紹介でしたが。このブログ上でも直接でも構いませんがコメントとか頂けるとうれしいです。一本目からこんな真面目ネタで申し訳ありませんがまた他の思いついたら書きます(なんか論文とか実験してて見つけた小ネタとか)。よろしゅう。あ、名前とかどうしようね、今回ラボ内だから普通に書くけどイニシャルとかの方がいいのかな。
(SHIBU)