ギャラリー柳水(りゅうすい) 日々のよもやま

40年以上を陶磁器とともに過ごしてきました。
見て美しく使って楽しい陶磁器の世界をご紹介いたします。

濱田の皿

2020年06月02日 | 日記
長年陶器を扱っていると、共箱がなかったり、数が揃わなかったりして、
売れずに手元に残る品物が出てきます。この皿もそうしたもの一つ。
形や線の勢いから、50~60代前後の作ではないかと思います。
白と黒の流描(ながしがき) 柄杓に入れた釉薬を上から流しながら線を描く。
自然な線が描けるまで、何度繰り返したでしょうか。
濱田庄司の著書『無盡蔵』(むじんぞう)には次のような下りがあります。

 これだけの大皿に対する釉掛が十五秒ぐらいきりかからないのは、あまり速過ぎて物足りなくはないかと尋ねる。しかしこれは“十五秒プラス六十年”と見たらどうか。自分でも思いがけない軽い答が出た。リーチも手を打ってうまく答えたと悦ぶ。こうなると、この仕事は自分の考えより、手が学んでいたさばきに委したに過ぎない。結局六十年間体で鍛えた業に無意識の影がさしている思いがして、仕事が心持ち楽になってきた。

今まで何百と濱田の皿は見てきものの、心に残る会心の作は少ないです。
しかもそうしたものから早く手元からは去ってしまいます。
この皿は15秒プラス60年には満たないでしょうが、濱田の生きてきた軌道が
描かれていると思うと、決してぞんざいには扱えません。
とはいえ使い勝手の良さがわかると、使わない日がないのです。
益子の土は少々重いですが、この皿は直径が22㎝と微妙に小さく、
重さが気になりません。
使い続けて20年以上はたちますが、丈夫で長持ち、健在です。










最新の画像もっと見る

コメントを投稿