端と底を行き来するRPG

そのとき、きっと誰かの中心blog。
アーカイブにある作品は人事を尽くした盛者必衰の入れ替え制。

逆鱗に若子

2011-06-21 01:00:00 | BASARA
逆鱗。
竜の鱗には、一枚だけ流れに逆らった「逆さの鱗」があるという。
だが、それを探してはならない。
なぜなら、それは竜の逆鱗に触れ、殺されてしまうから。

DRAGON HALF

唐突に思い出した僧から聞いた話。
竜の鱗なんて多すぎて見つけられるわけはない。
何より竜なんてこの世にはいない。
そう思って、ただ聞き流すに任せていた。
いや、今だってその考えは変わっていない。
変わっていないが、今の状況を考えると。
ふと、思い当たる節が「逆鱗」しかなかったに過ぎない。
自分がどうやら「地雷」を踏んで。
「逆鱗」に触れてしまったらしいと把握した真田幸村は途方に暮れていた。

「あの……」
「何か文句でも?」
「……いえ」

とりつく島もない。
ここに従者である片倉小十郎や猿飛佐助でもいれば話は違ったろうが。
今いるのは、幸村と伊達政宗だけ。
しかも、合戦場から離れた木の下に座っている。
---政宗に後ろ抱きに抱えられた格好で。
最初こそ離されよだの、子供ではないと抵抗していたが。
意に介した風でもなく、ただ「Ah?」と睨まれれば。
言葉に詰まってしまって抵抗の機会を逃してしまった。

合戦中に、狼狽、という命取りな状態になった幸村を。
相手は問答無用と全身から語りながら腕を引っ張って、戦線を離脱し。
どっかりと木の下に腰を下ろすと。
これまた問答無用とばかりに腕を引っ張り引きずり下ろして、幸村の体を抱え込んだのだ。

何をしたいのだ、この男は。

少なくとも、戦う気は失せてしまっている。
気配を探るに、ただ正面を見ているようだ。
視界に映ったものを理解しているかどうかは疑わしい。
居心地悪そうに、体をもぞもぞさせる幸村を。
立つな、と言ってまた黙る。
埒が明かないと意を決して訊ねることにした。
このままでは戦が終わってしまう。

「政宗殿、某が何かしでかしたなら謝ります故。
 なぜ、このように、その…」
「謝るな、やめねぇぞ、俺は」

その言葉の通り、抱きしめる腕の力が強くなった。
しかし、謝るなとは…。

「某はどうすればいいのですか?」

何をすれば満足するのか。
見当もつかないので聞いてみる。
一刻も早く戦線に復帰したいのだ。

「……気遣うな」
「は?」
「あんたまで俺に気遣うな」
「いつのことで…?」
「さっき、右側から攻撃を加えなかったろう」

会いまみえ、初太刀をお互いが受け止めて。
しばし打ち合った時、政宗の体がよろめいた。
好機とばかりに、握った槍を突きだそうとして。
---幸村は躊躇した。
崩れている政宗の隙は、右側、つまり彼の目が見えない方に出来ていた。
勢いを殺すため、突きだそうとした左槍を背後に回し。
改めて右槍を繰り出した。
その攻撃は政宗の左肩を掠めたが。
瞬間、彼の目つきが変わり。
怯んだ幸村の槍を弾き飛ばし、一気に距離を詰め。
腕を引っ張り、そして今に至っている。

「卑怯と思ったか? それとも、同情か?」
「…勝負をつけたくなかったのだと思います。
 あとから思い返して、後悔する勝ち方だけはしとうございません」
「Ha! じゃあ、あのまま突いてたら勝てたってんだな?」

上等、と上で笑う気配がする。
途端に場の雰囲気が変わる。

「しっかし、律儀だねぇ。
 死角から攻めるのは戦略だろう?」
「弱みを突くようで嫌です」
「豊臣んとこの軍師は、右しか狙ってこなかったぞ」
「それは…随分、直球ですな…」
「そういう奴もいる。 というか、そんな奴ばっかだ。
 俺の顔を見ると哀れむか、小馬鹿にするかのいずれかだしな」
「そんな…」
「だが、あんたは違った」

真っ直ぐに。
一つしかない目を見つめて。
いざ、尋常に勝負!と双槍をかまえた。
だからこそ、右側への攻撃をためらった彼に怒ったのだ。
気遣うな、と。

「何やら照れくさいです」
「虎の若子でも照れるんだな」
「人の子ですから」
「Wow, なかなか言うねぇ」
「……で、政宗殿、そろそろ離してくれませんか」
「嫌だね、いいだろ、今日ぐらい」
「よくないと思います」

竜の鱗には、一枚だけ流れに逆らった「逆さの鱗」があるという。
だが、それを探してはならない。
見つけたら、もう、逃げられない。

*************************

実は、出だしの3行を日記に書いた時点で「あ、もったいね」と思って引っ込めた。
聞いてきたのは両親です。
突発的に思い出しちゃったんだからしょうがない。


豊臣の軍師殿は、お土産もらって帰りました。
絶対、「万国旗」は政宗からの土産だろう。
半兵衛様、お元気ですか。


まあ、今更感が拭えないネタですが。
書いてる間、楽しかったのでいいです。
自己満足です。

コメントを投稿