広島県の農村に住む、家父長制家族とムラ社会の因習のなかで耐え忍び、ささやかな自由を希求する女たちの息づかいまでもが聞こえてくるような作品だ。
山代さんは、中井正一のいう「あきらめ根性、みてくれ根性、ぬけがけ根性」にまみれた村人たちと対峙しながら、女たちのかすかな抵抗の意思を(だれが語ったのかわからない)「民話」に託し、女たちの連帯を促そうとする。
また、本作は、1950年代、まだ日本社会に息づいていた中間集団のありようを生き生きと描き出してくれている点で、資料的価値も高い。
農村にも民主主義が宣伝されて十数年。だが、果たして村の婦人達の生活は真に本音をはける明るいものになっただろうか。新生活運動の中に形態をかえておおいくる自由への脅威を感ずる彼女達は、複雑な現実を自らの言葉によって新しく民話にうたい、労働の中で語り伝え、生き抜こうとする。村に住む作家が伝える社会の底辺。
目次
蝸牛
中井先生のお話
火には火箸、みみずには塩 ほか
婦人会との七年
婦人会館でのデザート
グロート女史のメッセージ ほか
“みてくれ”を逃れて
表彰される村々
家計簿グループ ほか
錐蛙
“広島人は河原の砂よ”
コンマ以下の力 ほか
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