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本と音楽とねこと

コミュニティ

Bauman,Zygmunt,2001,Community: Seeking Safety in an Insecure World,Polity Press(=2008,奥井智之訳,『コミュニティ──安全と自由の戦場』筑摩書房(¥2,730)10.7.1)

 冗長な叙述の退屈さを、いかにも碩学らしい蘊蓄が補ってくれる。
 安全と自由のトレードオフなど誰しも感じてきたところだろうが、理路整然とした論述を読むとあらためてああなるほどと納得させられる。

目次
序章 ようこそ、とらえどころのないコミュニティへ
第1章 タンタロスの苦悩
第2章 引き抜いて、植え付ける
第3章 撤退の時代――大転換第二段
第4章 成功者の離脱
第5章 コミュナリズムの二つの源泉
第6章 承認を受ける権利、再配分を受ける権利
第7章 多文化主義へ
第8章 はきだめ――ゲットー
第9章 多文化の共生か、人間性の共有か
終章 ケーキも食べればなくなる

私たちが生きる世界で、コミュニティとは何なのだろう。かつての血縁や職域によるローカル・コミュニティは、近代の産業構造に取って代わられたが、いまやそれも解体し、果てしない分解を経て、ゲートで鎖された高級住宅地とゲットーの二極化に向かっている。コミュニティは、文字通り監視カメラと壁と銃によって守られる空間になりつつある。
グローバル・エリートは社会からの逃走を図り、負け組が再浮上するための回路は切られ、持たざる者は置き去りにされる。この動きは、いまや「国」や「社会」や「福祉」の意味を大きく変えようとしている。
こうした世界で「安全」と「安心」を求めるとき、代償として何らかの「自由」を支払うことは避けられない。しかし守られるのは誰の安全で、無視されるのは誰の自由なのか。階層化が加速し、囲い込みと排除が進む世界で、安全と自由は幻なのか。
現代の社会学界を代表する理論家が、コミュニティの幻想と現実と課題を論じ、共同体の根幹を問う、必読の書。

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