端と底を行き来するRPG

そのとき、きっと誰かの中心blog。
アーカイブにある作品は人事を尽くした盛者必衰の入れ替え制。

ソプラノの子守唄

2007-10-26 20:05:27 | 矛盾している10のお題
眠れなかった。
すごく疲れているはずなのに。
寝なければいけないのに。
眠れなかった。

寝るのを諦めて、仕方なしに眼を開く。
日は昇らず、ただ月明かりだけが唯一の灯。
初めてではない野宿に、まさかうろたえているわけでもない。
こうして旅をする以前ならば断固拒否だったが、今は至って普通だ。
ベッドであることにこしたことはないが、文句は一切言わない。
ないものは仕方ない、こう考えられるようになったのは大きな進歩である。
なら、なんで眠れないのだろう。
理由を探っても、さっぱり分からない。
身を起こして、周りを見回す。
異常なし。
モンスターはおろか、盗賊などの類の影はない。
人数確認をしてみる。
…2,3,4
あれ?二人いない?
腰を浮かす。
いないのは…、誰だ…?


「ティア!」
「ルーク? どうしたの?」
「ああ、よかった! なぁ、あと一人知らないか!?」
「え? なに?」
「キャンプしてるところに4人しかいなかったんだ!
 ティアと…あと誰がいなかったんだろう。
 わかんないけど、探してるんだ!」
「落ち着いて。 誰がいたの?」
「ガイとナタリアとジェイドとアニス…だな」
「……自分、数えた?」
「あ…」
「お疲れ様」
「どうも…」


「どうしてここに? って、聞いていいかな?」
「眠れなくて、星を見ながら歌を歌っていたの」
「歌を?」
「気持ちが落ち着くから」
「ふ~ん」


「あなたはどうしたの?」
「俺も眠れなくてさぁ…、なんだろうなぁ」
「…悩み事とかある?」
「……ないって言ったら嘘だろ?」
「そうね、愚問だったわ」
「それってさぁ、眠れない理由になる?」
「十分すぎる理由よ。
 そうね、これぐらい静かな夜だと余計かしら?」
「なんで?」
「……歌ってあげるわ」
「え?」
「休みましょう、私も休みたいから」
「あぁ…、うん」

闇夜に歌が響く。
子守唄にしてはちょっと声が高くて。
冷たい印象を受けるけれど、心地よい暖かい歌。
ルークはあっさりと眠りに落ちた。

静かな夜は考えなくていいことまで考えてしまう。
悪い結論ばかりが見えてしまう。
だから、夜は怖い。
だから、寝かせてあげたい。

「おやすみなさい、ルーク」

どうか夢の中では、彼が悩み苦しむことがありませんよう…。

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よくあります。
自分を数えないで、数が足りないとパニックになることが。
そのあとえらくホッとするんですな。

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