森の中で恐怖と対峙する。
浅くなる呼吸、高鳴る鼓動、噴出す汗。
沈黙を真っ先に破ったのは、ザングスの怒号だった。
「くらぁ!! 順番守れよぅ、もう!」
「この場合、順番も何もないと思いますよ」
チェットは両手を広げて動かない。
地面にうつぶせの状態で倒れこんでいるデューイを庇っているつもりなのだろう。
しかしその足は震えていて、「動けない」の間違いではと錯覚する。
デューイは倒れたまま、チェットに聞こえるだけの声量で言った。
「何しにきたんだ・・・、最低野郎」
「何って・・・」
「せっかく・・・、一人でカタつけるようにしたのに無駄にしやがって」
「何だよ、それ」
チェットの声が、冷たく沈んだ。
反射的にゾクッとして、二の句が告げない。
チェットの震えは治まっている。
「何、かっこつけてんだよ。
10歳が年上に勝てるわけないだろ、この無謀野郎」
「あんだと!」
デューイはかぁっとなって、勢いよく立ち上がった。
目の前にチェットを捕らえ、視線を切り結ぶ。
一瞬のうちにガッ、っと胸倉をつかんで締め上げたのは。
「デューイ、君は間違ってる。
一人で何でもやるのは、よくないことだ。
特に今回のような揉め事のときは、ね」
「あ?」
苦しげにデューイは返事をするしかない。
これでは、さっきと大して状況は変わらない。
「何で、”一人”で片付けようとしたんだ!?」
「お前の手に負える争いじゃない」
「デューイにだって無理だろ!」
真剣な目が、お互いを見つめる。
胸倉をつかんだ手が小刻みに震えだした。
チェットが泣いているのだ。
恐怖ではなく、悔しさで。
「そんなに頼りにならないか。
そんなに僕は君に失望させたのか」
「チェット?」
ひと月前、ザングス一派に怯えて、チビどもをおいて逃げようとした。
デューイに殴られて、ひと月、ようやく分かったことがある。
自分は、弱虫なのだ。
だから、争いから逃れるために多少口が巧くなった。
知識を蓄えるために、本を読んだし勉強もした。
そんな自分を周りは「ネクラ」「がり勉くん」と遊び相手に加えてくれなかった。
寂しさを紛らわすために、ひたすらひたすら本を読み。
また仲間に入れてもらえず、の繰り返し。
そのときに、手を差し伸べてくれたのはデューイだった。
デューイがいなかったら、僕は笑っていない。
”今”、ここにいない。
「もう・・・、いいよ。
チェットはこうして来てくれた」
デューイの言葉に、チェットの顔が少し柔らかくなった。
と、同時に、足の震えが戻ってきた。
体全体が振るえ、つかまれた首がギリギリ絞まる。
「デュ、デューイ・・・。
僕、今、”素”に戻っちゃって、その、怖くて仕方ないんだ。
掛け声くれない?」
「じゃあ、手、放せ」
「あ、悪い」
やっと外れた首を、ぐりぐりとまわしてまわすと。
チェットの隣に並び、小声でぼそぼそと打ち合わせ。
ザングスたちは、完全に、クールダウンしている。
お、くるか?と少し構える程度で、動きを見せない。
よし、と言うのを合図に叫ぶ。
「”一人”で逃げるな!」
「”一人”で闘うな! やるなら!」
「「一緒に!!」」
さぁ、反撃だ。
浅くなる呼吸、高鳴る鼓動、噴出す汗。
沈黙を真っ先に破ったのは、ザングスの怒号だった。
「くらぁ!! 順番守れよぅ、もう!」
「この場合、順番も何もないと思いますよ」
チェットは両手を広げて動かない。
地面にうつぶせの状態で倒れこんでいるデューイを庇っているつもりなのだろう。
しかしその足は震えていて、「動けない」の間違いではと錯覚する。
デューイは倒れたまま、チェットに聞こえるだけの声量で言った。
「何しにきたんだ・・・、最低野郎」
「何って・・・」
「せっかく・・・、一人でカタつけるようにしたのに無駄にしやがって」
「何だよ、それ」
チェットの声が、冷たく沈んだ。
反射的にゾクッとして、二の句が告げない。
チェットの震えは治まっている。
「何、かっこつけてんだよ。
10歳が年上に勝てるわけないだろ、この無謀野郎」
「あんだと!」
デューイはかぁっとなって、勢いよく立ち上がった。
目の前にチェットを捕らえ、視線を切り結ぶ。
一瞬のうちにガッ、っと胸倉をつかんで締め上げたのは。
「デューイ、君は間違ってる。
一人で何でもやるのは、よくないことだ。
特に今回のような揉め事のときは、ね」
「あ?」
苦しげにデューイは返事をするしかない。
これでは、さっきと大して状況は変わらない。
「何で、”一人”で片付けようとしたんだ!?」
「お前の手に負える争いじゃない」
「デューイにだって無理だろ!」
真剣な目が、お互いを見つめる。
胸倉をつかんだ手が小刻みに震えだした。
チェットが泣いているのだ。
恐怖ではなく、悔しさで。
「そんなに頼りにならないか。
そんなに僕は君に失望させたのか」
「チェット?」
ひと月前、ザングス一派に怯えて、チビどもをおいて逃げようとした。
デューイに殴られて、ひと月、ようやく分かったことがある。
自分は、弱虫なのだ。
だから、争いから逃れるために多少口が巧くなった。
知識を蓄えるために、本を読んだし勉強もした。
そんな自分を周りは「ネクラ」「がり勉くん」と遊び相手に加えてくれなかった。
寂しさを紛らわすために、ひたすらひたすら本を読み。
また仲間に入れてもらえず、の繰り返し。
そのときに、手を差し伸べてくれたのはデューイだった。
デューイがいなかったら、僕は笑っていない。
”今”、ここにいない。
「もう・・・、いいよ。
チェットはこうして来てくれた」
デューイの言葉に、チェットの顔が少し柔らかくなった。
と、同時に、足の震えが戻ってきた。
体全体が振るえ、つかまれた首がギリギリ絞まる。
「デュ、デューイ・・・。
僕、今、”素”に戻っちゃって、その、怖くて仕方ないんだ。
掛け声くれない?」
「じゃあ、手、放せ」
「あ、悪い」
やっと外れた首を、ぐりぐりとまわしてまわすと。
チェットの隣に並び、小声でぼそぼそと打ち合わせ。
ザングスたちは、完全に、クールダウンしている。
お、くるか?と少し構える程度で、動きを見せない。
よし、と言うのを合図に叫ぶ。
「”一人”で逃げるな!」
「”一人”で闘うな! やるなら!」
「「一緒に!!」」
さぁ、反撃だ。
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