♪Tin Pan Alley♪

50~70年代のロック・ポップス、ソフトロック周辺についてのブログです

Summer Days (& Summer Nights!!) :US #2 /UK #4

2006-03-11 | 1曲ずつ一言
The Beach Boys
1965.7
Produced by Brian Wilson

ビーチ・ボーイズが夏に作品を出す、というのは、我々にしてみれば、TUBEが夏に曲を発表するようなものなんでしょうかね
それはそれは皆さん期待するもんなのでしょう。

ところが、前作『トゥデイ』を聴けば分かるように、サーフィンが消えたどころか、夏っぽさも失っている、当時のビーチ・ボーイズの作風
本作も、よりいっそうクオリティの高い、夏と無縁な曲がならんでしまっているのです

・・・そんなアルバムのタイトルとジャケット、これまでのビーチ・ボーイズの中でも最も“夏”を強調しております何たる皮肉。
収録曲の中で、文句なしで“夏”の曲と言えるのは、タイトル的に⑩なのですが、これとて、しっとりバラードの、よりによってインスト曲(笑)。

現実をカムフラージュするかのようなタイトル、『トゥデイ』の路線を踏襲している

ジャケとタイトル、付けたのはレコード会社の主導でしょうが、何だかんだこれは効果ありだと思います
一気に音楽が変化したビーチ・ボーイズの人気を守ってくれたように思っているんですが、好意的に解釈しすぎですかね???

『トゥデイ』と比べ、まとまりがない、何て言われがちな本作、実はこちらの方が、まとまった時期に収録しているようです
強烈な個性を持つヒット曲が連続する上に、最後の2曲が変わってますからね。そんな印象を持たれるのでしょう。

内容は超々充実2、3枚組のベスト盤だったら、本作より5、6曲は入るかも
65年のビーチ・ボーイズ、キャッチーさと複雑さのバランスが抜群です

トラック・バイ・トラック

① The Girl From New York City B.Wilson - M.Love
マイク・ラヴ、こんな歌い方も出来るんですね~~荒いです
冒頭のサックスかっけぇーシングル・カットも狙えたのではないかという、キャッチーな出来

このニューヨークの女性ってのは、64年8月、TAMIショーで共演をしたレスリー・ゴアのことだそうな

そういや、ビーチ・ボーイズの12弦ギターって誰が弾いてるんでしょう??セッション・マンですよねぇ?

② Amusement Parks U.S.A. B.Wilson - M.Love
日本ではかなり売れたはず

『サーフィン・サファリ』の「カウンティ・フェア」と、フレディー・キャノンの「パリセイズ・パーク(後にもろにカヴァーしなおすやつ。ジャン&ディーンもカヴァーしてる。)」を合わせた曲

これは確かにヒット性があるでしょうトーク周辺のサウンド・イフェクトも面白いし
アメリカの“陽”の面が上手に出ている歌詞だと思います

③ Then I Kissed Her P.Spector - J.Barry - E.Greenwich :UK #4
強烈なスペクター・ナンバーを真正面からカヴァー
んだども、これの出来は本当に素晴らしい
前奏の持つアコスティックな風格では、本家を上回っているなぁって思います

アル・ジャーディンの歌声、個性という表現では収まらない、名状しがたい魅力歯切れ、ノビ、ふくよかさ、天賦の歌唱力

元々、メロディやパーカッションが素敵な曲
こちらのヴァージョン、コーラスが後半に控えめに入っているってのは好感度高いです
それでも、最後の「Then I asked her to be my bride」のハーモニーが、パッと弾ける感じになってるのは、さらに好き

イギリスでのシングル・カットは67年のようです。

④ Salt Lake City B.Wilson - M.Love
前奏から思いっきり独特なリフが良い不思議な空気を持ってます時々無性に聴きたくなる。
間奏のサックス・ソロはスティーヴ・ダグラス?格好良いですよね~

内陸部で最大のビーチ・ボーイズ人気を誇ったユタ州のソルト・レイク・シティ、コマーシャル・ソングを依頼したんだそうな。
もちろん、冬季五輪の際、メンバーの何人かは当地で演奏した

この曲を聴いても思うのですが、ビーチ・ボーイズのサウンドは確かにググッと変化したが、マイク・ラヴのリードは相変わらずホットロッド系ソングの歌い方をしているよなぁ、何て

⑤ Girl Don't Tell Me B.Wilson
タイトル、メロディ、ドラミング、、、ビートルズが3ヶ月ほど前にリリースしたばかりの「涙の乗車券」でございます
“確信犯です”と言わんばかりのカールの語尾が面白い

カール・ウィルソン、様々な歌い方が超ハイ・クオリティで出来るヴォーカリスト

正面切ってビートルズを意識した曲を入れてくるってのは凄いですよね最近こんなことするアーティストっているんでしょうか??(笑)

よく、“コーラスを全く入れなかったのも、ビートルズ・サウンドを意識したから”というご意見を見ますが、、、ビートルズのシングル・ヒット、コーラスなしなんてありましたっけ???(笑)ってな訳で、この意見は微妙

本家「涙の~」を上回ると感じる時があるほど、不可思議な魅力に溢れている佳曲で、トニー・リヴァース&ザ・キャスタウェイズや、アルのバンドのように、コーラスをたっぷり足したカヴァーも絶品

⑥ Help Me, Rhonda (Single Version) B.Wilson - M.Love :US #1 /UK #27
2度目の全米1位彼らの先進性、一般的にも受け入れられないこともないようです

何度も何度も録った曲よろしく、この時点ではマックスに完璧主義万歳な仕上がりさすがに評論家も、この曲にはケチを付けないよねぇ??

歌詞は、エヴァリーズの「バイ・バイ・ラヴ」を感じさせます

スタジオ・ベーシストのキャロル・ケイが「普通こんなことしないわよ」と動揺した、奇跡のベース・ラインは最高
彼女を筆頭に、サビをぐんぐんと引っ張る演奏陣、良い仕事です
ピアノとギターがユニゾンなんでしょうか?間奏では抜群の決まり方

んでもってハーモニーファンを多いに喜ばせる仕上がり
マイク・ラヴが歌う「Bow, bow, bow」のパート、サビでワン・テンポずれた「Rhonda, help me, Rhonda」、、、
ミスター・ハーモニーのブライアン、大発明でしょう

・・・そして、当時のテレビ番組では完璧に再現。お見事

⑦ California Girls B.Wilson - M.Love :US #3 /UK #26
ブライアンをして「好きなのは前奏だけ」と言わしめる、彼らの強烈な代表曲
その一世一代の前奏、“浜辺に打ち寄せる波をメロディにしたら絶対にこうなるんだ”って感じです(笑)。

“世界中の女の子がみんなカリフォルニアの女の子になっちゃえば良いのに”ってすごい歌詞は相当受けたようで、今でもカリフォルニアの女の子は、小さい頃にこの曲が好きだったりするんだそうな

ここからブルース・ジョンストンがコーラスに参加

ハーモニーはいっそう素晴らしいことになってますライヴごとにパターンが違っているようで、様々なヴァージョンが楽しめます。
・・・ひょっとすると、デモの段階でも、コーラス・パターンは様々だったのかも知れませんね

GVボックス・セットで、これのアカペラを聴いた時、欣喜雀躍たるものがありましたね厚い。むちゃくちゃ厚いッス

⑧ Let Him Run Wild B.Wilson - M.Love
このアルバムで一番フライング気味なのがこれでしょうね~。『ペット・サウンズ』そっくりですもん

か細く高いヴォーカル、ブライアン自身は「女々しくて嫌い」とのたもうてます。

⑨ You're So Good To Me B.Wilson - M.Love
ここまで、どれをシングル・カットしても違和感なかったであろう名曲が続いておりましたが、これまたシングル覚悟で録ったのではないかと思わせます
ブライアンもお気に入り曲のようですね

黒人さんがカヴァーしても良さそうなソウルフルなナンバー
ブライアンがこんな歌い方が出来るとなると、ビーチ・ボーイズが提供できるヴォーカル・レパートリーは無限大ではなかろうかと思う意味不明。

最後の間奏明け、「Lalala」のフェイド・インに注目するのが好き(笑)。

⑩ Summer Means New Love B.Wilson
これもとっても『ペット~』を感じさせる曲
どう考えても“サマー”なんてつけなくても良い曲
そこで、“夏だ、夏なんだ”と思って聴いてみると、意外に相当夏っぽい曲にも思えてきます(笑)。

時折りふっと部屋に流したくなる、素敵なバラード曲。
本人もお気に入りのようで、「キャロライン・ノー」のB面に入ります

⑪ I'm Bugged At My Ol' Man B.Wilson
本作品、ここに来てようやく力が抜けるって感じです

口やかましいお父様を罵る歌詞、よくこんなものをオフィシャルな場に出すもんですね
歌詞見れば分かりますが、絶対マリー(父)は気づいてしまうぞ(笑)。

ピアノだけの録音も、ブライアンの女性ゴスペル歌手のような変な歌い方も、このアルバムの中できわきわに浮いてます

⑫ And Your Dream Comes True B.Wilson - M.Love
そんな曲の次に完璧アカペラ・ハーモニー・・・本当に不思議なセンスしてますね、彼ら。
下敷きは「キラキラ星」ではないかと言われてます

ゴスペルのグループってビーチ・ボーイズのカヴァーってあんましないんですかねぇ?凄く良いと思うのですが。

そうそう、思えば、この“夏のアルバム”は、“もうひと夏来れば、君の夢は叶うよ”という歌詞で閉めているんですねー。かろうじて夏のコンセプト??

・・・ビーチ・ボーイズのもうひと夏。。。
66年5月に『ペット・サウンズ』発売。7月にはキャピトル主導のベスト盤リリース。9月、「グッド・ヴァイブレイション」完成。
うぅむ、コメントに困る出来事
でも、夢は叶ったようではありますよね


1 コメント

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恋の夏 (スワン)
2006-03-12 16:14:23
このアルバムはタイトルやジャケットから想像すると一番「夏」っぽいですが、曲の内容はほとんど夏とは関係ないんですよね。「レット・ヒム・ラン・ワイルド」がブライアン本人があまり気に入ってないとは意外でした。一番好きそうな気がしますが・・・
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