端と底を行き来するRPG

そのとき、きっと誰かの中心blog。
アーカイブにある作品は人事を尽くした盛者必衰の入れ替え制。

失くした鏡

2007-09-20 16:44:15 | 自己終結
「まずは、メンバーわけをしましょう」
「お前が仕切るな、お前が!」

シーモアはごく当たり前と言った風で、仕切り始めた。
こういう気質なのだろうか、心なしかウキウキとしている。
そして、告げる。

「私にはユウナ殿を守る義務があります。
 ついでに、アーロン殿もね。
 ですからここは、私とユウナど―――」
「シーモアが露払いし、俺たちがそれに続く。
 俺の警護は、ティーダにワッカにリュックだ。
 万一のことを考え、キマリとルールー、ユウナは別働隊とする。
 質問は?」
「「「なーい」」」」
「ちょっと、待ってくれ!」
「では、出発しよう。
 これには、和平がかかっている。
 特に、ティーダ。 お前の行動次第で世界の転び方が変わるぞ」
「お、脅かすなよ!」
「本当の話だ」
「アーロン殿!!」

強引に会話に割り込んで、シーモアは必死にアプローチをかける。
自分には強力な魔法が使えるだとか、接近戦では使い物にならないだとか。
とにかく説得を試みた。
だが、答えは。

「お前は、主席総長だろう? それだけの実力があるならば、問題はない」

崩れ落ちるシーモアを放っておいて、一行はアクゼリュスを目指す。
と、そこに黒い影が躍り出た。
「ぐおっ!」とアーロンが呻き、一瞬のうちに連れ去れてしまった。

「アーロン!!」

叫んだときには、もう、遅い。
アーロンはすたこらと待ち合わせポイントα(以下α)に移動してしまった。
なんてこったい。

「あんだけ強かったら、逃げ出せそうだよね…」
「そうは言ってられないんだろ? ルー、お前、ちったぁ動揺しろよ」
「必ずしも”アニス”である必要はないわ。
 それに、アーロン様なら絶対に大丈夫」
「連れ去られかたに無理あったもんな…」
「みんな! 助けに行こうよ!」

鶴の一言とはこのこと。
ユウナの願いとあらば、行こうではありませんか。
キマリはじっと後ろに視線を送って警戒しているようで。
話には参加しなかったが、異論はないとのことだった。
αは、バチカルのちょうど裏側。
行き先としては、少し遠回りだが行くしかない。
アーロンはそこで待っている。

ダラダラと移動しつつも、敵を沈めていき。
最後の番人にも魔法の連発で勝ってしまった。
開発者が聞いたら泣きそうだ。
そして、出入り口をくぐるといた。
アーロンである。

「アーロン!!」

いの一番に駆け寄ろうとティーダが走り出す。
メンバーの誰もがその反応に付いていけず、出遅れた。
だが、異変に気付く。
アーロンのそばに、誰かいる…!!

「ティーダ!!」

叫んだのは、誰だったのか。
その声を聞いたか聞かないかのその刹那。
目の前が煌めき、びゅっと風の切れる音。
無意識に体をひねり、ソレを避ける。
体勢を崩して、思わず地面に手を付きそうになるのをグッとこらえる。
すると、上から「へぇ…」と声がする。
何だ?と確かめようとすると、第二撃。
溜まらず、自分も剣を抜き払い、応戦する。
そして、相手の顔を見た。

「え…」
「ふっ!」
ティーダの剣を払い飛ばし、のど元に剣を突きつけた。
動けない。
アーロンのそばにいたもう一人の眼帯をした男が叫ぶ。
「そこまでにしとけって! 行くぞ、おら!」

「ティーダ!」

ユウナの声だ。
だが、なぜか遠く感じる。
目の前の顔が信じられない。
これは…俺?

「おい、いい加減にしろ!」
「…俺の名はシューイン、こいつはギップル。
 また、会うこともあるだろう。 覚えておけ」
「ま、待てよ…」
声が震える。
待てよ、こいつ、誰だよ…。
「アーロンは返さん、俺たちにも都合がある」
離れていくシューインを追いかけることが出来ない。
衝撃が自分を動かすことを許さなかった。

「ぐ…」

吐き気が襲ってきた。
ぐるぐる視界が回る、世界が回る。
呆然と立ち尽くし、アーロンを乗せた敵の船が出港しても反応できなかった。
仲間が、特にリュックが必死に彼を覚醒させようとアイテムを取り出す。
むー、っと頬を膨らませて最後にヒザかっくん。
「うおっ」という声と共に、ようやく我に返らせることが出来た。

「…取り逃がした。 追う」
「俺に…考えさせてくれよ」
「大丈夫?」
「うん、たぶん…」
「あの方向だから、砂漠のほうだよね?」
「行きましょう、アーロン様がいないと戦闘に差し支えるわ。
 あ、ティーダが決めるんだったわね」

ルールーの皮肉なんだか、天然なんだか微妙な台詞を機に。
みなの注目がティーダに集まる。
吐き気をこらえ、言葉をひねり出す。

「追うぞ…、アーロンがいなきゃ、和平も何もないからな…」


一方、その頃のシーモア。
「団体行動がしたかっただけなのに、この仕打ち!
 キノック! 何か妙案を出せ!」
「それでしたらば、ごにょごにょごにょ」
「!!! 面白そうじゃないか」
「シナリオにもありますし、ご存分にどうぞ」



このシーモア。
かなり活き活きしてるのは、たぶん、気のせいじゃないな。

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