亡き母は、何かとささっと手作りできる人だった。
実家の物置には、今も、得体のしれない手作り果実酒の類がある。
今年の春、実家の父が風邪をひいた。
咳が止まらんから、何かないか物置を探したら金柑酒がでてきたらしい。
それを飲んだら、咳がピタッと止まったとうれしそうに言っていた。
母が亡くなってから、もう何年も経っているというのに、
母(の作った金柑酒)は病気の父を看病し、治してしまった。
あらためて、亡き母のチカラって偉大だと思った。
その金柑酒も全部飲んでしまったので、
あれとおんなじのを作れんかのぉ、とリクエストを受け、
5月の初めに、生まれて初めての果実酒を仕込んだ。
それが、今、馴染んできている途中で、金柑のオレンジ色がホワイトリカーに溶けだしてきた。
容器を振ると、底にある氷砂糖の溶けた砂糖の濃い層が、夏の道路に揺れる蜃気楼のようにもやっと揺らぐ。
これがうまいこと漬かれば、今年の冬は安泰だ。
母の作り方がわかったらいいのだけれど、とても残念。