端と底を行き来するRPG

そのとき、きっと誰かの中心blog。
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決定的な出来事4

2007-05-09 16:57:00 | ポケモン系
森の中で恐怖と対峙する。
浅くなる呼吸、高鳴る鼓動、噴出す汗。
沈黙を真っ先に破ったのは、ザングスの怒号だった。

「くらぁ!! 順番守れよぅ、もう!」
「この場合、順番も何もないと思いますよ」

チェットは両手を広げて動かない。
地面にうつぶせの状態で倒れこんでいるデューイを庇っているつもりなのだろう。
しかしその足は震えていて、「動けない」の間違いではと錯覚する。
デューイは倒れたまま、チェットに聞こえるだけの声量で言った。

「何しにきたんだ・・・、最低野郎」
「何って・・・」
「せっかく・・・、一人でカタつけるようにしたのに無駄にしやがって」
「何だよ、それ」

チェットの声が、冷たく沈んだ。
反射的にゾクッとして、二の句が告げない。
チェットの震えは治まっている。

「何、かっこつけてんだよ。
 10歳が年上に勝てるわけないだろ、この無謀野郎」
「あんだと!」

デューイはかぁっとなって、勢いよく立ち上がった。
目の前にチェットを捕らえ、視線を切り結ぶ。
一瞬のうちにガッ、っと胸倉をつかんで締め上げたのは。

「デューイ、君は間違ってる。
 一人で何でもやるのは、よくないことだ。
 特に今回のような揉め事のときは、ね」
「あ?」
苦しげにデューイは返事をするしかない。
これでは、さっきと大して状況は変わらない。

「何で、”一人”で片付けようとしたんだ!?」
「お前の手に負える争いじゃない」
「デューイにだって無理だろ!」

真剣な目が、お互いを見つめる。
胸倉をつかんだ手が小刻みに震えだした。
チェットが泣いているのだ。
恐怖ではなく、悔しさで。

「そんなに頼りにならないか。
 そんなに僕は君に失望させたのか」
「チェット?」

ひと月前、ザングス一派に怯えて、チビどもをおいて逃げようとした。
デューイに殴られて、ひと月、ようやく分かったことがある。
自分は、弱虫なのだ。
だから、争いから逃れるために多少口が巧くなった。
知識を蓄えるために、本を読んだし勉強もした。
そんな自分を周りは「ネクラ」「がり勉くん」と遊び相手に加えてくれなかった。
寂しさを紛らわすために、ひたすらひたすら本を読み。
また仲間に入れてもらえず、の繰り返し。
そのときに、手を差し伸べてくれたのはデューイだった。
デューイがいなかったら、僕は笑っていない。
”今”、ここにいない。

「もう・・・、いいよ。
 チェットはこうして来てくれた」
デューイの言葉に、チェットの顔が少し柔らかくなった。
と、同時に、足の震えが戻ってきた。
体全体が振るえ、つかまれた首がギリギリ絞まる。

「デュ、デューイ・・・。
 僕、今、”素”に戻っちゃって、その、怖くて仕方ないんだ。
 掛け声くれない?」
「じゃあ、手、放せ」
「あ、悪い」

やっと外れた首を、ぐりぐりとまわしてまわすと。
チェットの隣に並び、小声でぼそぼそと打ち合わせ。
ザングスたちは、完全に、クールダウンしている。
お、くるか?と少し構える程度で、動きを見せない。
よし、と言うのを合図に叫ぶ。

「”一人”で逃げるな!」
「”一人”で闘うな! やるなら!」

「「一緒に!!」」

さぁ、反撃だ。

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