故小池和男さん。労働経済学の重鎮だった人。
小池さん、中間層崩壊の時代にあって、「非正規労働」の「雇用調整機能」および「低技能分野担当機能」ばかりが問題視され、その「人材選別機能」が評価されないことに、どうも納得がいかなくて、本書を書いたようだ。
時代は変わったんだよ。東大の社研調査が行われた高度経済成長前期は、「男性働き手モデル」の確立期であり、社外工や臨時工が「選別」的に正社員として採用されることも多々あった。しかし、1980年代以降の「非正規労働」は、まず家計補助のための主婦パートの急増にはじまり、1990年代、バブル経済崩壊以降は、「雇用の調節弁」、「低賃金ルーティンワーカーのプール」としての、未婚女性、シングルマザー、そして就職氷河期世代全般のそれが増加していくことになったのだ。
「雇用のミスマッチ」を防ぐためにも、「人材選別機能」に限った「非正規労働」はわたしはあってよいと考える。しかし、だからといって、時代錯誤としか言いようがない知見をもちだして、「非正規労働」を論じてもらったら困る。「女性の貧困」に敏感な人からは怒りをかうだろう。
目次
序章 非正規労働を考えるために 他国も専門職もみる
1 問題と方法
2 構成 他国もみる
第1章 社外工と臨時工 1950年代初めの造船業
1 資料の性質
2 臨時工から本工への昇格
3 仕事の分業
4 社外工の多い職場
5 鉄鋼職場の分業
第2章 アメリカの非正規、正規労働者
1 ホワイトカラー層の観察から
2 アメリカの一般企業のホワイトカラー
3 アメリカのブルーカラーのばあい
第3章 製造業の生産職場
1 1960年代半ばの臨時工
2 非正規労働者がきわめて多い事例 2000年前後
3 山本[2004]調査
4 電機産業の職場
第4章 三次産業の非正規労働者
1 「就業構造基本調査」による概観
2 外食産業
3 チェーンストアのパートタイマー
4 ふたつの途 仮説
第5章 設計技術者
1 1960年代のアメリカ
2 日本の非正規製品設計技術者
終章 ひとつの提案 人材選別機能の重視
1 中下位職のばあい
2 仕事表の働き
3 中堅上位層や技術者に仕事表は適さない
4 労働組合の役割
自動車工場や外食チェーン店から米国の保険会社まで、終身雇用崩壊が叫ばれる以前から非正規労働は幅広く存在してきた。合理性があるから存続する、ならばその根拠は何なのか。職場まで下りた貴重な調査資料をもとに実像を描き、改善策を提案。
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