■【昭師】肉まん争奪戦後(クロニクルネタ)
「やっべぇよ、これは」
後悔、先に立たず。
後の祭り。
そう、もうやってしまったのだ。
やるべきことはひとつ。
弁償だ。
肉まん☆ナイトフィーバー
合戦から戻ってきて。
まず、感じたことは空腹感だった。
育ち盛りは過ぎていたが、自他共に認める健康優良児たる司馬昭は。
食料を求めて幕舎を歩き回る。
しっかりした食事は求めておらず。
軽食、携帯食でもいいと、半ば悟った気持ちだった。
今の陣営は食料が潤沢とは言えなかったからだ。
ないものねだりは分かっていたが、何となく台所に赴いてみる。
すると、卓上に見慣れぬ皿が乗っかっていた。
皿の上には、白い物体。
もしかしなくても。
「肉まん…?」
湯気はさすがに立っていないが、そこには肉まんがあった。
傍に持ち主らしき人影はない。
所持者不明の野良肉まんだ。
これ幸いと深く考えずに、昭は肉まんにパクついた。
冷えているのに肉まんからは肉汁が溢れだして。
存分にうまみを発揮していた。
もし、ほかほかであれば、もっとうまかろう。
と、遠くで聞き慣れた足音がした。
鼻歌交じりに近付いてくる。
そこで気付く。
さあーっと血の気が引く。
「やっべぇよ、これは」
こうしている間にも、どんどん相手は近付いてくる。
歌の内容は「肉まんに捧げる我がこの愛」。
止めどなく溢れる肉汁に、満たされていく我が心 なんて。
えらい気持ちが入って、コブシが効いている。
十中八九、自分が食べてしまった肉まんのことを歌っているに違いない。
そして。
「さぁ、私の胃袋に嫁にこいっ」
いい笑顔で飛び込んできた実兄:司馬師を。
居たたまれない表情で出迎えた昭。
真顔に戻った師は一瞬にして理解する。
「…誰の断りを得て、食った?」
「察しがいいのはありがたいけど、開口一番それですか」
「やぁ、司馬昭。ご機嫌いかが、肉まん返せ」
「…あんまり変わってないですよ」
顔はあくまで真顔だが。
背後から得体の知れない寒気が吹雪いてくる。
覚えがある、と思ったら。
張コウが自分に向けるあの『笑顔』のときに発するものと同じものだ。
つまり、絶対零度で怒っているのだ。
「それを買うのにどれだけの労力をかけたか、分かるか、分かるまい。お前はいつもそうだ。私が楽しみにしているものを最後に持っていく。そう初めては、私が積み上げた積み木を……」
「兄上、本題からズレてますよ」
「とにかく肉まんは弁償してもらうぞ」
「仕方ないですよね、どこの店のだったのですか」
「中華安寧亭だ」
師が言った店は半日並んでも買えない人気店である。
値段もべらぼうに高い、だがうまい。
「…まさか並んだんですか」
「並ばずに買えるか?」
2日ばかり姿を見ない日があったが…。
その熱意に呆気にとられて、ますます居心地が悪い。
それを食べてしまったのだから、さぞ恨めしかろう。
「期限を設けてやる。 明朝までに手に入れてこい。
こなければ、『あの案件』の協力はないぞ」
「げ…っ!!そうくる!?」
「ま、せいぜい頑張れ」
結局、この兄は協力するつもりなぞないのだ。
人の色恋に興味はない、と日頃から言っている。
歯痒く思いつつも、とにかく店に向かわねばならない。
足取り重く、考え込む。
明日までに肉まんを手に入れるか。
それとも最強防衛線を強行突破した方が早いか。
「…寝込みを襲うか、それとも伏兵のほうが確実か?」
「おぉ、ちょうどいいところにきた。
司馬昭、こっちこい」
「夏侯惇殿…!」
今まさに考えていたことの弊害が目の前に現れ瞠目する。
思考を読み解かれていたら、あの世行きだ。
胸を押さえつつ、近寄っていく。
「何でしょう」
「試作品なんだが、食っていってくれ」
「…肉まん?」
「魏まんだ」
ふんと鼻を鳴らして、惇は得意げだ。
肉まんであって肉まんでない。
そう言うのだが、どうみても肉まんである。
「いいから食べてみろ」
「急かされて食べるものでもないでしょう?」
なんせ、もう一個食べている。
空腹はさっきの肉まんと、兄の件ですっかり収まっていた。
そこへさらに肉まんを食べる機会が回ってきた。
次回に持ち越せたらいいのに…と思うばかりだ。
いい匂いに誘われて一口。
「……!! うまい」
「当然の結果だ」
聞けば、惇の手作りだという。
ここまでくると、台所は彼の独壇場ではないだろうか。
ふと、昭は本題を思い出した。
明朝兄に肉まんを献上しなければならない。
が、手にはいるかも分からない肉まんを求めるよりも…。
「夏侯惇殿、ひとつお願いがあるのですが」
「覇はやらんぞ」
「それとは、別件です」
帰結はそうですが、とは言わなかった。
未来の敵は現在の味方である。
翌朝、ほかほかの肉まんを携えた昭は。
満面の笑みを浮かべた師の絶賛の声を浴び、事なきを得ていた。
持っていったのは、中華安寧亭のそれではなく。
惇特製の中華まん『魏まん』。
明朝、作ってほしいと依頼をしていたのだ。
名店『中華安寧亭』にも劣らぬ味、『魏まん』。
そこから、欺瞞という言葉が生まれたらしい。
****************************
欺瞞【ぎまん】
あざむき、だますこと。
欺瞞 ⇒ 魏まん と結びついてから早かった。
というか、この話のあらすじを見てこれしかないと思った。
肉まんがたべられることに、柄にもなくテンションが上がっている兄。
そんな兄を、かわいいなあ、と思ってしまう弟。
か わ い い はどこいった。
仕方ないよね、司馬師だもの。
ちなみに、時系列は「最強防衛線」のあとです。
惇は覇絡みでないなら、昭に何の抵抗もありません。
「やっべぇよ、これは」
後悔、先に立たず。
後の祭り。
そう、もうやってしまったのだ。
やるべきことはひとつ。
弁償だ。
肉まん☆ナイトフィーバー
合戦から戻ってきて。
まず、感じたことは空腹感だった。
育ち盛りは過ぎていたが、自他共に認める健康優良児たる司馬昭は。
食料を求めて幕舎を歩き回る。
しっかりした食事は求めておらず。
軽食、携帯食でもいいと、半ば悟った気持ちだった。
今の陣営は食料が潤沢とは言えなかったからだ。
ないものねだりは分かっていたが、何となく台所に赴いてみる。
すると、卓上に見慣れぬ皿が乗っかっていた。
皿の上には、白い物体。
もしかしなくても。
「肉まん…?」
湯気はさすがに立っていないが、そこには肉まんがあった。
傍に持ち主らしき人影はない。
所持者不明の野良肉まんだ。
これ幸いと深く考えずに、昭は肉まんにパクついた。
冷えているのに肉まんからは肉汁が溢れだして。
存分にうまみを発揮していた。
もし、ほかほかであれば、もっとうまかろう。
と、遠くで聞き慣れた足音がした。
鼻歌交じりに近付いてくる。
そこで気付く。
さあーっと血の気が引く。
「やっべぇよ、これは」
こうしている間にも、どんどん相手は近付いてくる。
歌の内容は「肉まんに捧げる我がこの愛」。
止めどなく溢れる肉汁に、満たされていく我が心 なんて。
えらい気持ちが入って、コブシが効いている。
十中八九、自分が食べてしまった肉まんのことを歌っているに違いない。
そして。
「さぁ、私の胃袋に嫁にこいっ」
いい笑顔で飛び込んできた実兄:司馬師を。
居たたまれない表情で出迎えた昭。
真顔に戻った師は一瞬にして理解する。
「…誰の断りを得て、食った?」
「察しがいいのはありがたいけど、開口一番それですか」
「やぁ、司馬昭。ご機嫌いかが、肉まん返せ」
「…あんまり変わってないですよ」
顔はあくまで真顔だが。
背後から得体の知れない寒気が吹雪いてくる。
覚えがある、と思ったら。
張コウが自分に向けるあの『笑顔』のときに発するものと同じものだ。
つまり、絶対零度で怒っているのだ。
「それを買うのにどれだけの労力をかけたか、分かるか、分かるまい。お前はいつもそうだ。私が楽しみにしているものを最後に持っていく。そう初めては、私が積み上げた積み木を……」
「兄上、本題からズレてますよ」
「とにかく肉まんは弁償してもらうぞ」
「仕方ないですよね、どこの店のだったのですか」
「中華安寧亭だ」
師が言った店は半日並んでも買えない人気店である。
値段もべらぼうに高い、だがうまい。
「…まさか並んだんですか」
「並ばずに買えるか?」
2日ばかり姿を見ない日があったが…。
その熱意に呆気にとられて、ますます居心地が悪い。
それを食べてしまったのだから、さぞ恨めしかろう。
「期限を設けてやる。 明朝までに手に入れてこい。
こなければ、『あの案件』の協力はないぞ」
「げ…っ!!そうくる!?」
「ま、せいぜい頑張れ」
結局、この兄は協力するつもりなぞないのだ。
人の色恋に興味はない、と日頃から言っている。
歯痒く思いつつも、とにかく店に向かわねばならない。
足取り重く、考え込む。
明日までに肉まんを手に入れるか。
それとも最強防衛線を強行突破した方が早いか。
「…寝込みを襲うか、それとも伏兵のほうが確実か?」
「おぉ、ちょうどいいところにきた。
司馬昭、こっちこい」
「夏侯惇殿…!」
今まさに考えていたことの弊害が目の前に現れ瞠目する。
思考を読み解かれていたら、あの世行きだ。
胸を押さえつつ、近寄っていく。
「何でしょう」
「試作品なんだが、食っていってくれ」
「…肉まん?」
「魏まんだ」
ふんと鼻を鳴らして、惇は得意げだ。
肉まんであって肉まんでない。
そう言うのだが、どうみても肉まんである。
「いいから食べてみろ」
「急かされて食べるものでもないでしょう?」
なんせ、もう一個食べている。
空腹はさっきの肉まんと、兄の件ですっかり収まっていた。
そこへさらに肉まんを食べる機会が回ってきた。
次回に持ち越せたらいいのに…と思うばかりだ。
いい匂いに誘われて一口。
「……!! うまい」
「当然の結果だ」
聞けば、惇の手作りだという。
ここまでくると、台所は彼の独壇場ではないだろうか。
ふと、昭は本題を思い出した。
明朝兄に肉まんを献上しなければならない。
が、手にはいるかも分からない肉まんを求めるよりも…。
「夏侯惇殿、ひとつお願いがあるのですが」
「覇はやらんぞ」
「それとは、別件です」
帰結はそうですが、とは言わなかった。
未来の敵は現在の味方である。
翌朝、ほかほかの肉まんを携えた昭は。
満面の笑みを浮かべた師の絶賛の声を浴び、事なきを得ていた。
持っていったのは、中華安寧亭のそれではなく。
惇特製の中華まん『魏まん』。
明朝、作ってほしいと依頼をしていたのだ。
名店『中華安寧亭』にも劣らぬ味、『魏まん』。
そこから、欺瞞という言葉が生まれたらしい。
****************************
欺瞞【ぎまん】
あざむき、だますこと。
欺瞞 ⇒ 魏まん と結びついてから早かった。
というか、この話のあらすじを見てこれしかないと思った。
肉まんがたべられることに、柄にもなくテンションが上がっている兄。
そんな兄を、かわいいなあ、と思ってしまう弟。
か わ い い はどこいった。
仕方ないよね、司馬師だもの。
ちなみに、時系列は「最強防衛線」のあとです。
惇は覇絡みでないなら、昭に何の抵抗もありません。
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