ケン・リュウ編(中原尚哉ほか訳),2018,折りたたみ北京──現代中国SFアンソロジー,早川書房.(6.24.24)
北京、異形の都市。この街は貧富の差により三層のスペースに分割され、24時間ごとに世界が回転・交替し、建物は空間に折りたたまれていく。緻密にして巨大なルービックキューブ型都市の社会と文化に翻弄される男の冒険を描いたかく景芳によるヒューゴー賞受賞の表題作、秦の始皇帝指揮下3百万の軍隊を用いた驚異の人間計算機の顛末が語られる劉慈欣「円」(ヒューゴー賞受賞作『三体』抜粋)、遺伝子改造鼠を倒すべく歩を進める隊列の闇を描いた陳楸帆「鼠年」など、7人の作家の13作品を、短篇の名手ケン・リュウが精選し英訳。いま最注目の中国SF、その最前線を奔る作家たちが放つアンソロジー。
中国SF作品のクオリティの高さを感じさせるアンソロジーだ。
サイエンスフィクションの枠を超え、ファンタジーも含めたスペキュレイティブ・フィクションの作風のものが多い。
文学作品、フィクション作品のレベルでは、中国での思想、良心、表現の自由が高水準で許容されていることがわかる。