端と底を行き来するRPG

そのとき、きっと誰かの中心blog。
アーカイブにある作品は人事を尽くした盛者必衰の入れ替え制。

MISA

2013-03-03 00:00:00 | 黒子のバスケ
日曜日。
ミサの終わりに女の子の小さな手から。
小さな袋をもらった。
しんぷさま、あのねと恥ずかしそうに。
今日が何の日であるかを告げた。

Ace Of Vampire

「おかえり~」
「何をしていた?」
「昼飯作ってた、緑間の分もあるよ」
「ほう」

マントを脱ぎながら、辺りを見回す。
自分が3時間ばかり留守をしただけでこの散らかりよう。
こいつは一体何をしているのだろうか。
それでも昼飯があるのは有り難い。
自分が作るとなると必ず『ポトフ』になる。
ポトフと言えば、聞こえはいいが。
材料をぶつ切りにして煮込んだだけの代物である。
味はそこそこ。
可もなく不可もなく、らしい。
『ダンピール』の自分はともかく。
高尾は純粋な吸血鬼であるからこういった食事は必要としない。
食べても問題はないが、栄養にならないそうだ。
それなのに、食事を用意したということは。

(相当、愛されてるな俺は)

にやける顔を抑えながら。
いただきます、と手を合わせる。
どうぞ、と言う高尾は俺の正面に座って。
にこにこと頬杖をつく。
そして、最近恒例の謎かけをしてくる。

「今日は何の日だ?」
「……ひな祭りだな」

食事の手は止めず、高尾の様子を窺う。
目をキラキラさせてこっちを見ている。

(あ…)

「何を期待しているか、おそらく分かった」
「マジで?」
「ああ、さっきもらったのだよ」

席を立って、脱いだマントを探る。
ミサの終わり際、女の子が渡してきた小袋。
彼女が帰った後に、中を改めると。

「ほら、ひなあられだ」
「おお!これがそうかぁ!」

跳ね上がらんがばかりの興奮をしてみせる。
ひどく子供臭いときと。
艶めかしく色気が滲むときと。
こいつの本性はどちらなのだろうと毎回思う。

「食べてもいい?」
「甘いぞ?」

手のひらにひなあられを出してやる。
高尾はひと粒だけ口に含んで。

「甘いな」
「まぁ、ひなあられだからな」
「でも美味しい」
「それは結構なのだよ」

席に戻って、食事を再開。
コーヒーを啜っていると再び目の前に高尾。
今度は何だ?

「ひなあられが甘いのは分かったんだけどさ」
「ああ」
「緑間の血とどっちが甘いかな」
「……結局それか?」
「それだ」

へらっと笑われてしまうとこちらも弱い。
惚れた弱みか、契約の上か。
呆れつつも望みを叶えてやりたくなる。

「『人間食』を食べたからな。食後30分は待つのだよ」
「う…、了解」

30分後に『デザート』をどうぞ。

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3/3です、ミサの日、耳の日、散々な日。
いいえ、ひな祭りです。

高尾は付き合いで人間食を食べているだけで。
栄養にはなっていないと思われる。
作るのは好きなんだろう。

緑間だってお勤めしますよ。
日曜日は必ずミサに出席します。
聖歌隊の伴奏をやっていた時期もありました。
今は武闘派神父として活躍しているので、たぶん、やってない。

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