あなたを覗きこんでみる
たくさんの色が飛び交い跳ね返り
あなたのなかで光を放っていた
私はじっとそれを見つめる
あまりに綺麗で
何もかもを忘れて光を追った
あなたを覗きこんでみる
たくさんの色が飛び交い跳ね返り
あなたのなかが混乱していた
私はじっとそれを見つめる
あまりに繊細で
何もかもを忘れてあなたを追った
あなたが私を魅了し
あなたのなかに私は閉じこめられた
あなたを追うために
あなたから遠ざかり
自分が自分でなくなってゆく
この変容が
いつかあなたを失うことになるとしても
あなたを追うために
歩みを止められない
そして
あなたから遠ざかり
いつかはすべてを失う
そうなる前に
両端から私を引き裂いてください
変容しきる前に
すべてを失う前に
失ってみて分かるだろう
そこの空間を埋めていた存在が
どこかへ消えた
虚しさを抱えて惚けないでくれ
であれば
手放さなければよかっただけの話で
傷だらけなのをそのままにして
去るのをただ見送った
言い訳はいらない
去ったものはもう
かつての面影をなくし
かなしみを纏って
昇華するころだろう
虚しさを抱え惚けていればいい
深い深いかなしみが
私とあなたを引きずりこむ
互いに自分のことで精一杯
穴から這い上がることに必死で
気がつくと
存在を見失い
虚しさだけが残っている
あなたは幻だったのか
私は幻だったのか
叫ぶということも忘れて
ただ立ち尽くす
私たちは一体何を失ったのか
思い出せない
静かに涙が流れるのみ
音を立てず嗚咽
音の出ない慟哭
深い穴が空いている
底の見えない大穴が
冷えた空気が迫り上がって
この頬を撫で通り過ぎていく
吸い込まれたい
誘惑に耐え
ただ覗きこむ
深い穴は意志を持っているような
冷たい空気は悲しい咆哮にも聞こえ
ただ覗きこむ
何かが見えるかもしれない
すべての光を吸いとるのか
すべての光を拒絶するのか
あまりに深くあまりに暗く
何も見えなかった
そろそろ吸い込まれてみてもいい
見えない底に向けて
片足ずつ穴へ差し出してみる
そして落ちた堕ちた
私は消え去ってゆく
あなたのなかへ飛び込んだのだ
私だけが見つけた場所
誰にも知られていない場所
あなたが自らに空けた穴へ
あなたが決して与えられないもの
それを私は何よりも欲している
矛盾などどうでもいい
壊してでも手に入れたい
そうして
私自身も破壊されよう
あなたと私
もう逃れられない
互いを知った時から
互いを知る前から
だから力づくでも
奪ってみせるしかない
あの人を救えるのは
あなただけだ