食堂に出るらしいということで。
三人は放課後の食堂へ移動する。
「伸びる少年」の噂はこうだ。
腹を空かせた少年がいるのはどこかの部屋。
今でもその部屋に閉じこめられている。
彼は食料を探す。
見つからないようにひっそりと「腕だけ」伸ばして。
アホらし。
サンジは実に冷めていた。
食料を探すっていうのが幽霊っぽくないし。
そもそも何で閉じこめられる必要があるのか。
たんに食い意地がはった生徒のことだろうと見当をつけたためだ。
サンジは前かがみに廊下を歩く。
やる気は一切ない。
が、なぜか先頭を歩かされていた。
言い出しっぺ兼部長が「俺の前を任す!」とサンジの後ろに隠れたためだ。
アホらし。
二回目の同じ感想を抱きつつ、廊下を順調に進んでいく。
「ついてきてるか、ロロノア」
「…おぅ」
「背中任せてるんだからな!い、いなくなるなよ!?」
「…へいへい」
中学の全国大会で見かけたときのことをサンジは思い出す。
試合前に『またいねぇ!!』と悲鳴をあげている連中がいた。
必死になって探していたのが、このロロノアだったのだ。
移動距離2分だろうと普通に迷子になるほどの方向音痴であることを知ったのはその大会。
ばったり自販機の前であったのだが。
そこは会場とは真反対だったのである。
言うに事欠いて彼はこう言った。
『あいつらはどこ行った?世話が焼ける』
お前だよ、お前と思ったサンジが蹴りを繰り出したのは言うまでもない。
食堂に着くと躊躇なく扉を開け放つ。
ビビり倒すウソップを背中にぐるっと見渡す。
分かってはいたが、何もないし誰もいない。
溜息一つ吐いて、後ろを振り返ろうとすると。
「いるな」
「どお、どどどどどこに!!?」
「あれ、そうだろ?」
ロロノアの指さす方向に視線を向ける。
冷蔵庫前に人影があった。
目を凝らすと服が見えた。
赤いシャツを着ている若い男だ。
腹を抱えて床にへばっている。
「どうすんだ、部長?
お前が決めろ」
「た、確かめる!」
「何を?」
「正体を、だ!」
ウソップが意を決して中に入ってく。
続けてサンジ、ロロノアと続く。
カウンターを挟んで対峙する。
何かを言い出そうと息を吸い込んだそのとき。
ぐぎゅるるるるるるる、と腹の音。
途端にサンジの態度が急変する。
カウンターを飛び越え、しゃがみ込む。
「腹減ってんのか」
「あぁ~…、肉…肉が食いたい」
「肉は無理だ、炒飯でいいか」
「おい?」
「おめぇらも食うだろ? 食うよな?」
言うが早いか、さっさと冷蔵庫を物色しだす。
呆気にとられている間に、ほかほかの炒飯が出てきた。
これも立派な超常現象です、とウソップがモノローグをつける中。
うめぇうめぇとがっつく少年。
ひとり離れて炒飯をパクついているのはロロノア。
みればみるほど同年代だと思われるが。
どうにもひっかかるのは、その雰囲気だ。
肉体はそこにあるのに、気配というか生気がない。
正体を見定めようとするサンジの目の前でそれは起きた。
「それ、くれ」
「……っ!!!」
ロロノアの食器が取り上げられた。
当たり前のように。
手が「伸びた」としか表現のしようがない。
隣にいたわけではない。
普通に考えれば手が届くわけがない。
だが、現実、届いた。
少年の手が物理的に伸びたのだ。
「な…っ!!」
「ん? あぁ、わりぃ、驚かせたな」
少年はさして気にするでもなく。
炒飯を食べながら自らの正体を明かす。
「俺、全身ゴム人間なんだ」
「ご、ゴム人間?」
「『人間』じゃないけどな」
にししと笑う。
いや、笑うとこじゃねぇだろと一人ごちたのは皆同じ。
あの噂は本当だったのだ。
「また作りにきてくれよ」
「今度はそっちから来いよ」
目を見開いた少年と視線を切り結ぶ。
ふっと笑うと、少年は言う。
「ああ、分かった」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
あれ以来、サンジは「部活動」には参加していない。
「これ何かどうだ、『動く人体模型』」
「あー、どっかで聞いたことあるなー」
「じゃあ、それだ!それを究明するぞ!!
いいよな、ゾロ!!」
「それより俺は寝てぇよ…」
(ほっとこ…)
超常現象研究会。
主な活動はサンジの周りでダベること。
ここに得体の知れないメンバーが増えていくのは。
また別の話。
********************
現在の構成員:
部長1名、お母さん1名、長男1名、間1名。
超常現象に出会うたび、部員(間)が増えていく。
おそろしく書きにくかったので。
高校生パロ、ちょっと勉強してきます;
(2010.08.31)
三人は放課後の食堂へ移動する。
「伸びる少年」の噂はこうだ。
腹を空かせた少年がいるのはどこかの部屋。
今でもその部屋に閉じこめられている。
彼は食料を探す。
見つからないようにひっそりと「腕だけ」伸ばして。
アホらし。
サンジは実に冷めていた。
食料を探すっていうのが幽霊っぽくないし。
そもそも何で閉じこめられる必要があるのか。
たんに食い意地がはった生徒のことだろうと見当をつけたためだ。
サンジは前かがみに廊下を歩く。
やる気は一切ない。
が、なぜか先頭を歩かされていた。
言い出しっぺ兼部長が「俺の前を任す!」とサンジの後ろに隠れたためだ。
アホらし。
二回目の同じ感想を抱きつつ、廊下を順調に進んでいく。
「ついてきてるか、ロロノア」
「…おぅ」
「背中任せてるんだからな!い、いなくなるなよ!?」
「…へいへい」
中学の全国大会で見かけたときのことをサンジは思い出す。
試合前に『またいねぇ!!』と悲鳴をあげている連中がいた。
必死になって探していたのが、このロロノアだったのだ。
移動距離2分だろうと普通に迷子になるほどの方向音痴であることを知ったのはその大会。
ばったり自販機の前であったのだが。
そこは会場とは真反対だったのである。
言うに事欠いて彼はこう言った。
『あいつらはどこ行った?世話が焼ける』
お前だよ、お前と思ったサンジが蹴りを繰り出したのは言うまでもない。
食堂に着くと躊躇なく扉を開け放つ。
ビビり倒すウソップを背中にぐるっと見渡す。
分かってはいたが、何もないし誰もいない。
溜息一つ吐いて、後ろを振り返ろうとすると。
「いるな」
「どお、どどどどどこに!!?」
「あれ、そうだろ?」
ロロノアの指さす方向に視線を向ける。
冷蔵庫前に人影があった。
目を凝らすと服が見えた。
赤いシャツを着ている若い男だ。
腹を抱えて床にへばっている。
「どうすんだ、部長?
お前が決めろ」
「た、確かめる!」
「何を?」
「正体を、だ!」
ウソップが意を決して中に入ってく。
続けてサンジ、ロロノアと続く。
カウンターを挟んで対峙する。
何かを言い出そうと息を吸い込んだそのとき。
ぐぎゅるるるるるるる、と腹の音。
途端にサンジの態度が急変する。
カウンターを飛び越え、しゃがみ込む。
「腹減ってんのか」
「あぁ~…、肉…肉が食いたい」
「肉は無理だ、炒飯でいいか」
「おい?」
「おめぇらも食うだろ? 食うよな?」
言うが早いか、さっさと冷蔵庫を物色しだす。
呆気にとられている間に、ほかほかの炒飯が出てきた。
これも立派な超常現象です、とウソップがモノローグをつける中。
うめぇうめぇとがっつく少年。
ひとり離れて炒飯をパクついているのはロロノア。
みればみるほど同年代だと思われるが。
どうにもひっかかるのは、その雰囲気だ。
肉体はそこにあるのに、気配というか生気がない。
正体を見定めようとするサンジの目の前でそれは起きた。
「それ、くれ」
「……っ!!!」
ロロノアの食器が取り上げられた。
当たり前のように。
手が「伸びた」としか表現のしようがない。
隣にいたわけではない。
普通に考えれば手が届くわけがない。
だが、現実、届いた。
少年の手が物理的に伸びたのだ。
「な…っ!!」
「ん? あぁ、わりぃ、驚かせたな」
少年はさして気にするでもなく。
炒飯を食べながら自らの正体を明かす。
「俺、全身ゴム人間なんだ」
「ご、ゴム人間?」
「『人間』じゃないけどな」
にししと笑う。
いや、笑うとこじゃねぇだろと一人ごちたのは皆同じ。
あの噂は本当だったのだ。
「また作りにきてくれよ」
「今度はそっちから来いよ」
目を見開いた少年と視線を切り結ぶ。
ふっと笑うと、少年は言う。
「ああ、分かった」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
あれ以来、サンジは「部活動」には参加していない。
「これ何かどうだ、『動く人体模型』」
「あー、どっかで聞いたことあるなー」
「じゃあ、それだ!それを究明するぞ!!
いいよな、ゾロ!!」
「それより俺は寝てぇよ…」
(ほっとこ…)
超常現象研究会。
主な活動はサンジの周りでダベること。
ここに得体の知れないメンバーが増えていくのは。
また別の話。
********************
現在の構成員:
部長1名、お母さん1名、長男1名、間1名。
超常現象に出会うたび、部員(間)が増えていく。
おそろしく書きにくかったので。
高校生パロ、ちょっと勉強してきます;
(2010.08.31)
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