アリス・ウォーカー(柳沢由実子訳),1986,カラーパープル,集英社.(8.19.24)
16歳の黒人娘セリーは、名も知らないミスター**のもとへ嫁がされ、夫の暴力の下で毎日を耐えていた。愛する妹も夫に襲われ、彼女は失意のまま、アフリカへ渡った。……黒人社会の中に巻き起る差別、暴力、神、性といったすべての問題にたち向い、やがては妹との再会を信じ、不屈の精神を糧にするセリー。女の自由を血と涙で獲得しようとする女性を描く愛と感動のセンセーショナル・ノベル。ピューリッツァ賞、全米図書賞受賞。ペーパーバックスで既に400万部を突破した。
ある奴隷少女に起こった出来事は、白人男性の黒人女性に対する、虐待、暴力、抑圧、差別を描いた名作であるが、本作は、黒人男性の黒人女性に対するそれ──白人男女の黒人女性への加害行為も描かれているが──を描き出した、言うまでもない名作である。
黒人内での女性への虐待、暴力、抑圧、差別の生々しい描写は、否応なく、人種、エスニシティ、ジェンダーによる加害/被害の交差性(intersectionality)に目を向けさせてくれる。
主人公、セリーとシャグ・アヴェリとの同性愛も含めて、さまざまなシスターフッドが生き生きと、美しく描き出されているのが、とても印象に残る。