1976年6月26日に挙行された「格闘技世界一決定戦」アントニオ猪木 vs. モハメド・アリ。あれから42年も経つのですよね。
試合後、「茶番だ」「世紀の凡戦」だとか、批判的な声が上がりました。それもそのはず、プロレスラーとボクサーの対戦であり、派手な戦いを期待されていたと思ういますが、ルールで縛られていたこともあってか、派手な技の攻防はほとんどなく、猪木さんがリングの中央で寝転がり、アリさんがパンチのチャンスを狙うという、ほとんど動きのない「にらみ合い」が15フルラウンドを占めました。
しかし、アリさんは軽快なステップを踏み、試合後悠然と歩いていたものの、現実はエレベーターに入り、扉が閉まると倒れ込むほどの重傷で、その後のタイトルマッチも延期したほどでした。そもそも出来レースなら、試合内容はもっと面白く、これほどまでのケガはしなかったかもしれません。真剣勝負だったからこそ、ああいう展開になったのでしょう。
この、アントニオ猪木 vs. モハメッド・アリの構図に似ていると思えるのが、6月12日にシンガポールで行われる米朝首脳会談。主役は北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と米国のトランプ大統領ですが、実際に当日になるまでは会談が行なわれるのか、どうかはわかりませんが、ここまで来て中止というのは、元々あったかどうかはわかりませんが国際的信用を失いかねません。
猪木・アリ戦は、現役のプロレスラーとボクシング・ヘビー級チャンピオンとの対戦を実現した画期的企画でした。実現をめぐっては、経済的な条件や試合のルールなどで多くの交渉と調整が必要であって、実現するのかどうか試合の直前までファンをやきもきさせました。また、ともに「世紀の大一番」であることは事実です。さらに、金正恩委員長とトランプ大統領の組み合わせは、どこからどう見ても異種格闘技としか思えません。
さて、「格闘技世界一決定戦」と銘打った、アントニオ猪木 vs. モハメッド・アリは、15ラウンドで決着がつかず、判定に持ち込まれました。1ラウンド5点満点の採点で、レフェリーが71対71のイーブン、ジャッジの一人が72対68で猪木さん、もうひとりのジャッジが74対72でアリさんと三者三様で、引き分けとなりました。
その後、1990年代の総合格闘技ブームもあって、この一戦は再評価され、打撃と寝技を得意とする選手同士の攻防として、歓声が沸き上がるような場面となりました。時代が変わって「世紀の茶番劇」が「格闘技世界一決定戦」となりました。
真剣勝負という修羅場を戦ったアリさんと猪木さんは、かけがえのない友人になり、タイトルマッチや結婚式などに招待するようになり、アリさんがテーマ曲の「アリ・ボンバイエ」を猪木さんにプレゼントし、「イノキ・ボンバイエ」が誕生したのは、有名なエピソードです。
金正恩委員長とトランプ大統領の間に友情が芽生え、公私にわたって交流し、金正恩委員長が「アリラン」をトランプ大統領が「Born in the U.S.A.」と歌の交換でも行えば、さらの歴史的なエピソードとしても残るでしょう。