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徒然日記~水晶体の戯言~

サイトの日記として公開しています。日々のあれこれを愚痴と共に語ったり・・・(笑)小説も載せてます

邂逅10~終結~

2006年01月25日 14時21分01秒 | 邂逅(エンエド)
戦いは、終わった

俺とアル、ついでに大佐が協力してエッカルトを打ち倒して

俺の世界…アメストリスには平和が戻ろうとしていた

ただ一つ…俺の憂いを残して




邂逅10~終結~




 「ウィンリィはどうするんだよっ!!兄さん!!」


俺が切り離した尾翼の上から、鎧でない、生身のアルが叫ぶ


 「…これ、ありがとうな…って言っておいてくれ」


真新しい機械鎧を見せて、俺は笑う。
悔いは、なかった。

魂を一度現実世界へ送ってきたとき、すでにアルに対する心配は消えていたけれど
アメストリスでちゃんと生身の体を見れて、深く安心した

ウィンリィは、また悲しむかもしれないが、残る気はなかった
俺には…こいつらを門の向こうへと返さなくてはいけないから


…いや

それはただの言い訳かもしれなかった

俺はただ…もう一度…門を抜けたいだけなのだ

もう一度抜けて…そこであいつに会えたら…なんて、我ながら女々しい事を考えている


 「兄さんっ!!!」


アルが涙を流している
男がそう簡単に泣くなよ、と言いたかったが俺も口を開けば泣きそうになりそうだったから、黙った

たった一人の家族。たった一人の肉親。
それを捨ててでも、あいつを選ぼうとする俺を、アルは許さないだろうか?
でも…それでも…俺は…あいつを選んだのだ


 「ごめんな…アル。俺…あいつを見捨てられない。きっと見つけ出すんだ…」


アルからすれば、何のことを言っているか分からないだろう。
でも、それでいい。
それでも…アルに理由を話さないのは嫌だったから…そうとだけ言ったのだ


 「(…アルのこと…頼むな)」


そして俺は視線だけで大佐に礼を言う
…閉じられた目、眼帯の下から…一瞬涙が見えたような気がした


---さようなら---


心の中でそう呟いて、俺は門の開いた地下都市へと進み、再び門をくぐった




◇◇◇




門の中…俺は相変わらず彷徨っていた

おチビさんに会いたいと思っても…どっちへ行けばいいのかなんて、見当も付かない

それに…会えたところで…どうしろと言うのだろう

俺はずっと…おチビさんのことを忘れてしまった

たくさん傷つけて…たくさん酷いことをした俺を…おチビさんは嫌いになったかもしれない

もう前みたいに笑いかけてくれないかもしれない…

でも…それでも……会いたい気持ちは募るばかりで…


 「おチビさん……」


せめて気を紛らそうとして、俺はおチビさんを呼ぶ


 『エンヴィー』

 「っ!?」


不意に、何かに呼ばれた気がした

まるで、俺の声に応えるかのように…

そして、自然と目が行った先には小さな光があり

わけも分からないまま…俺は光を追いかけた




◇◇◇




これで通算五度目になる門を潜り抜ける最中、俺は誰かの声を聞いた

そう、「おチビさん」…と


 「…いる…のか……?エンヴィー…」


信じられない気持ちで、門の中に目をやる
けれど、眩いばかりに光り輝いてるそこを見渡すことは困難で…

でも、もしエンヴィーが近くにいるなら…俺に気づいてくれるかもしれない
例え俺を憎んだままでも…なんらかの反応をしめしてくれるかもしれない
殺しにきたっていい。…エンヴィーに会えるなら

だから…もう一度だけ呼んだ


 「エンヴィー」


…と。


そして門を抜け…俺が再び降り立ったのは、最初と同じエッカルトの邸だった

ただ違うのは…こちらのヒューズさんに撃たれたエッカルトの死体が転がり
ノーアがアルフォンスの遺体を抱えているという事だけだった

相も変わらず、上空には門が開いたままだ


そして…鎧の中に紛れ込んでいたアルと再会し、俺はアルと共に門を破壊するべく天井を仰いだ

やはり…そこにかつてあったはずのエンヴィーの姿はなかった
もしかしたら、ドラゴンのままで未だこちらの世界にいると思ったのに…その希望は叶わなかった
そして、門を閉じれば…それはもう、あちらの世界、そしてエンヴィーとの永遠の別れを意味する事となる

…今更、やめることなんて、しない


 「…さよなら…エンヴィー……」


アルが材料集めの為に離れたとき、そっと別れを告げる

…が





 「…勝手にサヨナラしないでよ、おチビさん」

 「…っ!?」


頭上から降ってきた声に、心臓が飛び跳ねる

俯いていた顔を再び天井へと向ける

そこには…あいつがいた


 「久しぶり、おチビさん」


前と同じ呼び名で

前と同じ格好で

前と同じ笑顔で


あいつは…俺を呼んだ


 「エンヴィー!!!!」


俺が叫ぶと、エンヴィーは今しがた自分がいた二階の通りから飛び降り、俺の前へと降り立つ
そして、そのまま俺の体を力一杯抱きしめてくれた


 「…ごめん…おチビさん…」


エンヴィーの声が、温もりが、すぐ傍に聞こえる、感じれる
それが嬉しくて…涙があふれた
悲しみでない、それが…


 「…っ…もう…チビじゃね…ぇよ…」


言いたいことはたくさんあるのに、うまく言葉が出てこない


 「…うん…。でも…俺にはおチビさんだから…」


エンヴィーも同じなのだろう…どことなく、声が震えている


 「気づいたら…光の中で…おチビさんに会いたくて…、どこかから…おチビさんの声が聞こえた気がして…そっちに光があって…それを…追いかけたら…ここに…いた…」


 「…っ…俺も…聞こえた……お前の…声が…」


俺を抱きしめる力がさらに強くなる

だから…俺からも、力一杯抱きしめ返してやった

今は…これだけでいいから…

言葉なんて…後からいくらでも交わせるから…

今はただ…この邂逅を味わっていたかった…

二人で、共に…いつまでも……


FIN


強引に終わらせてみました(オイ)
これでいいんです。二人がそろってればそれで…(笑)

邂逅9~覚醒~

2006年01月04日 23時33分26秒 | 邂逅(エンエド)
光に包まれたまま、俺は眠る

奪われた記憶を手繰り寄せながら…



邂逅9~覚醒~



光の中で、俺は目を覚ました


 「ここは…どこだ?」


あたりは一面光に包まれて、それ以外のものは何も見えない
うまく働かない頭で、覚えてる事を検索する


 「確か…ホーエンハイムが…」


最後に見たのは、血。
ホーエンハイムが、自らの命を犠牲にして…何かをした
そして、意識が途絶える瞬間、俺の耳に聞こえた最後の言葉


 「エンヴィーーー!!」


あれは一体誰の声だったのだろう?
酷く悲しそうに聞こえたあの声…
そして、…ひどくなつかしいあの声


 「…誰…だっけ…?」


俺を呼ぶやつなんて…
そもそも、俺の名を知っているやつがこの世界にいたんだろうか?
ホーエンハイムを追って門を抜けてから…また別に誰かが来たんだろうか?
それでも名前を知っているやつなんて限られていて…
例えば、焔の大佐なんて、絶対に知らないだろう


 「なら…一体……っ!」


途端、頭痛が走った
いや、意識以上の存在がハッキリしないこの状態で
本当に頭痛なのかはわからないけど
どこかが痛くなったのは確かだった
まるで…俺の中から何かが溢れだそうとしているような……


 『ごめん…エンヴィー…』

 「…っ!?」


不意に聞こえた、声。
俺への謝罪の、声。
誰なのか…わからない。

わからないのに…なぜか、涙が溢れ出した


 「なん…で……涙が……?」


止まらない涙と共に浮かぶのは、あいつの…
憎いホーエンハイムの息子…エドワードの、表情(かお)


 『エンヴィー!』


あいつの笑顔と、俺を呼ぶ声


 『エンヴィーっ…なんでだ!?もう、戦う必要なんて!!』


殺そうとする俺の攻撃を避け、驚いているあいつの表情


 『エンヴィーっ!?』


「おチビさん」と呼んだとき、一瞬嬉しそうな顔をした、あいつ

そして…


 『エンヴィーーーー!!!』


その瞬間、俺の中の何かが弾けた

弾けて…そして、俺の全身へと広がった

あの時…最後に俺を呼んだのは……


 「おチビ……さん…」


俺の愛しいおチビさん。
エドワード・エルリック…


 「なんで…俺……忘…れ……」


忘れたくなかったのに
何があっても、おチビさんのことだけは覚えていたかったのに
よりによって…おチビさんのことだけを忘れてしまった


 「…門……」


そして…俺はすべてを思い出した
あの時…門の前に立った時から…俺が俺でなくなって行ったこと
その事に気づかないまま…門を抜けたこと
その時の代価に…一番大事な記憶を奪われたこと

全てを…思い出した
思い出して…願った


 「…おチビさんに会いたい……」と


どちらの世界にいるかも分からないおチビさんに届くように…
俺は…門の中で…ただ、祈った

邂逅8~帰郷~

2005年11月06日 20時31分49秒 | 邂逅(エンエド)
莫大な光が迸った後

あいつは、消えていた……



邂逅8~帰郷~



 「エンヴィーーー!!」

俺の叫びが、ふき抜けとなっている室内へと響き渡る
つい先ほどまでエンヴィーがいた場所の上方には、今もなお光が渦巻いていて
それが、親父の命と、エンヴィー自身によって形作られた円による錬金術の発動
そして、その発動がもたらした…『門』なのだということはすぐにわかった


 「門が…開いた……」


2年前、俺がくぐった門
俺の故郷、アメストリスとこの世界を繋ぐ、唯一の道
俺が…ずっと求めつづけていたもの
今それが…俺の上空にはある

しかし、それを素直に喜ぶ事は出来なかった
俺が求めていたのは…門と…あいつ
あいつと…エンヴィーと一緒に帰りたいから求めていたのに
一緒に帰る事で、再び元に戻れるかもしれないと思っていたのに…
皮肉な事で…当のエンヴィー自身が門へと変換されてしまって…


 「俺は…一体……どうすれば…」


呆然と立ち尽くすしかなかった。
しかし、状況はそれを許さなかった

エッカルトの銃弾に倒れた俺はロケット製作をしていた場所まで一気に落下し
奇跡的に大事には至らなかったものの
気がついたら一人用のロケットに乗せられて
俺の傍で…アルフォンス・ハイデリヒが微笑んでいった


 「あなたは、帰ることが出来ます」



けれど、今の俺にはどうしたらいいか、どう答えたらいいかわからなかった
帰りたくない、といえばそれは嘘になる
しかし、俺はエンヴィーと共に帰りたいのだ


 「待ってくれ…アルフォンス…っ…俺は…」

 「さようなら、エドワードさん」


俺の抗議も空しく、ロケットは発射された
垂直に打ち上げられるため、かかる重力がすさまじく、息が詰まりそうになった
そうして門を抜ける。2年前と同じように

そして、抜けた先は…あの時、俺がいた最後の町
セントラルの地下に沈んだ町の一角に、ロケットが不時着し、俺の体が投げ出される


 「エド…」


誰かに呼ばれて顔を上げる。
そして、力強く抱きしめられた。次の瞬間、それが俺と同じく成長したウィンリィ気づいた


 「お帰りなさい…」


ウィンリィがそう言ってくれた。よく見るとその後ろにはアルもいる。
想像してたよりも幾分幼く見えたけど(俺はアルが10歳の姿で蘇ったと知らないから当たり前だ)、確かにアルだった


 「…ただいま…」


涙さえ浮かべるウィンリィを安心させようと、とりあえず答えるけど
俺の心は、今だ別の空間をさ迷っていた


ああ…俺は帰ってきてしまったんだ…あいつを残して
あいつと…一緒に帰ると決めたのに…
そして…いつか、また前みたいに笑い合えればいいと思っていたのに…


ごめん…エンヴィー…


~続く~
やっとエド帰還
そしてここへ来て、ウィンリィはともかく初めてハイデリヒ登場(笑)
まあ、意識的にカットしてたってのもあるけどさ(オイ)
もう映画のセリフじゃないところ出てきまくるしな(笑)
目標は10話完結なので暖かく見守ってやってください(オイ)

邂逅7~途絶~

2005年11月02日 20時41分51秒 | 邂逅(エンエド)
何が起こっていたか、正直分からなかった

エドワードが現れて…そして鎧と共に去った

それを眼下に見据えながら…俺はどこか遠くを見ていた



邂逅7~途絶~



エドワードが来て、帰ってから数日
俺の周りは何やら慌しかった
壁に貼りつけられている俺は周りを良く見ることが出来ないから
勿論、下の方でロケットと言うものの開発が進んでいるなんて知りようも無かった

あの日、エドワードが来た時、俺は言った
「おチビさん」…と
特に問題があるわけでもない。初めて会った時もそう言った。
しかし、何かが違った。
その何か…はいまいち良く分からない。まるで頭に靄がかかったようだった


 「…くだらない…どうせ、しょうも無い事だ」


考えに詰まるたびにそう呟くも、疑問ははれなかった
エドワードだけでも、あの呼び名だけでもない
「エドワード」と「おチビさん」。それが合さってこそ何かが分かる気がした
けれど、やはりその何かは分からない

そうこう考えるうちに、再び俺の周りの様子が急変した
あいつが…エドワードが来たのだ
一度現れれば、騒ぎの規模は相当なものになる
幸か不幸か…俺の疑問は一時はその騒ぎに掻き消され
もう一度あいつを目にしたとき…俺の中には憎悪しかなかった


 「エンヴィー!答えてくれ!!」


エドワードが何か言っている。勿論、答える気は、ない。
むしろ何を答えろというんだ?
こいつは俺の姿を見るたびに酷く驚いた顔をしているが
そんなものは初見のときだけで十分だ

そして、答えないままに俺の時間は過ぎ、エドワードの時間もまた、過ぎる
その火蓋は、今まで身動き一つしなかったホーエンハイムだった


 「私の命で…エンヴィーを…門に転移させる」


俺を?門に?
途切れ途切れの言葉で聞こえたのはそれだけだった
よくわからないままに、俺はホーエンハイムの動きを追っていた
そいつは…自らに今もなお刺さっている俺の牙を自らの手で更に深く突き刺し
俺の口内に生暖かいものを噴きつけた

それは、血
紛れも無い、そしてもう生き長らえる事はできない程の、出血
俺に噛まれたホーエンハイムが動かなくなる


 「親父っ!!!」


エドワードが叫んだ、かもしれない
その時の俺にはもう何も聞こえなかった
ただ、眩過ぎる程の光が迸り、俺の意識が、姿が、それに包まれて…途絶えた


 「エンヴィーーーっ!!!」


意識が途絶える瞬間

今度ははっきりと…聞こえた

酷く悲しい…叫び声

…俺を呼ぶのは……誰?


~続く~

この回がエンヴィー視点でよかったのかわるかったのか…
エド視点だったら、大総統と酒場から逃亡ってのが書けたけど、エンヴィーは動けないんで心理状態が多めに
でもそれでもなんとも言えない出来に…いや、駄文だね。
申し訳ない…orz

邂逅6~失敗~

2005年09月06日 14時48分24秒 | 邂逅(エンエド)
あいつから聞き出した情報で

俺は「トゥーレ協会」の邸へと乗り込んだ

すべては、あいつを見つけて聞き出すために



邂逅6~失敗~


 「ここは…?」


邸に入ったまではいいが、大騒ぎで入ってきたものだから当然の如く追われた俺は1つの部屋へと辿りついた

高い場所への吹き抜けとなっている円形の部屋
その中心となる位置の床に書かれているものには、見覚えがあった

 
 「錬成陣…?」


それは確かに錬成陣だった。円の力を使い、物体を理解・分解・再構築するための、錬金術の原点。
けれど、この世界では錬金術は使えないということを、同時に俺は思い出した


 「…魔方陣…って奴か」


これが錬成陣だったら…などとほのかな希望が俺の頭を掠める
その希望があまりにも強かったためか、その陣へと再び目をやる
そして、俺の目に写った違和感…


 「…これは……この構築式は不完全だ」


職業病、という奴だろうか
陣の足りない部分を見つけるや否や、何か書くものを探していた俺
そして見つけた、近くに転がっていた小さなチョークで一心不乱に続きを書き始めた
これを書いたところで…錬成陣が発動するわけでもないのに


 「……何やってんだ…俺…」


完成した陣を眺め、俺はぽつりと呟く
陣は完成した。足りないのは…錬金術という概念そのもの
この世界に、錬金術は存在しない…いや、とうの昔に廃れてしまったのだから…
それに、例え錬金術が使えた所で…使ってどうする?
元の世界に戻れる保証なんて…まったくないのに

そう、再び意気消沈した時だった
俺の頭上で、聞き慣れた声が響いたのは


 「相変わらずバカだなぁ…おチビさん」


その呼び名に、猛烈な懐かしさを感じ、出そうになる涙を堪えて慌てて上を見る
そこには、円形に拘束された、エンヴィーの姿


 「エンヴィーっ!?」


名を呼ぶ、けれどもう返事は返らない
俺の胸に、さらなる不安が押し寄せてきた
もう、本当に前のようにはなれないのか…と

けれど、例えそうであっても、本当の事を知りたい
俺の目的は、ただそれだけなのだ
だから…エンヴィーに聞こうとした

しかし、それはまた、邪魔されてしまった
思いがけない事故。それは、俺の書いた陣の発動。
何が起こったのかは、実のところよく分からなかった

いきなり陣が光だし、沢山の鎧が降ってきた
その中に、アルがいたのだ
魂の一部を、かつて俺が定着させていたのと同タイプの鎧に宿して

それは突然の事
けれど、アルが生きていることを確認できて、嬉しかった
しかしそのせいで回りは騒然としてしまい
これ以上エンヴィーと話すのは無理だと思い、アルと共に逃げた

そして暫く話をした後、アルは戻ってしまった
そうして、俺は気づいた
あそこにあった陣を開く事、それこそが元の世界に返る術なのだと

そしてあそこには、エンヴィーが居る
つまり、一緒に帰れるのだ


…あいつが昔どおりのあいつならば


元の世界に返るために
エンヴィーと共に居るために
俺は、再び邸へと向かった…


話がメチャクチャです
そろそろ映画もうろ覚えです
来週もう一度行って来ます
それまでに完結できればいいなぁ

邂逅5~復讐~

2005年08月24日 12時36分17秒 | 邂逅(エンエド)
油断した

折角、あいつを殺せる所だったのに…

あと少し、だったのに……



邂逅5~復讐~



昨日、折角のチャンスは邪魔者によって妨害され
挙句、あの「トゥーレ」とかいう集団にまた捕らえられてしまった


 「(くそおっ!!折角…折角あいつを殺せる所だったのに!!)」


あの時、もう少しでエドワードを食い殺せそうな時に、こいつらは来た
流石に大人数相手にこの巨体では分が悪すぎた
俺は散々痛めつけられた上で、怪しい邸へと連れ戻されたのだ


 「(しかも今回は…)」


前回と違い、今度は俺の体はがっちりと拘束されていた
それも、なぜかは分からないが円形に
そして、俺が円形に拘束されている下には、1つの錬成陣が見えている

けれど、確かこっちの世界は錬金術って使えないんじゃなかったっけ?
そんな事を考えながら、俺は拘束を外そうと必死にもがき続けていた

…が、その行動はある奴らの動作によって止まった
円形に固定された俺の正面、重々しい扉が開いた先にある物によって


 「やあ…久しぶりだな」


物が、いや、人が、声を発した
腕を拘束され、まるで吊るされているかのような、そいつが
俺を見て、はっきりと、声を発した


 「(ホーエンハイムっ!!!!)」


瞬間、俺は動かせる首を伸ばしてホーエンハイムへと牙を向ける
あいつは抵抗する事も無く、俺の攻撃を受け入れ、そして食われた
俺の口先に横倒しになったホーエンハイムが現れる
その背中には俺の牙がささり、血が迸っていた
しかし、俺は気づいていた
こいつはまだ、死んでいないと。そして、まだ殺すべきではないと。
何故だか分からないがそう思った。
だから、俺はホーエンハイムに死なない程度に牙を突き刺した。
――――ありったけの憎悪を込めて


単純かもしれないけれど、俺はそれだけでかなり満足していた
もちろん、こいつの息子を殺す気はまだ十分にある
ただ、一番初めに終わらせたかった願いを叶えられ、それなりの充足感はあったのだ
こいつが俺の牙を受けている限り、俺はとりあえずの充足感にみたされる

これが完全に満たされるとき、それは次なる願いが成就された時だと
俺は分かっていた
そう、エドワードを殺したとき
その時こそが、俺の真の願いの達成、そして復讐なのだと
どのような方法でもいい、あいつが俺の目の前で消えること
それが俺のもう一つの願い

そしてそれは以外にも早く訪れることとなった
俺が拘束されている真下、奇妙な錬成陣の元に
あいつが現れることによって・・・


 「相変わらずバカだなぁ・・・おチビさん」


不敵な声で告げる
呼んだ瞬間、なにやら違和感のようなものを感じた
悪意以外を込めて、こう呼んでいたような…

けれど、そんなものは早々に振り払う
獲物は…すぐそこなのだから



おとーさんが喰われたのはエドが一度侵入した後かもしれない
例えそうでも気にしないで下さい(笑)

邂逅4~再会~

2005年08月21日 21時18分45秒 | 邂逅(エンエド)


見つけた

やっと、あいつを、この世界で

けれど、それは喜びの再会とは程遠くて…



邂逅4~再会~



 「エドワード・エルリック」


かつての大総統、キング・ブラッドレイとよく似た容姿を持つ男と共に、俺は古城へと足を踏み入れ、そして懐かしい声を聞いた


 「誰だっ!?」


反射的に聞き返し、辺りを見回す。周囲には誰もいない。
けれど、あれは確かにあいつの声だと確信がもてた

不意に、頭上から視線を感じ、目を上げる


 「っ!?」


刹那、天井にいたと思われる巨大なドラゴンが俺の上へと落下し、それをすんでの所で横に避けて交わす
ドラゴンの落ちたとところが、コンクリートでありながら粉々に砕け散る。避けなければ確実の俺の命は終わっていただろう
そして、そのドラゴンには…見覚えがあった


 「エンヴィーかっ!?」


次なる猛攻を交わし、俺は目の前のドラゴンへと声をかける
間違いなかった。あいつは…今俺を襲っているのはエンヴィーだった

この3年間、ずっと探し。そして見つからなかった俺の愛した相手
その相手が今、俺を殺そうとしている


 「エンヴィーっ…なんでだ!?もう、戦う必要なんて!!」


なんで、殺しあわなければいけないのか?
もう、俺たちが戦う必要なんて、どこにもないのに
なのに…どうして?
どうして……お前は俺を殺そうとする?


 「くそ…っここじゃ不利だっ」


狭いくせに碌な隙間も無いこの場所では圧倒的に不利なのは俺だった
とりあえず、慌てて階段を下り、中庭らしき所へと戻った所で上から爆発音が聞こえた
上を見上げると、そこには壁を突き破って出てきた巨大なエンヴィーの姿

そいつは俺の姿を認めると、まっすぐに俺へと向かってくる
――――果てしなく強い、憎悪と殺意を向けて


 「ホーエンハイムの息子っ!!お前だけはぁーーっ!!!」


3年ぶりに聞く声に、場合がミスマッチだが涙が出そうになった
生きていた…この世界で生きていた
それを確認できただけで、胸が熱くなり、涙が溢れかける

けれど、泣いている暇は無い
泣き始めればそれは、一瞬で俺の命の終焉を意味する
それほどまでに、エンヴィーの攻撃は素早く、そして強力だった
まだ…何一つ聞いていない、そんな時には、死ねない

洗脳か何かで俺を憎んでいるのなら正気に戻してやりたい
元から俺が嫌いだったのなら、正直に言って欲しい
ただただ、その思いで俺はエンヴィーに立ち向かう

しかし、今のエンヴィーと俺では力の差は、元の世界にいる時よりも明らかで
一瞬の隙を疲れ、エンヴィーは俺を飲み込もうと口を開き、俺を体ごと挟み込んだ
噛まれれば、そくあの世行き。そんな状態で、俺はなんとか口を閉じさせまいと必死に頭上の口を押さえ続けた


 「エン…ヴィー……っ」


声を絞り出してみるが、もはやあいつは声すら出してくれない
聞こえていないはずはなかった。けれど、それでも答えない。


 「どうして…だ?俺のこと…嫌いだったのか?遊びだったのか?」


腕がエンヴィーの圧力によって震えながらも、懸命に問う
この三年間、ずっと考えていた言葉を


 「どうし…て……っ!!!」


瞬間、目の前が真っ白になり、気が付けば俺は地面に落ちていた
強烈な悲鳴が耳を劈き、エンヴィーを見ると、エンヴィーは突如現れた謎の集団に囲まれ、傷ついていた


 「エンヴィーっ!!!…っやめろおぉぉっつ!!!」


慌ててエンヴィーの元へ向かうが、謎の集団に腕をつかまれ、動けなくされる
目の前ではエンヴィーが悲鳴を上げているというのに、俺は何もできなかった

やっと、やっと会えたのに
やっと…答えが見つかると思ったのに

何度も何度も振りほどこうとするが、大人数人の力に適う事も無く
俺の目の前で、エンヴィーは攫われてしまった
飛行船の下に荷物のように吊り下げられ、痛々しい傷を見せながら


 「エンヴィー……」


取り残された廃屋で、俺はエンヴィーが連れ去られた空を見上げた


これで、また…ふり出し
マブゼの話を聞くまで、俺はそう思っていた…




エド視点。あの古城でのエンエドを(笑)
エドが噛まれたのは、エンヴィーの濃厚なちゅーですよ!!(コラ)

邂逅3~捜索~

2005年08月19日 21時56分26秒 | 邂逅(エンエド)
あの日から、三年

俺は、人生最大のヘマをした



邂逅3~捜索~



 「(よりによって…人間なんかに捕まるなんてな)」


薄暗い一室、俺は今の巨大な体を横たえていた
正確には、横たえられていた…だけど

いきなり現れた人間どもに捕まった
ホーエンハイムを探すために根城にしていた廃墟に押し入り、攻撃をしかけてきた
いくらかは避けたが、前の小柄な体ではなかったのが災いし
あっけなく、捕獲

俺を捕まえて、何をする気なのかは皆目見当も付かないが
人間に捕まる事が屈辱だった

けれど、屈辱の中に1つだけ、いいことがあった
俺を捕まえた奴ら、そいつらは「トゥーレ」という集団に属している
俗に言う怪しい宗教集団だ
奴らの女頭領と、部下の男の話を耳にした時、俺の全神経が沸き踊った

“ホーエンハイム・エルリック”

奴らは確かにその名を口にした。それも何度も。
俺は確信した。ホーエンハイムはこの集団に関与している
それも、かなり重要な位置で…と
つまり、ここで待っていれば、あいつが現れる事もあると思った
幸い、閉じ込められてはいるものの、拘束はされていない
あいつを見つけたら、即座にかみ殺せばいい、そう思っていた

けれど、いつになってもあいつは現れなかった
奴らの話が聞こえる範囲では、どうやらあいつは奴らの要求を拒否したらしい
つまり、蒸発した。ここにいても、あいつが来る確率は格段に下がった
ならば、ここにいる必要は無い


 「(…帰るか)」


逃げた
部屋の壁を突き破って
奴らの手下を何人か殺して、逃げた
あいつを、探すために
探して、苦しめて苦しめて苦しめて、殺すために


 「(どこにいる…ホーエンハイムっ!!)」


新たな根城は、山中の古びた城
ここの最上階に居座り、闇に紛れてあいつを探す日々を送った
しかし、あいつは中々姿を見せなかった

次第に、俺がここにいることを人間に気づかれ始めた
「化け物が棲みついた」「怪物がいる」「ドラゴンらしい」
様々な情報が、ここにやってくるバカな人間どもから聞こえてくる

そうして、無謀にも乗り込んでくる人間を俺は殺した
殺していくことで、誰も戻らない
そうすれば、真実は広まらない
俺の姿を見たものは、いなくていいのだから

けれど、やはり全員を殺すことは難しく、何人かは逃げ去った
このまま俺のことが知れ渡れば、またあの組織の連中が来るかもしれない


 「(それは面倒だよなぁ…)」


焦るほどでもないが、嫌な事は嫌だと感じる
万が一の事も考えてみる
奴らが来ても、奴らのところにホーエンハイムがいるとは限らない
捕まるのはやっぱり面倒だ


 「(ホーエンハイムが無理なら…せめてあいつだけでもっ)」


あいつの血を引いた息子。エドワード・エリルック。
あいつの顔を思い浮かべ、そして死に行く様を想像するだけで
ホーエンハイムの場合を想像するのと同じくらい、歓喜の念が沸いた

ホムンクルスとなった俺と違い、人間であるあいつの息子
その息子を殺してやれば、ホーエンハイムはどれほど苦しむだろうか?考えるだけでわくわくしてくる


そして、その願いは思わぬ形で叶う事になるのを、俺は数日後に知ることとなった


かつての仲間、プライドに似た男と共に現れた、あいつの姿を見つけることで…



エンヴィーの牙が、闇に紛れて妖しく、光った


エンヴィー視点。これは映画部分ですが、想像部分(笑)
エンヴィーが1度逃げたって事しかワカリマセン(ぇ)


邂逅2~追走~(エンエド)

2005年08月18日 20時50分00秒 | 邂逅(エンエド)

 「大好きだよ、おチビさん」

かつてそう囁き、俺をこの上ないほど愛してくれたあいつは

俺を置いて、行ってしまった

最後に見たのは、深い憎しみの表情……


邂逅2~追走~


最後に会った時、あいつは言った


 「もしも、おチビさんが死ぬようなことになったら…俺は迷わず後を追ってあげる」



それは、深い深い愛情の表れ
数少ない逢瀬で結ばれた、俺たちの想いの行き着いた場所
敵同士である俺達が、いつかそうなってしまう可能性が最も高い結果
あの時、確かにあいつは俺を愛してくれて、そう言ってくれた
あの時のあいつの想いは、本物だったはず…だった

けれど、本当にそうなり、『門』の前で対峙した時
あいつは変わってしまっていた


 「奴はまだ生きているんだな!?俺は…あいつを殺す!!」


そう叫んだ時のあいつの目には、俺への想いなど欠片も見えず
ただ、親父と、そして親父の息子である俺への憎しみだけが、はっきりと現れていた
そして、あいつは行った
『門』の向こうへと。俺を置いて。一人で。

…なんで?一緒にいてくれるんじゃなかったのか?
死ぬときは後を追ってくれるんじゃなかったのか?
なんで…俺を置いていくんだよ

あいつが去った後、俺は元の世界へと戻っていた
目を覚ました俺の前には、ロゼがいて、遠くにラースがいた

けれど、弟のアルと…あいつはいなかった
アルは自らを使って、死んだ俺を錬成し…あいつは俺を置いて消えてしまった

自然と涙がこぼれた
アルがいないからか、あいつがいないからか…
多分どちらにでも当てはまる、悲しい涙が頬を伝う

錬成陣の上へと立った時、俺には恐怖も後悔も無かった
俺の代わりに消えてしまったアルを取り戻すのにも、なんの戸惑いも無い
それで、俺の命が奪われても…決して後悔はしない
でも…


 「もし…生きることができたなら…」


自然とこぼれた言葉。もし生きることができたなら、俺はあいつを探したい。
きっと、万一生きることができるならば…それはきっと『門』の向こうの世界
もう、この世界には戻れないかもしれない
でも、向こうの世界に行けば、あいつがいるかもしれない

そして、問い詰めたかった
俺を想ってくれたのは、嘘だったのか、と
俺が死んだら後を追ってくれるというのは、体のいい冗談だったのか、と
あいつの本当の気持ちを、知りたかった
どうしようもないほどに、俺もあいつを愛してしまったから


 「…だから…責任取れよな、エンヴィー…」


手の平を合わせる。ふと、生身で錬成するのは久しぶりだと思い
錬成陣なしの錬成は初めてだな、とか思った

光に包まれ、俺の体が『門』に吸い込まれる感触を感じた
俺が自分の命を代価にしても、アルが元に戻る保証も、あいつと同じ所にいける可能性も、そんなに高くない
それでも、今できることをする…と言ったら、100回生まれ変わっても俺はきっと同じ事をする

意識が途切れる瞬間、俺の脳裏に浮かんだのは3つの顔
たった一人の弟、アル。俺に向けて無償の愛を注いでくれたあいつ。そして、最後に見た憎しみに満ちたあいつの顔。
そこで俺の意識は途切れた



そして今、俺は親父と共に1919年のドイツのミュンヘンという所で暮らしている
正直、親父に会えただけで少しほっとした。知り合いが誰もいない世界よりはましだから
それに、親父が生きているという事は、あいつはまだ親父を探しているという事
親父と共にいれば、いつかあいつに会う事も叶うかもしれない

もっとも、あいつが同じ世界にいるという確証は無い
だけど、何故か俺は確信できていた。あいつはこの世界にいる…と
それで、再び会えた時、その時こそ、あいつの口から真実を聞きたいと願う

天気は快晴。親父は既にいつもの怪しい宗教団体の所へと出かけている


 「俺も、でかけるかな……」


あいつを…エンヴィーを探すついでに、俺はロケット工学を学ぶ
いつか、元の世界へ帰るために
できることなら…あいつと一緒に帰るために




静かに、しかしはっきりとした足取りでエドワードは歩く
この時のエドワードはまだ知らなかった
次にエンヴィーと出会う時、それはエドワードが予想だにしなかった時であるという事を


今度はエド視点。
エドはエンヴィーを追って門を越えたと信じて疑いません!(オイ)
次辺り映画ネタにはいります


邂逅~喪失~(エンエド)

2005年08月17日 16時57分49秒 | 邂逅(エンエド)

あんなに大好きだったのに、忘れてしまった

…否、奪われた

『門』の前へと立ち、恨みと憎しみだけであそこを通り抜けようとした瞬間

…既に、奪われていた


邂逅~喪失~


 「連れて行け!ホーエンハイムの所へ!」


門の前へと転移したあの瞬間、俺の中の何かが抜け去った気がした

その抜かれたものが何か分からないまま、俺は門を越えて奴を追った


俺を弄び、捨て去った、「光のホーエンハイム」の所へ

奴が生きていることを、奴の息子に『門』の前で聞き、考えるよりも先に体が『門』へと向かった


後ろで奴の息子が何か叫んでいたが、何を言っているのかは聞こえなかった

静止か、嘲りか、きっとどちらかだろうと思う

どうせ聞く気すらなかったから、分からなくてもいいんだけど


そして抜けた先は、見たことの無い世界、そして街

本来の姿へと戻った俺の目的はただ1つ

ホーエンハイムを探し出し、殺すこと


ふと、最後に見た奴の息子の顔が浮かんだ

俺が『門』がどこに通じているかと聞いた時、何故か驚いた顔をしていたあいつ

まるで俺が別人にでもなったかのような、そんな顔


 「(くだらない…どうせ俺が『門』の前に現れたことに驚いただけだろ)」


実際、俺自身、何故『門』へと行き着いたのか分からなかったから

俺はあの時、あいつの様に死んではいなかったのだから…

けれど、今となってはそれもどうでもいい話だった

むしろ、ホーエンハイムを追えた事に感謝してもいい


 「(礼のついでに…次にあったら殺してやろうか)」


俺の中の憎しみは、ホーエンハイムだけには向いていないから

あいつの血を引く息子だって殺してやりたいのだから

そして、その息子も、今はこちらの世界にいる

何故だかわからないが、今の俺には確信できる事だった

だからこそ、ホーエンハイムを殺ったその後は必ず…奴の息子を殺す


 「(待ってろよ…光のホーエンハイム。そしてエドワードっ)」


熱い憎しみを心に滾らせ、ウロボロスのドラゴンとなったエンヴィーは行く

憎き男とその息子を葬るために




憎しみで動くエンヴィーはまだ気づかない

『門』の前に立ったあの瞬間

己の中に息づいていた、最も大切なある人への感情が奪われていたことを…



こっそりブログでエンエド開始。かけるときに書いていこうと思います
映画ネタなので、後に行くほどネタバレ含みます
嫌な人はスルー