性急に「正解」を求めたり「問題解決」をはかることなく、わからないことはわからないと諦観し、しかし事態が好転する希望を失わず、問題当事者に「共感」し「寛容」であり続けること。「ネガティブ・ケイパビリティ」、この詩人のキーツがシェイクスピアの作品群に発見した「負の力」を意味するコンセプトが、現代の臨床精神医学、教育、政治等の領域において見事に蘇る。
ソーシャルワークにおいても、この「ネガティブ・ケイパビリティ」が重要な意義をもつことは言うまでもない。つねに「唯一の正解」を求められ、かえって問題解決を困難にしてきた現代人のエートスを問い直す、とても奥の深い問題提起の書だ。
目次
第1章 キーツの「ネガティブ・ケイパビリティ」への旅
第2章 精神科医ビオンの再発見
第3章 分かりたがる脳
第4章 ネガティブ・ケイパビリティと医療
第5章 身の上相談とネガティブ・ケイパビリティ
第6章 希望する脳と伝統治療師
第7章 創造行為とネガティブ・ケイパビリティ
第8章 シェイクスピアと紫式部
第9章 教育とネガティブ・ケイパビリティ
第10章 寛容とネガティブ・ケイパビリティ
「負の力」が身につけば、人生は生きやすくなる。セラピー犬の「心くん」の分かる仕組みからマニュアルに慣れた脳の限界、現代教育で重視されるポジティブ・ケイパビリティの偏り、希望する脳とプラセボ効果との関係…教育・医療・介護の現場でも注目され、臨床40年の精神科医である著者自身も救われている「負の力」を多角的に分析した、心揺さぶられる地平。
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