手術をしなければならないのだが

　目がかすむ。しょぼしょぼする。

　時には、白ーく薄れてしまって文字が読めなくなってしまう。

　白内障であるのはまず間違いない。

　まあ、これだけ酷使していれば、と変な納得はしているのだけれども。

　いくつものめがねを買い込んでなんとか間に合わせている、つもり、なの、だが。

　手術に踏み切れない。いろいろな事情で。



　原稿を読んで朱を入れるのが＜商売＞なのに、文字が読めなくなったらまったくのお手上げ。

　デパートの中にある文化センター。そこで開催している文章教室が終わって、二次会へ向かおうとした。

　入り口にブルーベリーの錠剤やお酢が並んでいた。90分前に入館する時も、少し立ち止まって迷った。

　どれにしようか、と再び迷っているうちに……、

　生徒さんの一人が「プレゼントします」と購入して包みを差し出した　1万円近い品。

　心から感謝した。何度もお礼を述べた。

「まだまだ、先生には原稿を読んでいただかなくちゃいけませんから」

　美容院のオーナーである彼女は、にっこりと笑った。



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