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WBC日本対米国戦の「誤審」について考える。あれは「9年目の復讐」だったのか

2006-03-15 03:41:38 | Weblog
12日の野球の国・地域別対抗戦ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本対米国戦での「誤審」問題について考える。先日は日本チームの接戦の弱さについて書いたが、今回は「誤審」について書きたい。日本が8回1死満塁の場面、岩村(ヤクルト)の左飛で三塁走者の西岡(ロッテ)がタッチアップ。一度はセーフの判定が出たものの、米国の監督の抗議に審判が判定を覆し、離塁が早かったとして三塁走者もアウトになったことだ。

テレビで見る限り、明らかに西岡の離塁は補球後に見えるが、そのことに触れない。むしろ、私は米国審判団が9年前に受けた「侮辱」への雪辱を晴らしたのではないかと考えている。その「侮辱」とは。

マイケル・ディミュロという審判を覚えているだろうか。米国で3Aの審判をしていたが、1997年に日米の審判交流のために来日した審判だ。この年の6月5日の岐阜県・長良川球場であった中日対横浜の試合で事件が起こった。ディミュロは、この試合で球審だった。6回の裏、中日の大豊が打席にいたときだ。ディミュロのストライクの判定に大豊が抗議。球審は「暴言」を受けたとして大豊に退場処分を下した。すると大豊に暴行を受けたほか、星野仙一監督やコーチ陣ら取り囲まれた。胸をつかまれるなどの行為に「身の危険を感じた」というディミュロは9日に帰国してしまった。

米国では暴行するなど、ありえないことだ。この一件は米国で大きく報じられたという。川島廣守セリーグ会長が米国のアメリカンリーグの審判部長に謝罪の手紙を送ったが、事態は好転しなかったという。結局、「審判が暴行されるような”野蛮”な日本球界では、何を言ってもダメというわけだ。」(田中俊幸著「プロ野球審判だから分かること」より)。

もしかしたら、この一件は審判の権威が保障されている米国審判団全体への「侮辱」と取られたのかもしれない。しかしWBCで復讐のチャンスがやってきた。そして接戦の場面で日本に「9年目の復讐」を成し遂げたのではないだろうか。

いささか馬鹿げた推測だが、あながち間違っていないかもしれない。1996年の例を挙げてみたい。ボルティモア・オリオールズにロベルト・アロマー選手がいた。アロマーは、この年の9月27日、ブルージェイズ戦で、ストライクの判定に抗議する。一度は引き下がったが退場宣告を受け再抗議。その際、球審の顔に向けて唾をかける暴挙に出たのだ。暴挙の前に、球審がラテン系への人種差別発言をしたことが明らかになっているが、そうはいっても顔に唾をかけることが許されるわけでもない。翌年の開幕5試合の出場停止が下された。

さらに、その年のプレーオフ、アメリカンリーグチャンピオンシップシリーズ第1戦。オリオールズはニューヨークでヤンキースと戦う。オリオールズが1点リードの8回裏。ヤンキースのジーターがライトへ高い打球を放つ。フェンスにギリギリの打球を右翼手が補球しようとしたとき、ライトスタンドから12歳の少年が自分のグラブを突き出し、打球を取ってしまったのだ。本来ならば右翼手が捕球態勢に入っていた状態での妨害として「アウト」が宣告されるはずなのだが、審判は本塁打を宣告した。この誤審は審判団のアロマーに対しての「報復」とも取られている。

やはり今回の「誤審」は、9年前の日本球界が米国審判に向けた「侮辱」に対する「復讐」だったのかもしれない。

そのことを考えると、日本はあと2戦で対戦相手以上に厳しい「敵」と戦うことになった。