ここは鳳凰学院は、急速に力を強めている進学校である。
力とは、学力、知名度。
そして、文字通り「権力(ちから)」のことだ。
こんな日常 ~鳳凰学院~ 魏キャラ設定
ある晴れた放課後。
教師も生徒も活動が活発になる。
中間試験が終わった時期なら尚更だ。
校庭の点検、掃除をしながら生徒たちを眺める。
今、校庭を走っているのは剣道部の徐晃か。
「今日はロードワークですか!」
「おう! 剣道場が使えないのでな!走り込みだ!」
ここで、何故、と訊いてはいけない。
弱肉強食が唯一の秩序たるこの学院のことだ。
「夏が終わってしまった」剣道部は競争に負けてしまったのだろう。
万年二回戦敗退、よくて三回戦敗退の剣道部と場所を争っているのは。
確か準決勝までは行ける弓道部であったか。
「賈ク殿のこそ、暑い中、清掃とはご苦労様です」
「これが仕事だし、苦労はないよ」
苦労があるとすれば…。
ここまで考えて、はっと我に返る。
いかん、待ち合わせに遅れてしまう。
すまないね!と挨拶を交わして音楽室へ急ぐ。
音楽室は現在地からだと警備室を通った方が近い。
「曹仁殿、通らせてもらうぞ!」
「……不審者は」
「校庭側では見かけなかった!」
「そうか、ならばいい」
通行料という形で、情報を交換するのは常だ。
常時ヘルメットとプロテクターで身を固めている曹仁は。
よくも悪くも警備の仕事に真面目なのである。
校内に入り、廊下を急ぐ。
暑い中急いでいるせいか、汗がひっきりなしに吹き出す。
頭に巻いた手ぬぐいも要因だろうか。
「廊下走るなー、転ぶぞー」
「うおっ! 夏侯淵殿!」
「なんだ?急ぎか?」
「ええ、まぁ…」
「そっか、前見て急げよ、猪突猛進はいけねぇ」
「肝に銘じておきます」
できるだけ早足で音楽室へ向かう。
何故、こんなに懸命に足を動かしているのか、もはや分からなくなっている。
目的の部屋に着くと、そこには珍しい二人が立っていた。
「張コウ殿、甄姫殿。如何しました?」
「あぁ、賈ク。このフルートの音を聞いていたのです」
「切なくも熱く、されど柔らかい…。実によい音色ですね」
「そう言っていただけると本人も喜ぶでしょう」
「演奏者を知っているのですか?」
「ええ、まぁ」
今年の四月、かく言う自分もこの音色に惹かれたのだ。
なんと切ないメロディだろうと。
それは、過去に後ろめたいものがあったせいかも知れない。
ひょいっと、窓から覗き。
ばちっと目が合い、捕まってしまったのが運の尽き。
『不審者?』
『ち、違う!歯牙ない清掃員ですってば!』
『……でも、あなたの音色はとっても怪しいわ』
『そ、そうかい?』
『決めた、あなた、明日から調査に参加しなさい』
『調査?何の?』
回想しても、彼女にまんまと乗せられた記憶しかない。
学院いちの才女として知られていると聞いたの時は。
それはもう、騙されていると思ったものだ。
大人しい顔をして、その実、そうではないのだから。
「文姫殿、入りますよ」
「……お客さん?」
「蔡文姫、あなただったの」
「その音色の麗しさ、ぜひ我が演劇部に欲しいところです。いかがですか」
「手の早いこと…。残念だけど、部活動はしないわ」
そうですか、とあっさり張コウは身を引く。
断られ慣れでもしているのだろうか。
それとも、断られることを見越していたのか。
「ここにいたのか、甄」
驚いた。
いつの間に来たのだろうか。
音楽室の入り口に白い学ランを着た男子生徒が立っていた。
記憶が確かならば、あれは生徒会長の曹丕だ。
噂通りの冷たい目をしている。
「帰るぞ」
「は、はい。またね、張コウ」
「お気をつけて」
慌てて出ていく甄姫は、当然のように曹丕の横に並ぶ。
二人を見送ると、張コウの表情がすっと消える。
この世に興味が失せたようだ。
演劇部ってこういうものなのだろうか。
「まだいる気?」
「いえ、淵先生のところに行きますよ」
「あっさりしてるねぇ」
「好都合でしょう?好奇心旺盛なお姫様にとっては」
「……!!知ってたのか」
「知ってる顔だった、それだけのことですよ」
そう言うと、彼は優雅に華麗に退室していった。
嵐が去ると不機嫌そうなお姫様が残された。
ため息一つもつきたいが、その前に、リサーチだ。
「今日はどちらへ行きますか?」
「……理事長室よ。あそこ、怪しいでしょう」
「まぁ、否定はしませんが」
危険過ぎやしませんかね、と言いながら。
大丈夫でしょう、と言う彼女と並んで歩く。
矛盾していると分かっているが、放っておけない。
『ワシたちは日陰者だ、分かっているだろう?』
あそこから助けられた。
理事長に、そして彼女に。
好奇心が人一倍な彼女だが、彼女もまた傷ついている。
そう、聞いたことがある。
だから放っておけないのか。
「賈ク? ここに何の用だ」
「副理事長殿、これは珍しいところで」
理事長室の扉の前に夏侯惇が仁王立ちしていた。
これは少々厄介なことになった。
捜索していると分かれば、何かしらの処分があるかも知れない。
まずは、無難な挨拶をしてみたが怪訝な顔をされてしまう。
「俺はいつもここにいる。珍しいのはそちらの方だ」
「それもそうですね、訂正します」
「それで、何用だ。無用ならば去れ」
「来客中ですか」
「張遼が来ておるのよ、部費をよこせとな」
理事長がどこからか連れてきた野球部のプレーイングマネージャだ。
なるほど、校庭に声が響いていなかったのはここにいたためか。
ついでとばかりに聞いてみる。
「許チョも来ているのですか?」
「ああ、暑苦しくて仕方ない。
だから、人払いも兼ねてここにいるのだ」
そこまで言うと、ぎろりと睨まれる。
退散しろということだろう。
こちらとて十分である、立ち去ることに依存なし。
「では、見回りを続けます」
「……それは、お前の仕事か?」
「持ちつ持たれつなんですよ、広いですからね」
本当のことなのでしれっと返す。
文姫の存在があれだが、監視ってことにしておけば大丈夫だろう。
半信半疑といった風だったが、問いつめる気はないようだ。
確かに、これ以上は「お互い」がやぶ蛇だ。
「……うまく聞き出すわね」
「そういうことばっかりやってたんで」
過去の諜報技術が誰かの好奇心を満たすのに役立つとは。
人生、何がどうなるか分からないものだ。
遠くなる理事長室から声。
『正義とは勝利への意欲を貫くことにあり!!
勝利を欲するならば、ケチってはならぬ!!』
ああ言って、金出す人ならとっくに出しているだろう。
理事長の意見が変わるとは思えない。
すっと視線を背後に送る。
副理事長がこちらに払う仕草をして部屋に入っていく。
やれやれ、食えない人だ。
「張遼、声が響いている」
「ぬ、すまない。興奮してしまった」
「部費の追加はせぬ。これは決定だ」
「私は勝利こそ恩義を返すことと自負している!それを…!!」
「それは、お前の勝手よ」
言葉に詰まった張遼に対し。
曹操は両手を前に組み、威圧を込める。
逆光も相まって意見をするのが憚られる。
「ワシの言うことに狂いはあったか?」
「……ございません」
俯く張遼に、もはや勢いはない。
許チョはおろおろとしていたが、キッと最後の抵抗を見せる。
「曹操様!おらからもお願いするだよ!!」
「おっと、これ以上は時間オーバーだぜ」
ぬうっと現れたのは、典韋である。
今まで息を潜めて佇んでいたのだ。
確かに滞在時間は提示されていたから、彼の言い分は間違っていない。
「大将、追い出していいですよね?」
「それには及ばない、自分で出る。 引くぞ、許チョ」
「ちょ、張遼様!!」
「意見するならば示せ、そういうことか」
張遼のぼそりと言った言葉が答えである。
退室するのを見送ると、夏侯惇はため息をつく。
このワンマン理事長は正論だが、言葉がきつすぎる。
「孟徳、迎え入れたのはお前だろう。『皆』に優しくしてやれないのか」
「それを期待する方が愚かなのよ。弱肉強食、これこそ真理」
くれぐれも目を光らせよ、という指示に。
ただ「承知」とだけ返すのが、この学院の日常なのである。
***********************
ついに始まりました、学園無双。
複数本編を書かないと元が取れないくらいの設定をしました。
くそ…、無双6やってないのにこの仕打ち!!
無駄にオールキャスト、全員何かしら喋ったはず。
典韋、張遼は「講師」、徐晃は「生徒」にしました。
あとは、張コウと蔡文姫は顔馴染みで、お互い本性を知ってます。
とりあえず、補足はこれぐらいでいいかな。
これは? と思ったら、以下に連絡くれますか。
enjyoy_everyday☆yahoo.co.jp (☆を「あっと」に)
ここが分かりにくかったかと思ったら適宜修正入れます。
矛盾している個所があったらしれっと直します。
気長なお付き合いよろしくお願いします。
力とは、学力、知名度。
そして、文字通り「権力(ちから)」のことだ。
こんな日常 ~鳳凰学院~ 魏キャラ設定
ある晴れた放課後。
教師も生徒も活動が活発になる。
中間試験が終わった時期なら尚更だ。
校庭の点検、掃除をしながら生徒たちを眺める。
今、校庭を走っているのは剣道部の徐晃か。
「今日はロードワークですか!」
「おう! 剣道場が使えないのでな!走り込みだ!」
ここで、何故、と訊いてはいけない。
弱肉強食が唯一の秩序たるこの学院のことだ。
「夏が終わってしまった」剣道部は競争に負けてしまったのだろう。
万年二回戦敗退、よくて三回戦敗退の剣道部と場所を争っているのは。
確か準決勝までは行ける弓道部であったか。
「賈ク殿のこそ、暑い中、清掃とはご苦労様です」
「これが仕事だし、苦労はないよ」
苦労があるとすれば…。
ここまで考えて、はっと我に返る。
いかん、待ち合わせに遅れてしまう。
すまないね!と挨拶を交わして音楽室へ急ぐ。
音楽室は現在地からだと警備室を通った方が近い。
「曹仁殿、通らせてもらうぞ!」
「……不審者は」
「校庭側では見かけなかった!」
「そうか、ならばいい」
通行料という形で、情報を交換するのは常だ。
常時ヘルメットとプロテクターで身を固めている曹仁は。
よくも悪くも警備の仕事に真面目なのである。
校内に入り、廊下を急ぐ。
暑い中急いでいるせいか、汗がひっきりなしに吹き出す。
頭に巻いた手ぬぐいも要因だろうか。
「廊下走るなー、転ぶぞー」
「うおっ! 夏侯淵殿!」
「なんだ?急ぎか?」
「ええ、まぁ…」
「そっか、前見て急げよ、猪突猛進はいけねぇ」
「肝に銘じておきます」
できるだけ早足で音楽室へ向かう。
何故、こんなに懸命に足を動かしているのか、もはや分からなくなっている。
目的の部屋に着くと、そこには珍しい二人が立っていた。
「張コウ殿、甄姫殿。如何しました?」
「あぁ、賈ク。このフルートの音を聞いていたのです」
「切なくも熱く、されど柔らかい…。実によい音色ですね」
「そう言っていただけると本人も喜ぶでしょう」
「演奏者を知っているのですか?」
「ええ、まぁ」
今年の四月、かく言う自分もこの音色に惹かれたのだ。
なんと切ないメロディだろうと。
それは、過去に後ろめたいものがあったせいかも知れない。
ひょいっと、窓から覗き。
ばちっと目が合い、捕まってしまったのが運の尽き。
『不審者?』
『ち、違う!歯牙ない清掃員ですってば!』
『……でも、あなたの音色はとっても怪しいわ』
『そ、そうかい?』
『決めた、あなた、明日から調査に参加しなさい』
『調査?何の?』
回想しても、彼女にまんまと乗せられた記憶しかない。
学院いちの才女として知られていると聞いたの時は。
それはもう、騙されていると思ったものだ。
大人しい顔をして、その実、そうではないのだから。
「文姫殿、入りますよ」
「……お客さん?」
「蔡文姫、あなただったの」
「その音色の麗しさ、ぜひ我が演劇部に欲しいところです。いかがですか」
「手の早いこと…。残念だけど、部活動はしないわ」
そうですか、とあっさり張コウは身を引く。
断られ慣れでもしているのだろうか。
それとも、断られることを見越していたのか。
「ここにいたのか、甄」
驚いた。
いつの間に来たのだろうか。
音楽室の入り口に白い学ランを着た男子生徒が立っていた。
記憶が確かならば、あれは生徒会長の曹丕だ。
噂通りの冷たい目をしている。
「帰るぞ」
「は、はい。またね、張コウ」
「お気をつけて」
慌てて出ていく甄姫は、当然のように曹丕の横に並ぶ。
二人を見送ると、張コウの表情がすっと消える。
この世に興味が失せたようだ。
演劇部ってこういうものなのだろうか。
「まだいる気?」
「いえ、淵先生のところに行きますよ」
「あっさりしてるねぇ」
「好都合でしょう?好奇心旺盛なお姫様にとっては」
「……!!知ってたのか」
「知ってる顔だった、それだけのことですよ」
そう言うと、彼は優雅に華麗に退室していった。
嵐が去ると不機嫌そうなお姫様が残された。
ため息一つもつきたいが、その前に、リサーチだ。
「今日はどちらへ行きますか?」
「……理事長室よ。あそこ、怪しいでしょう」
「まぁ、否定はしませんが」
危険過ぎやしませんかね、と言いながら。
大丈夫でしょう、と言う彼女と並んで歩く。
矛盾していると分かっているが、放っておけない。
『ワシたちは日陰者だ、分かっているだろう?』
あそこから助けられた。
理事長に、そして彼女に。
好奇心が人一倍な彼女だが、彼女もまた傷ついている。
そう、聞いたことがある。
だから放っておけないのか。
「賈ク? ここに何の用だ」
「副理事長殿、これは珍しいところで」
理事長室の扉の前に夏侯惇が仁王立ちしていた。
これは少々厄介なことになった。
捜索していると分かれば、何かしらの処分があるかも知れない。
まずは、無難な挨拶をしてみたが怪訝な顔をされてしまう。
「俺はいつもここにいる。珍しいのはそちらの方だ」
「それもそうですね、訂正します」
「それで、何用だ。無用ならば去れ」
「来客中ですか」
「張遼が来ておるのよ、部費をよこせとな」
理事長がどこからか連れてきた野球部のプレーイングマネージャだ。
なるほど、校庭に声が響いていなかったのはここにいたためか。
ついでとばかりに聞いてみる。
「許チョも来ているのですか?」
「ああ、暑苦しくて仕方ない。
だから、人払いも兼ねてここにいるのだ」
そこまで言うと、ぎろりと睨まれる。
退散しろということだろう。
こちらとて十分である、立ち去ることに依存なし。
「では、見回りを続けます」
「……それは、お前の仕事か?」
「持ちつ持たれつなんですよ、広いですからね」
本当のことなのでしれっと返す。
文姫の存在があれだが、監視ってことにしておけば大丈夫だろう。
半信半疑といった風だったが、問いつめる気はないようだ。
確かに、これ以上は「お互い」がやぶ蛇だ。
「……うまく聞き出すわね」
「そういうことばっかりやってたんで」
過去の諜報技術が誰かの好奇心を満たすのに役立つとは。
人生、何がどうなるか分からないものだ。
遠くなる理事長室から声。
『正義とは勝利への意欲を貫くことにあり!!
勝利を欲するならば、ケチってはならぬ!!』
ああ言って、金出す人ならとっくに出しているだろう。
理事長の意見が変わるとは思えない。
すっと視線を背後に送る。
副理事長がこちらに払う仕草をして部屋に入っていく。
やれやれ、食えない人だ。
「張遼、声が響いている」
「ぬ、すまない。興奮してしまった」
「部費の追加はせぬ。これは決定だ」
「私は勝利こそ恩義を返すことと自負している!それを…!!」
「それは、お前の勝手よ」
言葉に詰まった張遼に対し。
曹操は両手を前に組み、威圧を込める。
逆光も相まって意見をするのが憚られる。
「ワシの言うことに狂いはあったか?」
「……ございません」
俯く張遼に、もはや勢いはない。
許チョはおろおろとしていたが、キッと最後の抵抗を見せる。
「曹操様!おらからもお願いするだよ!!」
「おっと、これ以上は時間オーバーだぜ」
ぬうっと現れたのは、典韋である。
今まで息を潜めて佇んでいたのだ。
確かに滞在時間は提示されていたから、彼の言い分は間違っていない。
「大将、追い出していいですよね?」
「それには及ばない、自分で出る。 引くぞ、許チョ」
「ちょ、張遼様!!」
「意見するならば示せ、そういうことか」
張遼のぼそりと言った言葉が答えである。
退室するのを見送ると、夏侯惇はため息をつく。
このワンマン理事長は正論だが、言葉がきつすぎる。
「孟徳、迎え入れたのはお前だろう。『皆』に優しくしてやれないのか」
「それを期待する方が愚かなのよ。弱肉強食、これこそ真理」
くれぐれも目を光らせよ、という指示に。
ただ「承知」とだけ返すのが、この学院の日常なのである。
***********************
ついに始まりました、学園無双。
複数本編を書かないと元が取れないくらいの設定をしました。
くそ…、無双6やってないのにこの仕打ち!!
無駄にオールキャスト、全員何かしら喋ったはず。
典韋、張遼は「講師」、徐晃は「生徒」にしました。
あとは、張コウと蔡文姫は顔馴染みで、お互い本性を知ってます。
とりあえず、補足はこれぐらいでいいかな。
これは? と思ったら、以下に連絡くれますか。
enjyoy_everyday☆yahoo.co.jp (☆を「あっと」に)
ここが分かりにくかったかと思ったら適宜修正入れます。
矛盾している個所があったらしれっと直します。
気長なお付き合いよろしくお願いします。
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