つい読み損ねていた本なのだが、ケアと生命、社会保障、エコロジー、以上三者の相互連関を検討し、来たるべき「定常型社会」の思想的基盤を構築した書として、とても意義のある作品だと思った。耐久消費財が普及し尽くし、少子高齢化が進行する成熟社会は、貧困層を減少させ、基礎的消費財の安定的な需要を喚起していくことでしか維持できない、この当たり前のことさえ認識できず、「超国家企業」や富裕層ばかりを優遇し、貧困層の増大を食い止めようとさえしない愚かな政権の現状を顧みるにつけ、本書をとおして垣間見れる、十分に実現可能なユートピアとの落差に歴然とする。
目次
第1部 社会システム
生命科学の政治学―「生命倫理」を超えて
エコロジーと福祉国家―比較福祉・環境政策のために
福祉国家の接近と多様化―「持続可能な福祉国家/福祉社会」へ
第2部 ケア/生命
ケアをめぐるクロス・オーバー―サイエンスとケアの接点
自然のスピリチュアリティ―エコロジーの再定義
第3部 生命の政治学
生命の政治学のために
定常型社会へ
人間の「生命」に本質的に関わる問題領域でありながら、これまで、福祉国家-社会保障、エコロジー-環境政策/政治、生命倫理-生命科学の3つの領域は、アカデミズムの強固な縦割り性と専門分化のゆえに、個別ばらばらに論じられるのみで相互に関連付けられて議論されることはなかった。本書は、これら3つの問題領域を横断的に論じ、トータルに理解することを可能にする統合的なパースペクティブを提示する。
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