私的文庫ナビ

文庫その他の話題を気の向くままに更新♪
もちろん不定期

今週の一冊~平凡社ライブラリー・言語~

2005-05-27 02:32:14 | Weblog
ミハイル=バフチン 「小説の言葉」

小説とはいかなる言語芸術か?
創造的な言語使用の本質とは?
これらの問いに真摯に答えるロシアの巨人バフチンの本著は、批評理論や社会言語学に興味をもたれるかたに是非一読を進めたい一冊である。
小説の言葉を、社会的・イデオロギー的に異なる諸言語(ラズノレーチェ)の相互照応関係(オーケストレーション/管弦楽化)と捉え、古代・中世から近現代に至る小説的言説の発展を言語の持つ統一への求心力と多様性への遠心力の相互作用と捉えるバフチンの視座は、現代に於いてなおその評価を高めつつある。
新書判文庫にして400P弱と中々の分量だが、非常に読み応えのある内容である。

今週の一冊~講談社文庫・純文~

2005-05-19 09:00:21 | Weblog
島本理生 「シルエット」

昨今の女流作家ブームの中で、ひときわ異彩を放つのがこの島本理生。
十五歳でデビュー、十八歳で群像新人賞受賞、その後数年の間に二度の芥川賞候補となるなど、早熟の才能を見せ付けている。
こう書くと彼女が自分とはどこか違う世界の人間のように思えるが、その生み出すテクストはひたすらに素直で、いやみが無く、透明な水のように読み手の中にしみこんでくる。
少女漫画のような構図とは言いえて妙だが、それだけではない力を持つ、そんな一冊。
表題作のほかに、デビュー作を含む他二編を収録。

今週の一冊~文春文庫・新刊~

2005-05-17 11:52:41 | Weblog
村上龍 「空港にて」

何か特別辛い事があるわけじゃないが、何となくこのままじゃどうしようもない感じ、というものがある。逃げ道の無い閉塞感、とでも言えばよいだろうか。
そこからの積極的逃亡として、自由と希望の象徴としての海外。
例えそれが幻想に過ぎないとしても、幻想が今を変える力を持つならそれは有意味なものである。
自身の作家生活の中で最高の短編、とは著者村上龍氏の弁だが、まさにそのコメント通りの一冊。
社会全体が閉塞的な雰囲気に包まれる中で、敢えて「希望」をテーマに描くところが常に社会に対する問題提起を続けてきた著者らしい。

今週の一冊~教育学・放送大学テキスト~

2005-05-12 01:18:16 | Weblog
佐藤学 「教育の方法」

何となくそうだよなぁ、と思っていても、それがなぜなのかは説明できない。
日常生活ならそれで一向に構わないだろう。しかし教育という場においてはどうか?
他者の人生に干渉する以上、何となく、で判断したくない。
例え結論が同じでも、判断の根拠を意識したい。
そういった意味で、教育学の存在価値の一つは暗黙知の意識化ではないか。
もっとも、原理原則にとらわれすぎて実地での試行錯誤を怠るようになってはいけないだろうが。

今週の一冊~雑誌・広告~

2005-05-07 12:19:50 | Weblog
マドラ出版 「広告批評~五月号~」

マヨネーズ業界の最大手キューピーの広告特集。
40年に渡って一貫したブランドイメージを発信してきたキューピー。

その広告にはあざとさが無い。
自然・野菜、それと共にあるキューピー。
何とも控えめで慎ましい。
圧巻。

広告を通して、言葉というもの、表現というものをもう一度考えてみたい、そう思った。