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苦手なことは伸びしろなんだ

2013-01-11 17:35:27 | その他
  苦手なことは伸びしろなんだ

 自分の子どもの頃を振り返ると、ぐんぐん伸びていた時期というのは、やっぱりサッカーを楽しんでいたときなんです。
 いろいろな思い出がありますが、小学校6年生のときに愛媛FCの入団テストに落ちて、道をそれてしまった頃のことを話しましょう。
 あのとき、僕はもうサッカー選手としては成功できないんだと思ってしまっていました。中学のサッカー部に入ったのですが、そこは不良の集まりで、サッカーはほとんどやっていませんでした。部活の練習に行かなくなっただけでなくて、学校もさぼるようになりました。でもそこで恩師に出会えたおかげで、もう一度サッカーを楽しいと思えるようになったのです。
 恩師は、僕が本気で練習をすればプロに絶対になれる、と言ってくれました。その代わり、人一倍練習をしなければいけないと教えられました。その通りにやって、成果が出たときにはほめてくれました。認められることがすごくうれしかった。仲間がほめてくれたり、喜んでくれたりしたことでも、心の傷が癒えていきました。
 恩師が教えてくれたのはサッカーだけじゃありません。1人の人間として強くなることでした。若いときにその土台を作れたら、あとは何が起きても怖くない。対応できる。
 今のサッカー界には技術こそが大事だと考える傾向がありますが、レベルが高くなればなるほど、気持ちの強さが大事になってきます。どんなに能力が高くても、プレッシャーに押しつぶされて、自分のプレーができなくなってしまうからです。
 でも正直なところ、プロになる前は、プロになれないんじゃないかという不安がありました。プロになってからも期待にこたえないといけないという重圧がありました。いつでもサッカーを楽しめるようになったのは、インテルに入って自信をつけてからのことです。
 人はだれでも苦手なことや、嫌いなことを考えて、否定的な気持ちになってしまいがちです。
 僕は自分の苦手なところを、自分の伸びしろだと思うことにしています。たとえば走ることが僕は苦手でした。でもそれを自分の武器に変えればすごい選手になれる、というふうに思いました。そう思って走るうちに、走るのが楽しくなってきました。
 ぐれてたときの自分に、今の自分なら「そこでがんばればすごい自分になれる」と言えます。同じように、近い将来世界一になっている自分に、今の僕は励ましてもらっています。
 気持ちが落ち込んだとき、プレーがうまくいかないとき、自分のミスで負けたとき、将来の自分がこう問いかけてくるんです。未来の僕は世界一になってるんだから、そんなことで負けるなって。
 人は5年努力すれば、想像以上のところに到達できると思います。大学のサッカー部で応援の太鼓をたたいていた僕が、インテルに入るまで5年です。
 夢をかなえている自分を想像してみてください。そこから始まります。

【我が家の子育て】(母・りえさん)
 親が先回りしないように心がけています。その代わり、求められたときにはなにがあっても話を聞き、親なりの言葉をかけてあげることにしています。
 たとえば佑都が中学のころ、悪い場所へ出入りするようになったのですが、そういう失敗も彼の勉強と思って、黙っていました。東福岡高3年の最後の試合に負けたときは、励ましたり、ねぎらったりするより、彼の連絡が来るのを待つことにしました。イタリアでけがをしたという報道があっても、私は自分からは連絡をしません。
 それを驚く人もいます。でも子どもも子どもなりの経験をしています。親の役目は、子どもの不満や、否定的な気持ちを、プラス思考で受け止めてあげることだと思っています。見方を変えて、よいところを探せば、成長するチャンスをつかめるし、敵よりも味方を作れます。
 親の考えに従うのではなくて、子どもが自分で考えられるようになれば、どんな環境でも今を一生懸命に生きられるようになる人になれます。そういうふうにできるようになれば、自然に助けてくれる人が増え、よい環境のなかで成長していけるのではないかと思います。(構成=編集委員・忠鉢信一)

ながとも・ゆうと
1986年、愛媛県西条市生まれ。小学校時代にサッカーを始め、中学時代までは地元でプレーした。2008年、明大在学中にFC東京に入り、日本代表にも初選出。10年、W杯南アフリカ大会後にイタリア1部のチェゼーナへ期限付き移籍。11年1月、名門インテル・ミラノへ完全移籍した。


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