ふと気がつけば散髪するのを忘れていた。
まる2ヶ月、放ったらかし、だった。
例年なら正月前には、さっぱりしていた。
年末年始、というより、昨年暮れの2ヶ月は特別。
最愛の友との惜別の濃密な時間だった。
理髪時間など、とるに足りない。
暇がなかったわけでもない。
する気にならなかった、というのが正直なところ。
か、といって若いころのような、伸び放題というわけでもなかった。
頭髪は若い頃、硬い方だったので、伸びると法界坊の如くボリュームたっぷり。
朝、目覚めると寝癖が酷かった。
必死で頭から水をかぶったものだ。
学生時代は、自分で刈っていた。
頭を触られるのが嫌なのと、散髪代惜しさである。
老いると、これが不思議。
髪の毛が逆立たない。
だから伸びても、気になるほどではない。
それどころか、風呂に入ると地肌が透ける。
幸い、まだ「禿げる」というところまではいっていない。
けれど、気にはなる。
「ジィジ、禿げてる」
もうすぐ5歳になる孫がどこで覚えたか?
きっと娘家族が陰で言ってるに違いない。
昔は縮れ毛や髪の毛が寝てる連中が羨ましかった。
ピシャッと収まっている。
散髪屋で聴くとこういう。
「歳を取ると毛が細く、弱くなるんですよ。毛根が弱くなり抜けやすくなるし」
なるほどだ。
そういうことなのか。
ただ、ロン毛の経験があるのに、今では耳にかかるのが嫌でしようがない。
だから、電気カミソリのきわぞりの機能を使う。
「これ、ご自分でされた?うまいもんですね」
プロにかかると、ちょっとしたことがすぐに分かるようだ。
マグロ船長は散髪屋の長男坊だった。
早くに駆け落ち。
店を継ぐこともなかった。
さて、頭はサッパリした。
だが、まだ、最愛の友の死で頭の中は、まだ、スッキリしない。