「はろうぃん?」
「そっ。 菓子をもらいまくる日がハロウィン!
ちょうどこの時期にやるんだ」
「へぇ…」
「決まり文句は『トリックオアトリート』。
お菓子くれなかったら悪戯していいんだぞ」
「へぇ」
「みんな仮装してさ、去年なんか誰かさんが仮装に気合入れすぎて、
誰が誰だかわかんねぇの」
そこまで聞いて、パッとこちらを向く。
う、そんな輝いた目で見ないで。
その願いもむなしく、輝いた眼のままこちらに近づいてくると。
「アニス、僕もやりたい!」
言うと思った。
ルーク以外の誰もが想像通りの展開に頭を痛めた。
「わーははは。 お菓子をくれなきゃ悪戯するぞー」
フローリアンは、いつかの劇で使った「悪魔」の仮装をしている。
「お菓子」と聞いてこれしか思い浮かばなかったらしい。
まぁ、要求するものが同じだしいいんだろう。
その「悪魔」が最終的には「チーグル」に繋がろうと。
「はいはい、お菓子ですよー」
前もってお菓子を支給されていた教会の兵士は余裕でかわす。
ニコニコとお菓子を受け取ると、まっすぐにアニスの元へ。
「もらったよー」
「うん、よかったね」
「あ、『とりっくおあとりーと』!」
まだ声をかけていない兵士を見つけて、フローリアンは駆け出す。
転ばなければいい、と心配しながらも内心ため息だった。
「言いだしっぺはどこに行ったわけぇ!!??」
「さぁてね、街に回収しに行ってるんじゃないか?
ハロウィンとかくれんぼは天才的だからな、ルークは。
回収率が異様にいいんだよ、これが」
「知ってか知らずか、乙女心をくすぐる求め方をなさいますからね…」
「どんな?」
「元気にトッリクオアトリートと言って、お菓子をもらうと『えへへ』と笑うのですわ…」
「うわ、天然ですか」
「みんなルークに甘いだけよ」
「やられてごらんよ、あげたくなるから」
一時間後。
ようやくルークが教会に戻ってきた。
アニスがほえる。
「おっそーい!!」
「一時間だけだろ」
「今年は参拝者相手に巻き上げてきたのか?」
「巻き上げてねぇよ!」
「あら? 今年はもらえていませんのね」
「ん? そういや、それだけか?」
ルークの手には数個のグミ。
「天才的」な手腕を誇る彼にしては、あまりにもお粗末な個数だ。
しかも街にまで出ているのに。
「腕が鈍ったんじゃないの~」と茶化すアニスに対し。
彼は何も言わなかった。
その夜。
フローリアンと夕食を共にして、そろそろお開きという頃。
アニスの耳に兵士が話しているのが聞こえてきた。
人間なのだから、話すのは当然なのだがその内容が聞き捨てならなかった。
「大佐の仮装見たか?」
「大佐って、カーティス大佐のことか?」
あの大佐が仮装?
そういえば、ルークと一緒にいなくなってたな。
見逃してしまったのは悔しいが、何としてでも仕入れておきたい情報だ。
「あの人、ドラキュラの格好してたんだ」
「マジで?何でよ?」
「それがな」
息を呑む。
「アニス?」
「はうわっ!!」
「そ、そんなに驚かなくても…。
そろそろ宿に帰りましょう」
「う、うん」
肝心なところが聞けなかったよぅ。
ティアのあとを付いていきながら、アニスは頭を抱えていた。
気になってしょうがない。
大佐が仮装した理由。
あの兵士を明日にでも締め上げて聞くしかないか。
翌朝。
意外な形で、大佐の仮装理由が知れる。
「あぁ、あなたは昨日の!」
中年のおばさんが大佐を見て、悲鳴を上げた。
かすかに「しまった…」と顔に出たのを見逃さずアニスが聞く。
「昨日って? 昨日、何があったんですか?」
「いえね」
おばさんの話はこうである。
自分は子供と一緒にダアトまで避難してきた。
家庭の問題で、今、家に帰れないのだという。
他にも同じような事情で逃げてきた人たちとグループになったのだが。
遊び盛りの子供たちだ。
ダアトの街を走り回り、収拾が付かなくなってしまった。
そんなときに、ルークが現れた。
話を聞いたルークは、お茶を飲んでいた大佐を捕まえて仮装をさせた。
そして、「ハッピーハロウィーン!!」と叫び。
「ドラキュラ」を見つけた子供たちが寄ってくると。
持っていたたくさんのお菓子を分け与えながら、遊んでくれたのだという。
「ありがとうございました。あんなに笑っているのを見たのは久しぶりで」
「いえいえ、私は立っていただけですから」
礼をひとしきりすると、おばさんは教会に向かって歩いていく。
ダラダラと汗をかく青年一人を取り残して。
「さて。 こうしてバレてしまったわけですが?」
「お、俺の責任か!?」
「『みんなにはバレないようにするから!』という言葉は嘘だったんですか?」
「だ、でっ!」
「いけませんねぇ、罰として、ティアにお菓子をおねだりしてみてください」
「はぁっ!!?」
なんとも電波な罰ゲームだが、正直見てみたい。
ガイとナタリアが口をそろえて「あげたくなる」という。
えぇ!?とティアも耳まで真っ赤だ。
そりゃあね。
「あ、もちろん、今ここで」
「ここでっ!?」
「はい☆」
いい笑顔で反論を許さない。
はちゃあ、でも、ワクワクするよぅ!
「ティア!」
「は、はいっ!」
「トリックオアトリート?」
「グ、グミ…でよければ」
「それで十分。 あんがと」
ニコリ。
ティアがますます耳を赤くする。
ナタリアなんか、はぁ、と言いながらルークの頭をなでてるし。
ガイも何だかうなずいてる。
何?なんなわけ?
大佐が近寄ってきて、耳打ち。
「フローリアンに置き換えたら気持ち分かるんじゃないですか?」
あぁ、フローリアンがコレ覚えてなくてよかった…。
***********************
長すぎてごめんなさい。
ここまで読んでくださってる人、いたら、本当にありがとうございます。
さて、どこを削ったもんやら。
ルークは後ろを気をつけたほうがいい。
ナデナデしてもらったことがない鶏冠があなたを襲いにくるかも。
「そっ。 菓子をもらいまくる日がハロウィン!
ちょうどこの時期にやるんだ」
「へぇ…」
「決まり文句は『トリックオアトリート』。
お菓子くれなかったら悪戯していいんだぞ」
「へぇ」
「みんな仮装してさ、去年なんか誰かさんが仮装に気合入れすぎて、
誰が誰だかわかんねぇの」
そこまで聞いて、パッとこちらを向く。
う、そんな輝いた目で見ないで。
その願いもむなしく、輝いた眼のままこちらに近づいてくると。
「アニス、僕もやりたい!」
言うと思った。
ルーク以外の誰もが想像通りの展開に頭を痛めた。
「わーははは。 お菓子をくれなきゃ悪戯するぞー」
フローリアンは、いつかの劇で使った「悪魔」の仮装をしている。
「お菓子」と聞いてこれしか思い浮かばなかったらしい。
まぁ、要求するものが同じだしいいんだろう。
その「悪魔」が最終的には「チーグル」に繋がろうと。
「はいはい、お菓子ですよー」
前もってお菓子を支給されていた教会の兵士は余裕でかわす。
ニコニコとお菓子を受け取ると、まっすぐにアニスの元へ。
「もらったよー」
「うん、よかったね」
「あ、『とりっくおあとりーと』!」
まだ声をかけていない兵士を見つけて、フローリアンは駆け出す。
転ばなければいい、と心配しながらも内心ため息だった。
「言いだしっぺはどこに行ったわけぇ!!??」
「さぁてね、街に回収しに行ってるんじゃないか?
ハロウィンとかくれんぼは天才的だからな、ルークは。
回収率が異様にいいんだよ、これが」
「知ってか知らずか、乙女心をくすぐる求め方をなさいますからね…」
「どんな?」
「元気にトッリクオアトリートと言って、お菓子をもらうと『えへへ』と笑うのですわ…」
「うわ、天然ですか」
「みんなルークに甘いだけよ」
「やられてごらんよ、あげたくなるから」
一時間後。
ようやくルークが教会に戻ってきた。
アニスがほえる。
「おっそーい!!」
「一時間だけだろ」
「今年は参拝者相手に巻き上げてきたのか?」
「巻き上げてねぇよ!」
「あら? 今年はもらえていませんのね」
「ん? そういや、それだけか?」
ルークの手には数個のグミ。
「天才的」な手腕を誇る彼にしては、あまりにもお粗末な個数だ。
しかも街にまで出ているのに。
「腕が鈍ったんじゃないの~」と茶化すアニスに対し。
彼は何も言わなかった。
その夜。
フローリアンと夕食を共にして、そろそろお開きという頃。
アニスの耳に兵士が話しているのが聞こえてきた。
人間なのだから、話すのは当然なのだがその内容が聞き捨てならなかった。
「大佐の仮装見たか?」
「大佐って、カーティス大佐のことか?」
あの大佐が仮装?
そういえば、ルークと一緒にいなくなってたな。
見逃してしまったのは悔しいが、何としてでも仕入れておきたい情報だ。
「あの人、ドラキュラの格好してたんだ」
「マジで?何でよ?」
「それがな」
息を呑む。
「アニス?」
「はうわっ!!」
「そ、そんなに驚かなくても…。
そろそろ宿に帰りましょう」
「う、うん」
肝心なところが聞けなかったよぅ。
ティアのあとを付いていきながら、アニスは頭を抱えていた。
気になってしょうがない。
大佐が仮装した理由。
あの兵士を明日にでも締め上げて聞くしかないか。
翌朝。
意外な形で、大佐の仮装理由が知れる。
「あぁ、あなたは昨日の!」
中年のおばさんが大佐を見て、悲鳴を上げた。
かすかに「しまった…」と顔に出たのを見逃さずアニスが聞く。
「昨日って? 昨日、何があったんですか?」
「いえね」
おばさんの話はこうである。
自分は子供と一緒にダアトまで避難してきた。
家庭の問題で、今、家に帰れないのだという。
他にも同じような事情で逃げてきた人たちとグループになったのだが。
遊び盛りの子供たちだ。
ダアトの街を走り回り、収拾が付かなくなってしまった。
そんなときに、ルークが現れた。
話を聞いたルークは、お茶を飲んでいた大佐を捕まえて仮装をさせた。
そして、「ハッピーハロウィーン!!」と叫び。
「ドラキュラ」を見つけた子供たちが寄ってくると。
持っていたたくさんのお菓子を分け与えながら、遊んでくれたのだという。
「ありがとうございました。あんなに笑っているのを見たのは久しぶりで」
「いえいえ、私は立っていただけですから」
礼をひとしきりすると、おばさんは教会に向かって歩いていく。
ダラダラと汗をかく青年一人を取り残して。
「さて。 こうしてバレてしまったわけですが?」
「お、俺の責任か!?」
「『みんなにはバレないようにするから!』という言葉は嘘だったんですか?」
「だ、でっ!」
「いけませんねぇ、罰として、ティアにお菓子をおねだりしてみてください」
「はぁっ!!?」
なんとも電波な罰ゲームだが、正直見てみたい。
ガイとナタリアが口をそろえて「あげたくなる」という。
えぇ!?とティアも耳まで真っ赤だ。
そりゃあね。
「あ、もちろん、今ここで」
「ここでっ!?」
「はい☆」
いい笑顔で反論を許さない。
はちゃあ、でも、ワクワクするよぅ!
「ティア!」
「は、はいっ!」
「トリックオアトリート?」
「グ、グミ…でよければ」
「それで十分。 あんがと」
ニコリ。
ティアがますます耳を赤くする。
ナタリアなんか、はぁ、と言いながらルークの頭をなでてるし。
ガイも何だかうなずいてる。
何?なんなわけ?
大佐が近寄ってきて、耳打ち。
「フローリアンに置き換えたら気持ち分かるんじゃないですか?」
あぁ、フローリアンがコレ覚えてなくてよかった…。
***********************
長すぎてごめんなさい。
ここまで読んでくださってる人、いたら、本当にありがとうございます。
さて、どこを削ったもんやら。
ルークは後ろを気をつけたほうがいい。
ナデナデしてもらったことがない鶏冠があなたを襲いにくるかも。
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