国内プロ野球独立リーグ・BCリーグのドラフト会議が11月15日に全12球団が参加して、非公開のネット会議で行われ、来シーズンから新加盟する神奈川フューチャードリームス(BC・神奈川)から新球団優先枠1巡目で中央大学の杉浦健二郎選手が指名されました。
講義後に東京・八王子市の中大キャンパス内で指名連絡を受けた杉浦選手は、「全体での1位という高い評価をいただき、とてもうれしいです。球団には『ぜひお願いします』とお伝えしました」と喜び、入団に前向きです。
11月3日と4日に行われた千葉県柏市のJR東日本グラウンドでのBCリーグトライアウトを受験。
2日目に行われたシートバッティングでは、外野手用グラブをはめ、杉浦選手は「右手の中指に血豆ができちゃって」とのことでしたが、142km/hのキレのある速球でバッター4人と対戦し、無安打2奪三振の投球を見せました。
初日にはブルペンの投球で、「フォームも制球も何も考えず、1球だけ全力で投げたら」と150km/hを記録。印象的なゴーグル姿とまさかの快速球で、視察したNPB出身の球団関係者たちをざわつかせたそうです。
それもそのはずでして、現在、中央大法学部の三年生で、高校と大学では野球部未所属。中学時代は野球部でプレーし、甲子園には憧れを抱ていたものの、野球部の練習など、「そこへの過程を考えると」と疑問を持ち、高校ではバドミントン部でプレーしていました。
その後、指定校推薦で中央大に進むと、自ら相模台レイダースという草野球チームを立ち上げ、週末に楽しみながら、右手握力78kgにバドミントンでの腕の振りが重なり、草野球では無双の存在に成長します。さらに、軟式野球SWBCの日本代表チームに選ばれるまでに成長します。
「フォームの基本構成は千賀投手(福岡ソフトバンクホークス)です。腕の振りは山本由伸投手(オリックスバファローズ)、ヒジの抜き方は安楽投手(東北楽天ゴールデンイーグルス)をマネして・・・。組み合わせて、少しそぎ落とした感じです」と、WEB動画から学んだそうです。変化球のカットボールやツーシームも、動画を参考にした独学です。
182cm、74kgの細身ながら、ややインステップ気味から、しなやかに腕を振り、球速が出にくいとされる軟式球で投げ込まれる140km/h台の速球はBCリーグ関係者だけでなく、この日、視察に来ていたNPB関係者の目にもとまり、神奈川フューチャードリームスの鈴木尚典監督(元;横浜ベイスターズ)も「面白い投手だと思います」「アメリカでは、アメフトと野球を一緒にやっている選手もいる。日本でそういう選手が出てきても面白い」と、トライアウト後に評価していました。
過去にはいろいろな異色選手がいます。
ドラフト制以前では、国鉄スワローズ(現;東京ヤクルトスワローズ)が1957年に、1956年のメルボルンオリンピックでレスリング5位入賞の桂本和夫さん(中央大)を獲得。レスリングの経験で鍛えられた腕力・下半身が発揮されることを期待されました。4年間在籍し、通算9試合9打数2安打でした。
1968年のドラフトでは、東京オリオンズ(現;千葉ロッテマリーンズ)が当時の陸上100mで10秒1の日本記録保持者で、東京とメキシコの両オリンピックに出場した飯島秀雄さん(茨城県庁)を外野手として9位で指名。代走専門で117試合に出場し、23盗塁をマークしました。
1988年にはドラフト外で、1987年国体やり投げ6位入賞の日月(たちもり)哲史さん(関東高陸上部)がピッチャーとして西武ライオンズに入団。4年後の1991年ドラフトで同球団に8位指名され、再入団しています(一軍出場なし)。
2011年には北海道日本ハムファイターズがドラフト7位で早稲田大ソフトボール部の大嶋匠さんを指名。2018年までプレーし、通算15試合18打数3安打でした。
杉浦選手はNPB入りについて聞かれると、「入れたらな、くらいです」「自分もNPBを考えるなら1年で」と話しています。
BCリーグ所属選手は、入団1年目からNPBにドラフト指名されることが可能です。今シーズンは埼玉武蔵ヒートベアーズの松岡洸希選手が、在籍1年で埼玉西武ライオンズからドラフト3位指名されるほどの飛躍を遂げています。
指名を受けて「150km/hをベースに、万能型の投手になりたい。150km/hを出したのがトライアウトだけ、みたいにならないように頑張ります」と意気込みを話しています。一方で、NPB入りの夢破れても、「復学すればいいだけですから」と割り切っています。
杉浦選手も入団が正式決定すれば今後、本格的な技術指導を受けることになり、飛躍の可能性は十分あります。可能性は無限大です。
少々気が早いですが、来年のNPBドラフト会議の隠し玉候補ではあるでしょうし、これでNPB球団に入団し、活躍したら、まるでマンガの世界のようです。