端と底を行き来するRPG

そのとき、きっと誰かの中心blog。
アーカイブにある作品は人事を尽くした盛者必衰の入れ替え制。

願わくば

2008-04-07 21:39:15 | ポケモン系
「うおおぅ!!」

彼に向けられた殺意。
僕は、そのとき、自分の手を見た。


願わくば


「なぁ、チームに入るだろ?」
随分昔のような気がするが、それは、6年前のこと。
僕は、どちらかというと引っ込み思案な性格で。
人付き合いはあまり得意じゃなかった。
学校で班作りをするときは、決まって余った。
そうして、立ち往生していると必ず声をかけてくれるのがザングスだった。

「ちーむ?」
「俺、森のシュノーケルを狙ってるんだ! もう年上連中に負けるもんか!」
「ザングス、主導権」
「こまけーことは気にすんな! で、入るよな?」
「……もちろん」

嬉しかった。
日陰にいた僕を、彼はためらいなく引っ張り上げた。
彼といるときだけ、僕は世界と繋がった。
彼といると、自分が変われた。
彼がしたいと言うことを僕は全力で支援したし、協力した。
時には、障害となる【もの】を前もって消したこともある。
彼が無事であれば、と。


僕らが19歳のとき。
いくつものグループを吸収していったツケがきた。
膨らみすぎたチームが分裂し、クーデターが起こったのだ。
もしかしたら、最初からそのつもりで入りこんだのかもしれない。
外の守りは堅くても、中の守りはもろい、そう踏んだのだろう。
ご名答。
「どんな人でも信じること」がザングスの長所であり欠点だ。

「うおおぅ!!」

彼に向けられた殺意。
僕は、そのとき、自分の手を見た。
血みどろの手。
破壊の手。
僕は自分の居場所が欲しいがために、力を振るい続けてきた。
彼がいなくなったら?
目の前が真っ暗になる。
血の気が引く。
やめろ、やめろ、やめろ!
彼との距離がもどかしい。
一分一秒が惜しい。
縮まる距離と、迫る凶刃。
最後のひと呼吸に賭けた。
ザングスがいつもやっていること。

「ああああああああああっ!!!!」

滅多にあげることのない大声。
振り絞った脚力が、ザングスの前へと僕を導く。
衝撃。
左目に激痛。
かまわず睨み返し、すかさず斬撃。
相手は、後ろへ倒れた。
もう二度と目を覚ますまい。
自分の後ろを振り返り、ザングスを確認する。
あれ…見えない…。
嗚呼、目をやったのか。

「大丈夫ですか、ザングス…」

彼はどうしたのだろう。
よく分からない。
泣いているの?

「ごめん、ごめんな…」

そう言って、僕の左目の血を拭うのだ。
何度も何度も。
拭わないで、圧迫して止めないと…。
人事のように思えたのには、なんだか、笑えた。


僕は破壊ばかりしてきた。
僕の力はただ傷付けるだけだったけれど。
あの日、「破壊」でなくてもザングスを護れたように。


この手は、護る手でありたい

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