端と底を行き来するRPG

そのとき、きっと誰かの中心blog。
アーカイブにある作品は人事を尽くした盛者必衰の入れ替え制。

決定的な出来事5

2007-05-16 10:15:39 | ポケモン系
「わー!!」
「うわっ・・・!」

チェットが身を少し屈めて、相手目がけて突っ込んでいった。
あまりの衝撃に声が出た相手に対し。

「ふっ!」

すかさず炎が降ってくる。
たまらず、後ろへ下がったところへ再びタックル。
周りにいた他の連中が、やっと我に帰る頃。
ザングスも動いた。

「やりすぎだろ!? いい加減にしやがれ!」
「わっ!」

踏み込んだ位置は確かに遠いのに、振りかぶった攻撃が届いた。
腕のリーチが明らかに長いのだ。
慌てて避けたデューイだったが、ザングスに睨み付けられ動きが止まってしまった。
そのときを逃さず、取り巻きが打撃を加える。
体を抑えられて、リンチ状態だ。

「デューイ!!」
「にゃろっ!」

がぶっ。

「い、いってぇーーーー!!!!!!!」

相手の腕に噛み付いて、デューイは攻撃網から抜け出す。
二人はザングス一派から距離を置いて立った。
ザングスと視線を切り結ぶ。
緊迫した雰囲気の中、どちらが先に動くか、探り合う。
ふと、チェットは気付くことがあった。
足元を確かめ、前を見据える。
ザングスが叫ぶ。

「もう我慢しねぇぞ!! 俺はいく!!」
「ご勝手に」

すると、腰に差していた剣の柄に手をかけた。
飾りだろうと思っていたが、どうやら違うらしい。
デューイの足がすくむ。
剣を抜ききると、ザングスは構えた。
足はしっかりと地面を踏みしめ、鍔なりをさせて、デューイを狙っていた。
風が・・・吹いた・・・!!

「でんこうせっか!!」
    「今だ!!!」
「!!?」

チェットが待っていたかのように、地面の砂を蹴り上げた。
距離をあの瞬間でだいぶ詰めていたザングスは目に直撃した。
驚いたのは相手側だ。
突然ザングスが倒れたように見えたに違いなかった。
チェットはデューイの腕を引っ張って。
逃げていく。

「せこいぞ、こらぁ!!!!」
「戦略って言ってよねー!!」

ザングスの悲鳴にも近い声に対し、チェットはすかさず応対した。
ハイになっているようだ。
二人が見えなくなると、諦めたようにザングスは瞬きを繰り返す。

「いってぇ。なぁ、今どうなってる?」
「兎みたいに目が真っ赤ですよ、と言いたいところですが。
 あなたは常に真っ赤ですから、いつもと変わりませんよ」
「お前は?どう思う!?」

違うメンバーに訊くと、姿勢を改めて。
力強く質問に答えた。

「いつもと同じで、真っ赤です!」
「なんだよ、もう!」
「ところで、最後のはなんです?
 『でんこうせっか』をやるなら、間合いを詰める必要はなかったでしょう?」

でんこうせっか は、遠方から攻撃できるのが売りだ。
間合いをつめては意味がない。

「うっせ、まだ腕が未熟だから確実にいこうとしたんだよ」
「そうですか、賢明ですね」
「・・・っ!!」

地面に座り込んだ状態でも、彼が振りかぶると拳は目線のところまで届いた。
長い手は彼の武器のひとつであった。
加えて、得物を持っているのだから、リーチの差で間合いは制していたはず。
それを逆転させてしまうとは。
『すなかけ』とは言え、大した度胸を持った”策士”だ。

「あなたが無事でよかったですよ、ザングス」
「・・・帰ろうぜ、おやつの時間だからな」


走って走って、森の出口まで二人は来ていた。
さっきの勢いはどこへやら、チェットは怯えきっていた。
キレたら怖い性格だったのか。
そんなことを思いながら、デューイは息の上がりきったチェットを気遣っていた。
汗だくになって、でも、気分は妙にすっきりしていた。

「なんだ、最後のあれ。
 『すなかけ』って、カッコワルゥ・・・」
「逃げられたんだから、いいだろ!」
「まぁね」

ははは、と小さく笑って。
二人は家に帰っていった。


                             後日談へつづく!

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