また新カテゴリを増やすのもと思ったので番外編にしときます。
ちなみに「さまよえるオランダ人」はスピードラー○ングよろしく流し聴きしているのでまだ歌詞照合しつつ段階までは行っていません…が、全体の曲をなんとなく知っているより、これぞ!!というアリアをヘビロテして思いっきり入り込んだほうがよいのでしょうか?また、二枚組を買ったんですが一枚目は台詞~という感じの旋律も多いと思うんだけど二枚目はなんだかみんな激情的に歌い続けているような気がします。そんなにまでクライマックスが続くの…?とまた理解は進んでおらず。
ところで話を戻し、すっかり忘れていたけど昨年は中井英夫氏「虚無への供物」作中の年から60年でした。光文社で「中井英夫展」が開催されていたので見学し、恐らく4,5回は読んでいた同作をまた久々に読み返そう、季節も近いことだし…と読み始めたのがやっと12月。一番最初に読んだときもやはり12月頭で、その前後に中井英夫氏が亡くなっていたのを後日知りました。ご命日は12月10日金曜日で、作品冒頭にも明記されているように「虚無への供物」の物語が始まったその日と一致しているとのこと。
それで!(以下盛大にネタバレ)何度も読んでいるくせにこれほどまで自分が内容を理解していなかったのが今回やっと判明し…
1.『あなたが犯人だ』の意味がわかっていなかった
ちゃんと読もうよ。
2. 牟礼田さんが書いた小説がどこからどこまでだったのかわかっていなかった
親切にも彼の創作はこの章からこの章までって書いてあるじゃん。
3.話が壮大すぎて(長すぎて)人物関係や時間軸の描写を途中で忘れてわかっていなかった
今回日付とか、氷沼家のみなさんの年代普(明治時代から)をめもりながら読んだらようやく追いついた。
わかっていなかったために毎度新鮮に感じ何度も再読していたのではあるまいか?と思われても仕方がないくらいの無理解ぶりです。
あと多少なりともなるほど感が増したのはやはりネット上で人様の感想を読める今の状況のためもあります(読者メーターに登録しているので自分が感想を書いた本については他の方々のも拝見しています)。前回最後に読んだときは「よし、そんじゃ他の人が読んで何を思ったかググってみよう!」とすぐには思いつかなった時代でして…それでも10年くらい前でしょうか。今回「あ」と思わされたのは結構な方々が感想に「親類や知り合いが亡くなって、それを殺人事件だと決めつけて殺害方法を推理しあう探偵役たちの神経が理解できない」と書いていたことでした。これ今まであんまり思わなかったことに結構驚愕。最後に蒼司さんがあんなに言ってるのに、と自分もどこまでも傍観者立場であったことにとうとう気づいたのでした。
トリックとかはひとまず置いておいて、昭和モダンな雰囲気はやはり好きです。横溝正史みたいなジャパニーズ伝奇的も好きですが、贅沢は素敵だ。
というわけでミステリっぽさよりも世相やらの描写について感想が多い。戸惑うのはこれ戦後10年の話だよね、ということです。まあつまり上流?階級の人々なのかと。深く考えたことはなかったが、風呂付のおうちは当時そんなにメジャーじゃなかったんじゃ?洗濯機もあるよ。
久生の服装のサレオツさも評判高いと思いますが何しろお父様はもと宮内庁と後々描写がありますし、牟礼田さんもパリ勤務…でもあの時代かと思うとどんだけだと思います。亜利夫は親が何とか商会という染料屋をやってて、自分は日本橋で貿易商社勤務。蒼司さんは物語冒頭から最後まで半年あまり、大学院を辞めて以来働いていないのだった(一応心労のため)(27歳)。藍ちゃんは実家の商売を雇人がうまく回しているので、ご両親は事故で無くしているけど財政状態は問題ないらしい。
実際の日付・曜日が記され、現実の事故や事件の描写が多いです。それも話の本筋に関係させてくるからで、本題にとても説得力を持たせる効果があるんだけどどうしても虚実が混ざってきてまさしくワンダランドに入り込みそうな勢いです。
手元の幻想文学「中井英夫スペシャル 虚無に捧ぐる」で久生のモデルだと中井氏に実際に言われたそうな尾崎左永子さんは久生の服装についてのアドバイザーですが(「あんな間の抜けた女性というのはないじゃない」と仰っております)によると「あのなかに老人が死ぬ三面記事が出てくるじゃない。たしかあれ、本物の新聞記事を使ってるのよね。あれを見つけたときに言ったのも覚えてるわね。そういうのがパッと目に入ってくる、それがバシッとはまっちゃうんだって」
中井氏インタビューでも、「昭和三十年からの現実の出来事と、あらかじめ考えていた氷沼家の物語が見事な一致を見せたことは自分でも不思議」だったらしい。たとえはよくないけど某書「思考は現実化する」みたいな感じに思えます。
日付めもりつつ読んでいたらやはり氷沼家崩壊の過程が見えて寂しいんだけど、亜利夫が目白の氷沼邸を割と頻繁に訪れているのでこいつ厚かましいな笑 と思わないでもないです。しかし大きな不幸があったあとで、長年疎遠だった後輩の蒼司を慰めるという大義名分がありますが亜利夫の結構ダイレクトな蒼司への憧憬っていうか慕情はわかりやすい。(作者の嗜好を考えても)そして蒼司もそれを逆に利用していたというのがラスト、なんともアリョーシャかわいそう!!となる理由なんですが、牟礼田さんに最後パリへかっさわられるのが哀れ度MAXでした。
しかしあれだけ亜利夫、が頻繁に氷沼邸に行けたのも単純に家が近いからでしょうかね…千葉県民は羨ましいです。あの当時の地理描写もとても興味深いのですが、今回はiPhoneのマップまで使って電車の駅とかタクシー乗ってるときにこの橋を渡り とかの部分を調べてしまった。目赤不動もやっぱりあるんだ!!と嬉しくなりました。
氷沼邸一階見取り図。
「中井英夫スペシャル」にありましたが本作だけの一階描写じゃ限界だ…という自分にとってはとても貴重で役に立ちました。
ここでこういうエピソードがあった!というがっつり聖地があれば「虚無への供物」詣でをするところ、一番のスポットと言えば氷沼邸になるのでしょうか…。 むしろTwitterで見たホビット庄のビルボ・バギンス邸よろしくドールハウスでも作りたいところが間取りはいいけど外観が分からんですね氷沼邸。そしてNHKのドラマも円盤化はしてないらしく、ドラマなら邸描写もあったろうけど亜利夫の存在がカットされていたので(感想によると、『探偵役が一人減ったのでわかりやすくなった』らしい)それはだめだろ!!と私は当時放送見なかったんでありました。本作でも全編にわたってないがしろにされていた亜利夫がついに!といたたまれなかったわけですが今なら観たい。たまに再放送しているらしいけど今年は節目だからまた放映してくれるでしょうか。
蛇足ながら初詣は地元の、彰義隊が逃走中に立ち寄った伝があるお寺に行き→浅草が地元の友達が「浅草寺は凄すぎると思うから神田明神に行きたい」というので!!
神田明神て秋葉原で、ラブ○イブというアイドルを育てるでゲームの聖地ということで痛車はいるしそれっぽい人らはずっと行列(ちゃんと並ぶ)のなかでゲームの話をしているし、神社まで続く急激な階段をやたらシャッターに収めている人が多い!と後で調べたらそれもちゃんと劇中に登場するスポットだった。これぞ町興し。しかも明らかにラブ○イブ詣でで来てる人も楽しそう。というわけでこれは所縁の土地なんだよ~って思える場所があったら少なくとも自分は嬉しかった!と思ってしまった。とりもなおさずオペラ興味なかったときでも一応バイロイト劇場見学ツアー行ってしまった自分のような人もいるからには!