端と底を行き来するRPG

そのとき、きっと誰かの中心blog。
アーカイブにある作品は人事を尽くした盛者必衰の入れ替え制。

敵味方の線引き

2015-06-20 14:30:00 | 黒子のバスケ
「ここに屯するな!さっさと散るのだよ!」

声が響いたと思った次の瞬間には、弓矢が飛んできて。
それが『破魔矢』である認識し、離れなければ撃たれると。
その場にいた吸血鬼、狼男たちは素早く理解する。
当たれば大火傷、しかも傷は塞がらない。
射たのがあの、神に愛されていると噂の『緑髪』ならなおさらだ。

「緑間、かっこええなぁ」
「今吉!仕事をするのだよ!!」
「したした、もう、俺はお役御免や」

屋上から今吉が茶化し、緑間も大声で応答する。
そのやり取りをじっと見ている人物がいた。
下に降りてきた黒子が近付いてきて、肩を叩く。

「行きますよ」
「……ああ」
「高尾くん、なんて顔してるんですか」
「あ?どういう顔してる?」
「今にも殺しそうな目してますよ」
「……殺したいと思ってるし」

緑間とは情を交わした間柄である。
邪魔だと言われても。
金輪際近付くな、と言われても。
好きであることに何の変わりもなかった。
しかも納得のいく説明もなく一方的に向こうから言ってきただけだ。
とてもではないが、割り切れるものではないし。
目の前で自分以外の存在とやり取りするのは面白くない。
高尾はまさに殺してやりたい衝動に駆られていた。

Ace of Vampire

「緑色、久しぶりだなあ。
 貴様が術者か?」
「金狼か。
 残念だが、お前の相手は俺ではないし。
 術者でもないのだよ」
「術者を知っているか」
「知っていたとしても教えるわけがないだろう」

今吉と同じ回答。
ギルガメッシュをイラつかせるには十分で。
夜の街に彼の大声が響く。

「ならば、我の前から消え失せろ!
 話すことなど何もない!」
「言われずともだ。
 ここでこれ以上の戦闘はしないし、させないのだよ」

視線をギルガメッシュの方から前方に戻す。
翡翠の瞳が冷たく彼らを見つめる。

「まだいたのか?
 そんなにいたくば、教会で説法でも聞いていくか?」
「教会ッ!?嫌よ、冗談じゃないわ!!」
「じゃあ、わんこは大人しくハウスだ、ハウス」
「んだと!?」

青峰の挑発に対し、食って掛かりたかった根武谷だが。
生気が枯渇し、足腰が立たない状態ではそれも叶わない。
実渕も同様で分かりやすい挑発にただ歯噛みするだけだ。

(教会…)

あそこには、確か木吉がいる。
ここにいる全員を滅したいというなら有効だろう。
だが教会を強調しては、木吉のいる教会に行かせることは出来ない。
まるで逆効果のようだが、事情を知っていると話は変わってくる。

『そんなにいたくば、教会で説法でも聞いていくか?』

教会で説法をするのは神父だ。
木吉は狼男とつながりがあり、高尾のことも知っているし。
緑間の事情も知っている。
ここにいたいなら、木吉のところに行け。
つまり。

(木吉のいる教会は安全地帯ってことか?)

緑間を見る。
緑間も高尾を見ていた。
視線が絡む。
緑間の口が静かに動く。

(信じろ)

猛烈な愛しさがこみ上げる。
緑間を抱きしめに行きたかったが、ぐっとこらえた。
人目のある場所で、それはあらゆる意味で自殺行為だ。
せっかく緑間が声に出さず伝えたことが水の泡になってしまう。
だが、これで緑間は敵ではないとはっきりした。
それだけで十分だ。

「暴れるのはここまでにしよう、青峰」
「黄瀬とやってねえ」
「青峰くん、ここは我慢してください」
「我慢ばっかりだ。
 俺は犬じゃねえ、吸血鬼だぞ」
「緑間の破魔矢食らって死ぬか?」
「……あー、くそ。じゃあ、どこ行きゃいいんだ」
「案内する」

もう一度、高尾が緑間を見る。
仕事に徹している彼には、温かさは感じなかった。
それでも高尾のことは見ているようだ。
射るように高尾のことを見ている。

(またね)

高尾は薄く笑って、声に出さずに呟く。
それを緑間がどう受け取ったかは分からない。
『仲間』と共にこの場を後にしてしまったから。
根武谷、実渕、タイガが立ち上がる頃には吸血鬼たちは立ち去っていた。

「なんてザマだ、貴様ら」
「す、すまねえ、金狼…」
「吸血鬼ごときに後れを取るだと?
 神父ごときに!!翻弄されるだと!?
 恥を知れ!!」
「男のヒステリーは見苦しいでぇ。
 ほんで、どうするつもりや?
 俺らを殺すか?」
「殺して結界が外れるならそうしよう。
 汚名が返上できるならそうしよう。
 だが、ここにいる神父を殺したところで何も得られん」
「賢明で何よりや」

今吉はどこまでもあっけらかんとしている。
ならば、こいつらの中心を潰す。

「お前たち、教会へ向かえ。
 説法とやらを聞いてやろうではないか」
「ええんか?神父おるで?」
「虎穴に入らずんば虎児を得ず。
 貴様ら神父を根元から絶ってやろう」
「金狼!俺たち、ヘマしてもう闘えねえ!
 協会に乗り込んだりしたら…」
「だったら、人を襲ってさっさと補てんしろ!!」
「させると思うか、狼王。
 それをするなら、今ここで、これを射る」

緑間が破魔矢をギルガメッシュに向ける。
ひとへの危害も、教会への危害も、高尾への危害も避けねばならない。
許すわけにはいかないのだ。

「金狼、教会に向かいます。
 ですが、我らの状態が状態です。
 状況を見て行動を判断したいのですが、いかがですか」
「我に意見をするか、氷室」
「教会を強襲するのは困難かもしれない。
 しかしここで争っては倒れる者もいるでしょう」
「……ならば、さっさと行け。
 我がお前たちの首を飛ばさぬうちに」

タツヤがタイガに肩を貸して歩き出し。
続けて根武谷、実渕がどうにかこの場をあとにすると。
残されたのは、ギルガメッシュと神父三人。
緑間としては一刻も早く教会に向かいたい。

「今吉、あとは任せた」
「いやいやいやいや!?三対一の方が有利やん!?」
「俺の法力などたかが知れているのだよ」
「上から数えた方が早いくせに!!
 見捨てるつもりか!」
「お前はひとりでも生きていけるだろう」
「大坪も言っとったけど、俺のイメージってどないなってん?」
(胡散臭さが悪いんだろうなあ)

諏佐は静かに目下教会へ連絡を取るため隙を窺っていた。
だが、会話が気になって仕方ない。
これ以上教会が目立ってしまうと、教会の迎撃組の負担が大きくなってしまうからだ。
挑発しすぎるなよーと思いつつ、じりじりと距離を取っていく。

「ところで、赤司はどうした?
 これだけの騒ぎ、なぜ、奴は出てこない?」
「あんたもしつこいなあ、言うと思うかぁ?」
「思わん。
 やはり我も教会に行く必要がありそうだ」
「あかんあかん!!それだけはあかん!!」
「ほう、何故だ?」
「せやから、言うと思うか、阿呆!」
「そこをどけ」

今吉の時間稼ぎは本当に天才だと思う。
諏佐は心の中で感謝を述べる。
光弾を打ち上げて合図を送る。
ほぼ同じタイミングで緑間もフクロウを飛ばした。
そちらに向かう、と。

☆☆☆

打ちあがった光弾を木吉は見つける。
ここまでは予定通りだ。
だが、彼らは『人外』であり、プライドもある。
集団心理で味方であった者も敵側に返ることもあるだろう。

(……日向はどちらだろうか)
「木吉ってさぁ、狼男と縁があるんでしょ?」
「ん?ああ、そうだな」
「そこに何を求めてたの?」
「……雨生?」
「俺はね、『悪魔』になりたかった。
 ひととはなんか違うって自覚があったから」

雨生は座っていたベンチから立ち上がり。
十字架が飾られている教会正面、メインのステンドグラスを見上げる。
そこに描かれているのは聖母が祈りを捧げている姿。
周りを『悪しき者』が取り囲み、それを『聖なる者』が阻む。
聖母が安心して祈れるように。

『お前にも理解者は現れるのだよ』

「俺の理解者は『狼男』だった」
「理解してくれるなら。
 それが誰でも、なんであってもいいと俺は思う。
 雨生の中で筋が通っているなら、それでいい」
「……緑間も木吉も俺を責めないんだ?」
「言える立場じゃないからなあ」

腕まくりをして玄関に向かう。
複数の靴音、荒い息遣い。
誰かが駆け込んで来ようとしている。

(少ないな、今夜はこれだけだったのか?)

ほどなく扉を叩く音。
拳を振り上げてめいっぱい叩いている。
とにかく迎え入れないと。
『教会』とはそういうところだ。

「今、開ける」

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赤い人たちが出てこない。(時臣、赤司、ライダー)
緑はどうにか出せた。
そこで満足した。

> 緑間を見る。
> 緑間も高尾を見ていた。
> 視線が絡む。

視線でかわすキスってやつかなあ。
嫌いだから距離を置いたわけではないから。

まだまだ続くよ。
ノープロットが書くからこうなるんだよねえ。

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