端と底を行き来するRPG

そのとき、きっと誰かの中心blog。
アーカイブにある作品は人事を尽くした盛者必衰の入れ替え制。

これから始まる

2010-05-17 01:30:00 | BASARA
「出席をとる」

担任はそこで大きく息を吸い込んだ。
今にもとり殺しそうな表情である。

「まぁるぅ~~~!!!」
「やめてください! 蘭丸の中で先生のイメージがぶっ壊れます!」
「元気がよいな、うむ、よろしい」
「話、全然聞いてないし!」

蘭丸少年は机に突っ伏した。
必ず真っ先に自分の名が呼ばれるのは嬉しいのだが。
いかんせん、憧れの担任は愛称で呼ぶのだ。

「猿、ばってん、根暗…」

そして彼以外の愛称がひどすぎた。
もっとも、それを気に病むようなことがないから。
蘭丸少年は気に入られているのである。

「…狸、ホンダム。
 全員出席ぃ~、お濃、付けておけ」
「はい、上総介先生」

副担任のお濃先生は妖艶だとお父さんたちから好評だ。
ただ、その色香は信長先生にだけ向けられ。
常に冷たい態度をとっているのだが。
そこがいいんだよ!と熱弁振るうお父さんは。
家庭で大合戦を強いられているとか。

「今日は何だ? そう、運動会よ!
 勝て! 勝たねばその命、ないと思え!」

この場合の命は「通信簿」を意味する。
な、なんだって!と悲鳴を上げたのはこの学級の問題児2人。

「忠勝! 何が何でも勝て!わしのために!!」
「理がないぞ、信長先生!
 また、母上にため息をつかれてしまうではないか!」

ことあるごとに「理」とうるさい浅井が立ち上がる。
話す内容は7割「理」2割「市」残りは「わかりません」だ。
心得ている織田教諭は人参をぶら下げる。

「じゃあかしい、シルバー。
 勝てば◎をつけてやるわ」
「やるぞ、市!! ついてこい!」
「うん、長政様…」

単純なものだ、とほくそ笑む教諭に。
ぞくぞくしているのは副担任。
嬉しそうなのは蘭丸少年。
織田教諭が楽しそうであればそれでいい、というのが彼の考え方である。

「慶次に思い知らせるいい機会やもしれぬな」
「僕も一緒にやるよ、秀吉」

二人の世界を作っている豊臣派閥の会話を割ったのも。
また、織田教諭の声であった。

「優勝した暁には、報償として全員に◎を与える。
 二言はない。
 貴様等に課せられしは勝利のみ!」

気合い十分、待ったなし。
ここに勝利に飢えた(動機はマチマチ)クラスが誕生した。
目指すは天下、得るものは通信簿◎。
いざ、合戦。

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信長先生、めっちゃノリノリです。
恐ろしく書きやすかったのも印象的。

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