ハリエット・アン・ジェイコブズ(堀越ゆき訳),2013,ある奴隷少女に起こった出来事,大和書房.(5.24.24)
本作品は、長らく忘却されていた元黒人奴隷女性の手記──しかもフィクションと捉えられていた──であるが、出版の126年後に、歴史学者により、実在した元奴隷少女によるノンフィクション作品として再発見され、米国でベストセラーとなった。
本書では、ほぼ全編にわたって、奴隷制度の過酷さが生々しい筆致で描かれている。
奴隷所有者は、当たり前のように、黒人奴隷女性をレイプし、子どもを産ませる。
その子どももまた奴隷所有者の財産となり、次世代の者に相続されていく。
残酷な奴隷所有者、虐待から逃れようとする奴隷、逃亡奴隷を捕まえようとする者、逃亡奴隷をかくまおうとする者等々、さまざまな人物がジェイコブズの透徹した眼で描き出されている。
数奇な人間ドラマが展開する優れたノンフィクションであり、米国奴隷制度の内実を白日の下にさらす資料的価値の高い作品でもある。
1820年代のアメリカ、ノースカロライナ州。自分が奴隷とは知らず、幸せな幼年時代を送った美しい少女ハリエットは、優しい女主人の死去により、ある医師の奴隷となる。35歳年上のドクターに性的興味を抱かれ苦悩する少女は、とうとう前代未聞のある策略を思いつく。衝撃的すぎて歴史が封印した実在の少女の記録。150年の時を経て発見され、世界的ベストセラーになったノンフィクション。
目次
1 少女時代
わたしの子ども時代
フリント家の奴隷生活
奴隷が新年をこわがる理由 ほか
2 逃亡
プランテーション
逃亡
危険な日々 ほか
3 自由を求めて
北へ!
フィラデルフィア
娘との再会 ほか