端と底を行き来するRPG

そのとき、きっと誰かの中心blog。
アーカイブにある作品は人事を尽くした盛者必衰の入れ替え制。

常識を蹴飛ばして

2007-09-20 15:37:43 | 自己終結
「とりあえず、北へ移動しましょう」

そう言ったのは、イオンだった。
ガイが村の住人に聞いたところによると、ここは最南端なのだという。
連絡船も、北方面しか出ていないと言うので、もう行き先は決まっていた。

ポルト=キーリカ

キーリカ・ビーストというブリッツチームが所属する港町だ。
本当に海に出来上がっているその町は、何度も『シン』に破壊されて。
そして何度も復興を遂げているたくましい町だ。
で、この『シン』を演じるのが。

「ヴァン師匠も来るのかな?」
「『シン』役ですからね、襲いに来るのでは?」

ジェイドがあっさりと肯定する。
もしかしたら、どうでもいいと思っているのかもしれない。
アイテムを買い揃えて準備万端。
それぞれが武器の確認を済ませていく。

「このボールで、あのヴァンと戦えっていうのか」
「私もナックルでしてよ? 弓とはかけ離れすぎですわ」
「…僕も剣士役なんですよね、しかも伝説の」

イオンが発言すると、場の空気が一気に凍った。
すばやく復帰を果たしたのは、ルークである。

「大丈夫だって!お前は何もしなくていいんだよ!」
「ですが…」
「そうですよ、イオン様!」「私たちが付いてますよぅ!」
「僕は一応過去にも『ヴァン』を倒した一行の一員です。
 そういう役なんです。
 戦闘に役に立たなければ、”アーロン”ではありません」
「しかし”アーロン”である必要はないんじゃないか?
 設定を少し借りただけなんだろ?」

「とにかく、やってみればわかるだろ?」

アッシュが「不毛な会話してないで、動け」と眼で言ってきたので。
一行は移動を開始する。
船はゆっくりと動き出して、一路キーリカへ。
このあとは、どうするんだ?

「とりあえず、ルカまでは行こう。
 あそこには、機械があるからな」
「本音が出たぞ、ガイ」
「兄さんを倒せば、そこで終わりよ」
「じゃあ、一撃必殺?」
「そう簡単にいきまして?」
「サフィールに会わないならば、私は文句ありませんよ。
 早くケリが着くなら、それにこしたことはない」
「じゃあ、決まりな。
 しょっぱなで『ヴァン』をたたく。
 で、余った時間で遊ぶ、と」

そのとき、船が激しく揺れた。
波が急激に高くなったらしい。
武器を手に、デッキに駆け上っていく。
いた。
右手から小船に乗って、ヴァンが咆哮をあげている。

「咆哮でこの波を…?  なんという声量だ」

そばには、リグレットとシンクが控えている。
一通り叫び終えると、ヴァンはギロリと連絡船を睨んだ。
どす黒いほどの殺気を放ち、乗った小船がミシミシと音を立てている。

「私を瞬殺しようなぞ笑止千万! かかれ!!」

合図と共に、リグレットとシンクが連絡船に飛び移る。
これが『コケラ』の代わりらしい。
だが、これは脅威であった。

「マズイわ…、向こうの得物は変わっていない…」
「使い慣れた武器とそうでないのとでは、だいぶ違うな…」
「変わってない連中でやるしかないんじゃないか?」
「ということはー、決まりだね」

「ごちゃごちゃ言ってないでさー! 早く済まそうよ」
「こちらとて、船酔いしているのだ!!」

軽くえづくリグレットを尻目に、シンクは構える。
狭いデッキの上でも、地上にいるのと変わらない動きをするのは経験済みだ。
だが、それもこちら側も同じ事。
バトルメンバーは、制限されてしまったが、勝ち抜いてきたのだ。
いけるはず。

「行くぜ!」

ルークがまず斬りかかり、シンクがコレをかわす。
その動きを読んでいたアニスがトクナガを突っ込ませる。
慌てて蹴り飛ばすが、思いのほか重かったらしくそこまで飛ばなかった。
えづきから復帰したリグレットが発砲するも、移動したあと。
ぐるりと確認している間に、横から斬り込まれる。
反射的に避けたが、かわしきれず、腹に切り傷。
「何してる!?」とシンクがルークを蹴り飛ばす。
ルークはその勢いで、船の手すりまで吹き飛んだ。
そこで、シンクは気付いた。
向こうで、魔法を詠唱している!!

「やらせるかぁー!!」
「遅いですよ」「喰らいな」「やっちゃうよー!」

ジェイドがアッシュがアニスが。
それぞれ「サンダガ」「ファイガ」「グラビデ」を放つ。
この時期としては、反則的なほど強力な魔法を惜しげもなく放ったのである。
この人たち、本気で終わらせる気のようだ。

「ぐ、ああああ!!!」

シンクの断末魔の叫びが船上に響き渡る。
効果範囲にいた、リグレットも巻き添えを食っているに違いない。

「終わったな」
「まだだ、屑が! 『ヴァン』が残っている!」
「みて!あそこ!」

ティアの叫んだ方向を見ると、『ヴァン』が逃げている。
だいぶ小さくなっているがものすごい勢いで、オールを漕いでいるのが分かる。
ふははははと笑いながらも、その手は休まることはない。

「今日はこの辺にしといてやろう! さらばだ、メシュティアリカ!」
「ふっざけんなー!!」
「ちなみに、私にはリフレクがかかっている!
 私に魔法を唱えれば、そちら側にダメージがいくぞ!!」
「く…!!」
「ふははははは!!」

「……アルテマ」


ちゅどーん。


「え…?」
「アルテマはリフレク不可なんですよ」
「魔法…使えないんじゃ…?」
「”アーロン”じゃありませんから、僕」

こうして、『ヴァン』は倒されました。
究極召喚は必要なかったのです。

永遠のナギ節はまだ始まったばかりです。


って…、これでいいのか?

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