僕は、旅に出た。
夜に紛れて城を出た。
多くの人々が歓喜に包まれているなかで。
僕は、旅に出た。
たった一人で旅に出た。
『……行くの?』
「うん」
『じゃあ、餞別にコレあげるよ』
「……どうしたの、コレ? まさか、君が作ったのかい?」
『ちょっとねー』
「何だよ、意地悪だなぁ」
『あはははは』
「……ありがと、テッド」
さらさらとテッドが消えていく。
そう、これは紋章が見せるエゲツナイ幻。
僕は、旅に出ててからよく見るようになっていた。
前を歩いているのが父だったり、オデッサが笑いかけてきたり。
テッドはよく出てきて、いろいろ話しかけてくる。
夢うつつを行き来していることを感じながら、旅を続けていた。
幻から抜けて、心が空になる。
でも、今回の邂逅はいつもと違っていた。
手に。
幻から渡された「モノ」を持っていたのだ。
木のそばに座り込み、携帯スプーンを取り出す。
警戒しながらも、おそるおそるその「液体」にスプーンを浸す。
なぜか「湯気が立っている」ソレは、少年には見慣れたもの。
一口すすり、その味に驚きを隠せない。
もう一口、さらにもう一口。
少年の目から涙が溢れてきた。
父や友の幻は見た。
なぜか同じように紋章に取り殺されたはずのアイツは出てこなかった。
いつでもそばにいたのに。
付いてくるなと言ったのに付いてきたこともあるくせに。
けれど、あぁ、君は僕の中でもそうなんだね。
今の今まで『今が一番重要なタイミング』だったんだね?
「おいしいよ…、グレミオ…」
暖かいはずのシチューが、心を冷やしていく。
夜に紛れて城を出た。
多くの人々が歓喜に包まれているなかで。
僕は、旅に出た。
たった一人で旅に出た。
『……行くの?』
「うん」
『じゃあ、餞別にコレあげるよ』
「……どうしたの、コレ? まさか、君が作ったのかい?」
『ちょっとねー』
「何だよ、意地悪だなぁ」
『あはははは』
「……ありがと、テッド」
さらさらとテッドが消えていく。
そう、これは紋章が見せるエゲツナイ幻。
僕は、旅に出ててからよく見るようになっていた。
前を歩いているのが父だったり、オデッサが笑いかけてきたり。
テッドはよく出てきて、いろいろ話しかけてくる。
夢うつつを行き来していることを感じながら、旅を続けていた。
幻から抜けて、心が空になる。
でも、今回の邂逅はいつもと違っていた。
手に。
幻から渡された「モノ」を持っていたのだ。
木のそばに座り込み、携帯スプーンを取り出す。
警戒しながらも、おそるおそるその「液体」にスプーンを浸す。
なぜか「湯気が立っている」ソレは、少年には見慣れたもの。
一口すすり、その味に驚きを隠せない。
もう一口、さらにもう一口。
少年の目から涙が溢れてきた。
父や友の幻は見た。
なぜか同じように紋章に取り殺されたはずのアイツは出てこなかった。
いつでもそばにいたのに。
付いてくるなと言ったのに付いてきたこともあるくせに。
けれど、あぁ、君は僕の中でもそうなんだね。
今の今まで『今が一番重要なタイミング』だったんだね?
「おいしいよ…、グレミオ…」
暖かいはずのシチューが、心を冷やしていく。
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