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自己実現という罠──悪用される「内発的動機づけ」

榎本博明,2018,自己実現という罠──悪用される「内発的動機づけ」,平凡社.(10.3.24)

本来、自己実現とは、人間としてより成熟していくことを指す。だが、「仕事で自己実現しよう」「やりがいこそが仕事で大切」など、仕事と自己実現を結びつけ、やりがいを感じさせることで、働く人びとに、低賃金で過重労働を強いる現実がある。あくどい経営者が内発的動機づけという心理学の概念を悪用しているのだ。なぜ、そのような言葉のトリックに簡単に引っかかってしまうのか…。無自覚のうちに植えつけられた仕事観や、その社会的な背景、対処法について考える。

 本書では、キャリア教育の弊害が繰り返し主張されている。

 「やりたい仕事を見つけよう」とキャリア教育の導師は言うが、職業は個人の願望に合わせてつくられているものではない。
 ニーズや利潤獲得があるところに、職業は成立している。

 「やりたいこと」が仕事と一致することは滅多にあるものではなく、多くの人にとって、「やりたいこと」は余暇の領域に属すものだろう。
 余暇を楽しむために労働する、これはきわめて健全な職業観である。

 わたしたちは、食べていく、人生を謳歌する手段として仕事をするのであって、仕事のために生きているわけではない。

 また、自己の資質、能力を開花させることが、アブラハム・マスローの言う「自己実現」であるが、資質、能力を生かせるのは、仕事のうち、ごく一部でしかないことが多いだろう。

 「(自己の)成長」や「自己実現」という言葉に惑わされて、「やりがい搾取」の餌食になることはない。

目次
第1章 「活躍したい」「輝きたい」は悪いのか
活躍できていない自分への苛立ち
「やりたい仕事」病は和らぎつつあるが… ほか
第2章 「自己実現」によって搾取される人たち
「お客様の満足」「お客様の笑顔」という魔法の言葉
「間柄の文化」だからこそ、人の役に立ちたいという思いが強い ほか
第3章 悪用される「内発的動機づけ」
まるで新興宗教団体のような会社
新入社員ほど、洗脳される ほか
第4章 「使命感」や「人間関係」に縛られやすい日本人
日本で過労死が多いのはなぜか
「期待に応えたい」というモチベーション ほか
第5章 人は仕事をするために生きているのではない
だれだって日々の仕事に意味を感じたい
仕事生活に意味を感じられない ほか


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