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本と音楽とねこと

そして夫は、完全な女性になった

みかた著・大谷伸久監修,2024,そして夫は、完全な女性になった,すばる舎.(9.28.24)

「もうこれ以上自分が中年男性になっていくことに耐えられない。残りの人生は女性として生きていきたいんだ」。
40代を迎えた夫は、こう言い放った。
20代後半で結婚し、夫婦共通の趣味である旅行を頻繁に楽しむなど、平和な日々を過ごしていた2018年のある日、発覚した夫の女性ホルモン剤服用。
まさに青天の霹靂といえる事態に混乱しながらも、何度も話し合いを重ねながら女性化していく夫を見続けた2年間を綴った手記。
見た目だけでなく、いやそれ以上に中身も変わっていく夫との関係に苦労しつつも、性別違和についての学び、SNSなどを通じた当事者や当事者の家族との出会い、自己変革の決意……様々な行動を重ね、葛藤と闘いながら、どうすべきかを模索し続けた。
そして夫の性別適合手術が決まり、いよいよ体も女性となる直前に下した決断と、夫や現代のジェンダー医療に対して思うこととは――。

多様性の時代…周囲に理解され、配慮され、受け入れられていく夫を見る妻が、その状況を受け入れるのは簡単ではなかった―。突然「女性として生きていきたい」と告白した41歳の夫。配偶者の視点から描く性別移行のリアル。心も体も変わりゆく夫を一番近くで見続けた妻による2年間の手記。

これ以上の薄毛や加齢臭は耐えられない…平穏な結婚生活を送る40代のおじさんが女性になろうとしたワケ

 本書は、40代を迎えた夫から女性への性別移行を告げられた妻が、さまざまな葛藤をかかえ、苦悩していくさまが克明に描かれた手記である。

 トランス女性の配偶者の手記など、まずお目にかかれないので、トランス当事者家族の苦悩のほどが知れて、有益だった。

 みかたさんが指摘するとおり、性別違和、性別不合の真贋、というか、実相は実に多様であり、性別移行が正しい選択なのか見極めるのは、とても難しい。

 性別違和とうつ病などの精神疾患を併発している患者は非常に多いです。自分の現在の性別を深く嫌悪し、望む性別になることで精神状態も回復させようと性別移行をしていきます。
 実際、トランスジェンダーと認識している人は、一般の人と比べて精神的な疾患を67~70%も多く持っている、というデータもあります。
 ここでひとつ気づいたことがあります。それは、性別違和の人は、過去に何かしらの性に関するつらい出来事があったり、自分の容姿や、男性(女性)であることへの強い劣等感が原因で、うつ病や、その一歩手前の状態まで深く悩んだりした人が多いことです。
 人は誰でも深く悩んだりストレスを抱えたりすると、その人の体の弱い部分に症状が出るものです。それが胃腸にくる人もいれば、どこか持病が悪化する人もいます。
 それと同じように「性別への強い劣等感」の影響で、その劣等感を何とか解消する手立てとして、体が「性別の違和」という症状を出しているのではないか、と私は考えました。
(pp.161-162)

 前述したように、精神科医の方も「性同一性障害が『自称』なのか、それとも『本物』なのかの鑑別は、たとえ精神科医であっても容易ではない」と述べられています。私が実際に見聞きしただけでも、「女性が好きすぎて、女性の体になりたい人」「男性の心のまま、体を女性にして男性に愛されたい人」「自分が女性の体であることに喜びを感じる、心は男性のままの人」「ニューハーフが好きで自分もニューハーフになりたい人」「男性としてのコンプレックスを女性になることで払拭したい人」ほかにも書き切れないくらい、たくさんの人がいます。
 これらの数え切れない「自称」の人たちと「本物」の人たちの見極めは本当に困難だと思います。
 それはやはり医学的な精密検査などがあるわけではないので、どうしても「自己申告」が大きな判断材料になることがひとつ。
 また医師は一人ひとりの患者の365日を観察できるわけでも、その患者の生きてきた歴史を傍で見てきたわけでもありません。現実的に無理です。
 それくらい判断することは難しいのではないかと感じています。
(pp.213-214)

 LGBTQ+への理解の広がりと深化が、生きづらさの克服を安易に性別移行に求める風潮を促している事実は否定できない。

 とても難しい問題だ。

目次
第1章 一人の男性が女性に変わるまで
突然の告白
呆然、そして絶望 ほか
第2章 暴走する夫
夫と、私の母との対面
夫の家族へのカミングアウト ほか
第3章 私はどう乗り越えたか
自己変革する決意
再確認した絆と、現実と ほか
第4章 私が下した決断
私にとっての夫婦の生命線、「心」が崩れていた
離婚に至った些細なきっかけ ほか


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